『音楽と人』の編集部員がリレー形式で、自由に発信していくコーナー。エッセイ、コラム、オモシロ企画など、編集部スタッフが日々感じたもの、見たものなどを、それぞれの視点でお届けしていきます。今回の担当である四十路編集者とnoodles・yokoさんが語り合う韓国ドラマコラム第7弾。今回は、ちょうど1年前の緊急事態宣言の際にオススメした入門編ドラマを観た人へ、次にオススメしたい韓国ドラマ5作について語ります!
ちょうど1年前にこのコラム取材をした時、1回目の緊急事態宣言中だったんですよね。
「なんか、もう1年も経つのかって感じだし、1年後もまだ同じ状況なのかっていうのはあるよね」
ですね。で、『愛の不時着』や『梨泰院クラス』がかなり話題になってたのもあって、韓ドラを観始めた人たちへの入門編5作を1年前に紹介したんですが、今回もまたステイホーム期間となっている人たちも多いので、入門編作品もひと通り観終わった人たちにオススメしたいドラマ5作、というテーマがいいのかなと。
「OK! 『トッケビ』とか『スタートアップ:夢の扉』とか、最近の人気ドラマをひと通り観た人にオススメするドラマってことだよね……うーん、そう考えると……『ゴー・バック夫婦』(2017年作)かなぁ?」
チャン・ナラとソン・ホジュンが主人公のタイムスリップ系ドラマですね。
「そう。けっこう私、キャストでドラマを選びがちなんだけど、これはキャスト関係なく、たまたま観て、ストーリが面白くてハマったドラマで。観た?」
観ました。最近、日本でリメイクされた『知ってるワイフ』もそうだけど、〈あの時こうだったら……〉っていう思いが発端にあるタイムスリップものですよね。けっこうコメディ要素が強いですが、ラスト2回はけっこう泣かされました。
「そう、〈本当にこれでいいの?〉って問いかけている感じがあって、そのことでお互いがいろんなことを見直すっていう、なんかいいドラマだったよね。ヒラバヤシちゃんはどの作品を挙げる?」
そうですね、まずは私の大好きなコン・ヒョジンとソ・ジソブが出ている『主君の太陽』(2013年作)かな。
「幽霊ものだよね」
まあ、そうですね。事故をきっかけに幽霊が見えるようになってしまったヒロインと、ある事件にまきこまれて気難しい性格になった、財閥2世の社長が主人公のラヴストーリーなんですけど、登場する幽霊が、なぜまだ成仏せずにいるのかみたいなストーリーを絡ませながら描いてて、そこがまたいいなと思うところで。
「幽霊が毎回出てくるの?」
1、2話ごとにいろんなバックグラウンドを持った幽霊が出てきますね。yokoさん、幽霊が出てくるやつ苦手ですよね。
「うん。あのゾンビみたいなメイクの感じとかダメ」
私は逆にけっこう好きかも(笑)。映画『釜山行き(邦題:新感染エクスプレス)』のゾンビみたいな、恐怖の対象でしかないのは好きじゃないんですけど、『主君の太陽』に出てくる幽霊は、決して幽霊になろうとしてなったわけじゃない、そこには何かしらの訳があるっていうのがほとんどで、そういう幽霊のバックグラウンドが描かれてるところも好きというか。
「そっか。でも日本に比べて、韓国って幽霊とか妖怪が出てくる作品がわりと多いよね。これまで私の中の勝手なイメージで、幽霊ものは、ただのホラー要素が強い作品なのかなって思ってたんだけど、もっと深いテーマがあるものが多いんだね」
そうそう。そういう意味では、『刑務所のルールブック』(2017年作)もぜひ観てほしいドラマかも。
「あ、こないだネットを見てたら、『愛の不時着』『梨泰院クラス』の次に観るドラマをオススメしてるサイトがけっこうあって、これはいくつかのサイトで取り上げられてた。刑務所の中のお話なんだよね」
そうですね。だから登場人物のほとんどは罪を犯した人たちなんだけど、それぞれの背景も丁寧に描かれていて。同じ房の人間が、この場所にいるそれぞれの事情を含めて理解していきながら関係性を作っていく感じとかも、なんか良くて。もちろん根っからの悪人も出てくるんですけど。
「ちゃんとした人間ドラマになってるんだ。すごく面白そう。今度ちゃんと観てみるね。Netflixで配信されてるよね」
されてます! これは『応答せよ』シリーズのスタッフが作ってるんで、クスッと笑えるところもあるし、たぶんyokoさんも好きになるんじゃないかな。ちなみにさっき言ってたオススメサイトでよく取り上げられていた作品、他には何がありました?
「一番多かったのが『太陽の末裔』。やっぱ軍人さんが主人公だし、あとヒロインを守ってあげるっていうキャラでもあるから、確かに『愛の不時着』と共通するところはあるかもなって思ったけど、観た?」
一応、最終話まで完走したけど、いまいちハマりきれなかった作品でした。
「わかる。ちゃんとストーリーの面白さもあるし、人気ドラマになったのもよくわかるんだけど……」
たぶん私たち、ヒロインを演じたソン・ヘギョが苦手っていうのもあるかもしれませんね(笑)。
「もうこれは個人的な好みの問題かもね(笑)。すごいキレイな人ではあるんだけど……っていう」
すごくわかる。
「だから、私としては、『愛の不時着』の次に観るべき作品としては、イ・スンギくんが出てる『キング〜Two Hearts』(2012年作)をオススメしたいかな」
私、これは観たことなくて。どういう内容なんですか?
「ヒロインが、『シークレット・ガーデン』にも出てるハ・ジウォンさんなんだけど、北朝鮮軍の教官で。イ・スンギくんは、軍人で、実は韓国の皇太子っていう。サスペンス要素もあるラヴロマンスなんだけど、これは面白かった」
ああ、『宮〜Love in Palace』と同じ、韓国が立憲君主制だったらという設定ですね。
「そうそう。軍人さんが出てる韓国ドラマが好きっていう友達がいて、『太陽の末裔』も『愛の不時着』も観たらしいの。で、何か他にないの?って聞かれた時にオススメしたし、改めてもう一度観てみたいドラマでもあるかな。あとは、『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜』(2018年)は挙げておきたいよね」
そうですね。これは深い内容のいいドラマですね。
「だよね。OSTの回でも紹介したけど、音楽もすごいいいし、内容も本当にいい。タイトルからのイメージで、恵まれない境遇の主人公を足長おじさんが助けていくみたいな、韓国ドラマにありがちな内容かと思われがちなんだけど、全然そうじゃなくて。かなり暗いトーンの作品ではあるけど、広い意味での愛情のお話というか、すごく印象に残るセリフも多いし、最終的には希望を感じさせるドラマだよね」
ですね。韓国社会の縮図というか、けっこう重苦しいトーンの作品ではあるから、入門編には向かないけど、韓国ドラマをある程度観た人には絶対に観てほしい名作ドラマですね。この作品と同じチームが制作した、『ミセン-未生-』(2014年作)もいいドラマですよね。
「『ミセン-未生-』もいいよねえ。これ観て初めて会社勤めしてみたいな思ったもん(笑)。オフィスに出社して、そこに自分のデスクがあって。上司とか同期と帰りにご飯食べたりして、みたいなのも面白そうって。でも前にその話をした時、『オ次長みたいな、あんな頼り甲斐もあって部下思いの上司なんてほぼいませんよ』っていうヒラバヤシちゃんのひと言には衝撃受けたけど(笑)」
あははは。だって会社勤めして四半世紀くらい経ちますけど、私も『ミセン-未生-』観て、オ次長みたいな上司に出会いたいって思いましたもん(笑)。
「これも派手さはまったくない作品だけど、『マイ・ディア・ミスター』と同じく、印象的なセリフも多いし、すごく脚本がいいよね」
yokoさんのあと2作は何になりますか?
「そうだな……これもけっこう前の作品だけど、『九家の書〜千年に一度の恋〜』(2013年)と、『僕の彼女は九尾狐』(2010年作)になるかな」
どちらもイ・スンギが主役のドラマですね。幽霊とか妖怪ものが苦手なyokoさんですけど、どっちも大丈夫だったんだ。
「だって、どっちもおどろおどろしい姿をした妖怪とか出てこなかったじゃない。『九家の書』には悪鬼が出てくるけど、そこまで怖い感じじゃなかったし」
『九家の書』は、イ・スンギ演じる人間と神獣の間に生まれたガンチと、『スタートアップ:夢の扉』にも出てたスジ演じる人間のヨウルとのラヴストーリーですよね。ファンタジー作品ではあるけど、輪廻や業、親子の情とかも絡んだ内容だったし、映像美もあるいい作品だったなと。
「そうだね。『雲が描いた月明かり』のランタン祭りのシーンみたいに、あのシーンよかったなっていうのが、けっこうあって。ストーリーも泣けるし音楽もいいし。でもこれ、周りの友だちにけっこう勧めているんだけど、観てくれない作品でもあって」
え、なんで?
「やっぱ『愛の不時着』以降、周りからオススメの韓国ドラマをよく聞かれるんだけど、時代劇ものはハードルが高いのか、あんまり食指が動かないみたいで」
『九家の書』は、朝鮮時代が舞台ですもんね。
「そう。でも時代設定が朝鮮時代なだけで、これ以外にもすごく面白いラヴコメやタイムスリップものとかファンタジー作品も多いじゃない。でも、『時代劇かぁ』ってなっちゃう」
そうなんだ。もうひとつの『〜九尾狐』は現代が舞台ですよね。
「そうだね……なんかイ・スンギくんものが多くなっちゃったけど(笑)。これは、シン・ミナさんが演じるヒロインの役柄がすごい可愛いくて。まあ、ただの困った子なのか可愛いのか、すごく紙一重なところではあるんだけど(笑)。ストーリー的にも、ヒロインのキャラも、『青い海の伝説』(2016年作)に少し似てるかな」
主人公が異世界の住人であるヒロインと出会って、面倒をみるうちに恋に落ちていくという。
「そう。『青い海の伝説』のほうは、困ったちゃん度が強くて、ちょっとダメだったけど(笑)、でもチョン・ジヒョンさんのことは好きで。『星から来たあなた』の役柄もよかったし、なにより映画『猟奇的な彼女』と『僕の彼女を紹介します』は、もう〈神〉って感じのキャラだなって思う」
『猟奇的な彼女』と『僕の彼女を紹介します』のチョン・ジヒョンは神!(笑)。でも、確かにどちらも笑って泣けるラヴコメ映画として、いまだに色褪せない作品ではありますよね。
「うん。あと『僕の彼女〜』の相手役のチャン・ヒョクもいいよね」
チャン・ヒョクということでいえば、『運命のように君を愛してる』も、今回オススメしたいかも。これ、台湾ドラマのリメイク作なんですけど、『ゴー・バック夫婦』にも出てるチャン・ナラがヒロインで、主役2人の演技もいいし、笑って泣ける要素が満載なんですよ。
「キャストもいいし、観てみたいかも。あと残り1作は?」
そうですねえ……これもまた少し前の作品だけど『大丈夫、愛だ』(2014年)かな。これはチョ・インソンとコン・ヒョジンが主役で、EXOのD.Oことド・ギョンスも出てるラヴコメなんだけど、トラウマとか精神疾患といった重いテーマも絡んできたりする、見応えのあるラヴコメで。まあ、私の中では、コン・ヒョジンが出ているドラマはハズレなし、と思ってるんですけど(笑)。
「そうなんだ(笑)。コン・ヒョジンさんって、『椿の咲く頃』にも出てるよね。これは今度観てみようと思ってたから、チェックしてみるね。でもまさか、去年オススメドラマを5本ずつ紹介した時と同じ状況になってるとは、ほんと思わなかったよね」
本当に、ねえ……。まあ、こういう状況だし、またこの機会にまた韓国ドラマ鑑賞を強化しようかなとは思ったりしてますね。
「次に何を観ようと思ってるの?」
『ミセン-未生-』のチャン・グレ役のイム・シワンと、シン・セギョンが出てる『RUN ON(邦題:それでも僕らは走り続ける)』かな。あと、Netflixで世界同時配信された『ヴィンチェンツォ』も観てみたい。
「ああ、ソン・ジュンギくんが出てるやつだよね。いろいろ新しいドラマもあるし、またチェックしなきゃね。でも今回挙げた、数年前のドラマにもいいものが多いから、この状況が早く収まることを願いつつ、ぜひ気になった作品があったら観てもらえたら嬉しいな」
文=平林道子
noodles オフィシャルサイト http://noodles.velvet.jp/