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【Archive/Interview】怒髪天/音楽と人2026年2月号

text by 石井恵梨子
2026年4月22日


昨年末、俳優の堺雅人出演の日本マクドナルドのCMソングに起用された「オトナノススメ〜還暦上等!〜」が、ふたたびTVでオンエアされることとなった怒髪天。しかもこのタイミングで制作されたドンデコルテ・渡辺銀次が〈オトナはサイコー!〉と高らかに叫ぶWebCMが3000万再生と、リリースから16年経た楽曲が脚光を浴びる状況となっている。ということで、今年2月号掲載のヴォーカル増子直純への2026年一発目のインタビューを再掲載。4月22日には新曲「トカイテ」を配信リリースし、翌4月23日の増子の誕生日から、いよいよ〈還暦上等!生涯現役スタミナ街道〉と銘打ったライヴシリーズがスタート。還暦イヤーを迎え、思わぬご褒美に恵まれても、足元をしっかりと見つめることを忘れない、彼の真摯な言葉をここに。

(以下は音楽と人2026年2月号に掲載された記事です)


信じられないほど大量の仲間が出てくるトリビュートソングとして親しまれていた怒髪天の「オトナノススメ」が、昨年末〈還暦上等!〉ヴァージョンとなり、マクドナルドのTVCMになったことにひっくり返った人も多いのではないか。堺雅人が「青春を取り戻すバーガー」と言いながらダブチを頬張り、バンド仲間と何十年ぶりのステージへ。CM内容は怒髪天におあつらえ向きであったが、驚くべきは、これはスタッフが裏で奔走したタイアップではないという話だ。ここに来て思わぬご褒美に恵まれたメンバーは、いよいよ本年から順に還暦を迎えていく。デカい祭が企画されているのかと思いきや、決まっているのは年間60公演のツアー&自主企画、そのすべてが足を使ったドサ回りに近いものだ。新春一発目の増子直純インタビューは縁起も担いで祝いだるま贈呈からスタート。派手なことが似合う男ではあるが、内実はビシッとストイックであることも伝われば幸いである。  



まずは「オトナノススメ〜還暦上等!〜」。16年前の曲が、ここに来て意外な展開を見せております。


「そう。カネもコネも使わずこういうCMが決まることのすごさ、もう音楽業界の人間ども全員に知らしめてやりたいね」


本当にピュアな依頼というか、ただこの曲が好きで使いたいと日本マクドナルド社からオファーが来たんですか。


「まぁそういうこと。なかなかない話よ。タイアップってレコード会社、あとは事務所の大きさ、メーカーのしがらみとか、ほぼ政治的なもので決まるもんだから。これがどのくらいすごいことかって………たぶん俺らが武道館やったことよりも奇跡に近い」


あははは!


「マジで。奇跡度で言うと宝くじが当たったようなもので。自分の力ではどうにもならないことだから」


使うヴァージョンはオリジナル版でもトリビュート版でもなく、新録でお願いします、と?


「できれば新録で、やっぱり今のバンドの感じが欲しいって言われてた。だから奥野(真哉/サポートキーボード)も入れて、もう1回録ったの。せっかく還暦ヴァージョンだし、今回はちょっと派手にいくかぁって。そしたらクライアント側から『これ、ちょっと歌がクセ強くなりすぎてます』って」


それは思い当たる話なんですか。


「うん。サビの〈オ〉は母音だからアタックが出づらいの。どうしても〈ウォ〉の発音に近くなっていって。それを10何年もライヴで唄い続けて慣れちゃったもんだから、レコーディングの時も普通に〈ウォ~トナはサイコー!〉って唄ってる。そしたら『これは前のほうが聴き取りやすいですね』って」


めっちゃバッサリと……。


「あとCMの堺さん(堺雅人)のバンドは3人編成だったから、本来キーボードの音は入ってない形だっていうことで、結局放送されたヴァージョンで奥野の音はカットされ、俺の歌だけ昔のテイクに差し替えられた。そんなことってある?(笑)」


せっかくの新録なのに(笑)。


「もちろんリリースするのは新録ヴァージョンだけどね。危なかった。ほんと無駄足になるところだった」


ちなみに、選ばれたのがなんでこの曲だったのか、明確な理由って聞いてます?


「やっぱりCMのコンセプト。〈青春を取り戻すバーガー〉っていう、そこにちょうどいい曲だったんじゃない? きっかけをくれたCMチームのみなさんも、俺らのオリジナルじゃなくてトリビュート(2019年発表「オトナノススメ〜35th 愛されSP〜」)の映像で知ったらしくて。この曲をずっと使いたいと思ってた、って言ってくれた」


へぇ。いろいろやってきた面白企画のひとつとはいえ、いろんなところに種は撒いておくもんですね。


「うん。あのMV、本家よりも再生回数上だからね」


しかも残念なことにMVには本家が出ておらず。


「出てない! 思いつかなかった! でも曲が走るっていうのはそういうことなのかな。バンドの名前より先に曲だけが広まっていく。そしてフラカンの〈深夜高速〉を見ていればわかるように、曲の知名度はガーンと上がるけど、かといってバンドが爆発的に売れるわけじゃないっていうね」


……なんて返せばいいんですか(苦笑)。


「いや、ちゃんと曲が認められたことはすごく嬉しいこと。あとドズル社っていうゲーム配信の人たちが〈歌ってみた〉もやってくれて。あれでまた怒髪天を知らなかった人たち、小学生とか中学生が知ってくれたのよ。そうやって別の入り口から知ってくれる人が増えるのは本当に嬉しい。長くやってるとオマケというか、こんなご褒美がポロポロ来るんだなって思う」


はい。あと改めて思うのが、怒髪天、あとは増子さん個人がコマーシャルと相性いいんだなってことです。思い返せば桃屋のラー油から始まって。


「そうかもね。まぁ声がわかりやすいのもあるんじゃない? それなりにパンチとかインパクトもあるだろうし。ただ、こういうチャンスって自力で作れるもんじゃないから」


確かに。出たいと思って出られるものじゃない。


「そこでチャンスもらえるなら、俺は面白がってやれる。絶対やったほうがいいと思うよ。どうしても加担できないと思わない限り。ロックバンドだからとか、変なこだわりで自分の可能性を狭めてしまうのは不幸だと思う。やってみなきゃわかんないことって、世の中のほとんどがそうだから」


ただ、音楽やってた人が、いつしかテレビや芸能のほうに行っちゃって、落胆するパターンもありますよね。


「そこは俺、ちゃんと軸足がバンドにあるから。もちろんお客さん気分で現場に行くわけじゃないけど、やっぱりひとつ違う枠、いつもと違う世界にいる感じはある。芝居する人間の芝居じゃないから自分が呼ばれてるんだろうって自覚もあるし。でね、もちろんバンドの知名度とか作品の規模によって違うだろうけど、俺の場合はバンド仕事より役者仕事のほうが条件よかったりするからね。そこでブレそうになる人の気持ちもわかるよ」


わかるんだ(笑)。でも増子さん、そっちでいろいろやろうとする欲目もなさそうですよね。


「うーん、そうね。もちろん呼んでくれりゃ面白がってやるけど……これって自分から取りに行くものじゃない。それこそご褒美の一種だと思ってるんだろうな」

還暦記念で武道館やるのもアリだけど、今は足を使って地道にライヴをやる。バンドの基本からやり直す。それが今やるべきこと

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