夢は必ず叶うっていうのは成功した人の傲慢な意見ですよ。自分にはその才能がなかったから、他のことで頑張ろうって
でもバンドというのは、そこが少し違う。もちろんやれることも大事だが、どこかで共に夢を見たり、足りないところを認めて一緒に転がっていく。その過程で、バンドでしか鳴らせない音やグルーヴが生まれる。みんなそれを夢見てバンドを続けるのだ。
「でも僕はやっぱり、それを盾にして、クオリティの低いもので満足したくないんですよ。バンドへの憧れや理想は強いけど、もう……それは求めてないというか、求めても手が届かないから。理想? それは、子供の頃からの友達とずっと一緒にバンドをやることですよ。上手いも下手も関係なく、子供の頃からの仲間と一緒にやっていく。それをやり続けたかった。ゴーイングと一緒にスタジオ入ってて思いますもん。40半ばになって、中学からの同級生とバンドを楽しそうにやって、それで食えてる、それだけで勝ちですよ」

じゃあ……とすごく単純な言葉を投げてみる。シガべッツをまたやってみる気はないのか、と。彼の兄であるヴォーカル山本政幸は、3年前に幹宗によるプロデュースで音源を出しており、それには元メンバーも参加していた。バンドの理想がそうであるなら、パーマネントでやるのは厳しくても、原点にまた戻るのもいいんじゃないか。
「できなくはないと思いますよ。当時出してたような音源を整えたら、それなりに聴いてもらえる自信はあるんです。でも、みんなの気持ちがそれに向き合えるのか、といったらわからない。今も仲はいいけど、もうみんな家庭を持って、違う仕事にも就いてるし。なにより僕が〈あの時ほど自分を信じられない〉っていうのも大きい」
言葉にはしないが、シガベッツの解散が、バンドを続けられなかったことが、彼の音楽活動の中で、とても大きな位置を占めているのがわかる。もうあの頃のような熱量で向き合えないかもしれない。そういうバンドマンの痛みがわかるから、プロデュースが上手いのだろう。逆に、だからこそこういうこともわかる。
「ゴーイングのベースのいっさん(石原聡)って、ぶっちゃけプレイは下手なんですよ(笑)。何回弾いてもらっても、どうしても難しい曲が2曲あって。一応スタジオではOKにしたけど、家帰って聴いたらやっぱりしっくりこない。だからいっさん含めたメンバーに連絡して、ベースを僕が弾き直させてもらったんです。そしたらすごく曲がよくなったし、メンバーも納得してくれた。でも作業を進めてるうちに〈……これ違うな〉って、僕が思い始めちゃって。引っかかるものがなくなっちゃったというか、ゴーイングじゃなくてもいい、ただのいい曲、になったんですよね。だからまたみんなに連絡して、僕の作業場に来てもらって、同じ曲、何回も弾いてもらったんですよ。『いっさん、俺がそつなくこなしたやつだと、ゴーイングっぽくなんないわ』って。いっさんのあの感じがゴーイングにちゃんとシグネチャー(象徴)としてある。完成したあと、そのことを呑みながら(松本)素生くんに言ったら、めちゃくちゃうれしそうだったけど『幹ちゃん、その話、絶対いっさんにしないでね。調子乗るから』って(笑)。でも録ってる時に言っちゃったな」
彼はそれがバンドなんだってわかってる。完璧じゃない、そのバンドでしか成立しない〈らしさ〉に、オリジナリティが宿るのだと。じゃあ、sunsiteにとってのそれは何なのか、ということだが、いざやるとなるとそれが難しい。
「プロデューサー目線で見ると、サウンドやメロディに対しての、やっぱり歌詞が課題……僕が書いてるんですけど(笑)。僕の中で歌詞って、絶対韻を踏まないといけなくて。内容が多少薄くなっても、押韻と脚韻を使ってちゃんと整ったものにしてるんですよ。ある人に『予測変換みたいな歌詞だな』って言われたことあるけど、それはあえてなんです。でも感情みたいなものが乗りにくいのもわかる。去年、宮崎朝子さん(SHISHAMO)と知り合って、彼女の作ってきた曲ちゃんと聴いたら、文章のような歌詞に天才的なメロディがついてて、リズムのフックもある。久々に天才を見ました。僕みたいなのは、よっぽど心を動かされることがないと筆が進まない。だから今回の曲の歌詞が夏っぽいのは、全部、旅行で行ったハワイで書いてるからです(笑)。あと自分と息子の関係で感じたことを歌詞にしてる。それが一番自分にとってはリアリティがあるから。宮崎朝子さんみたいに想像力を働かせて書くタイプじゃないし、だからといって今さら恋愛できない(笑)。それより、楽曲のリズムにフックをつけたり韻を踏むことで、完成度を上げたい。だから課題としては、楽曲のバリエーションをもう少し広げることと、歌詞かな」
それでも自分のバンドにこだわるのは、もちろんコロナ禍で感じた場所としての大切さもあるが、どこかに自分がやり残した部分を感じているのだろう。
「とはいっても、シガベッツを続けてればよかった、とは思わないんですよ。もちろんバンドが長く続くのに越したことはないけど、それはあくまでおまけ。うまくいかなかったのは確かだから、次はうまくいくことをやろうと。バンドが続いていくことへの憧れ……みたいなのはあるけど、それは、子供の頃に野球選手になりたかったなって思うのと一緒です。長く続ければうまくいくとか、夢は必ず叶うとか、そういうのは成功した人の傲慢な意見ですよ。だから今はそういうことはまったく思ってなくて。自分にはその才能がなかったから、他のことで頑張ろうって。だから元木なんですよ(笑)。彼にシンパシーを感じる点が、鳴り物入りで入ってきて、〈ダメだ、敵わない〉〈チームバッティングに徹しないと出番がない〉って思っても、チャンスで打順が回ってきたら、わざとバント失敗して、指示がヒッティングに切り替わった瞬間、フルスイングでホームラン打って、ベンチでコーチに頭はたかれる(笑)。そのフルスイングがsunsiteかもしれない。最後の最後、追い込まれた。バントも2回失敗してる。これで三振したら負けだし、責められるけど、そこでホームランを打つ。バンドでこれがしたかったんだよって、目の覚めるようなホームラン。最初にバンドやりたいって思った、あの気持ちですよ」

彼はその気持ちを忘れてない。コロナ禍がきっかけではあったが、バンドへの憧れや楽しさ、みたいなものを蘇らせたのだろう。sunsiteはより、バンドでやる喜び、が投影されてくるのではないかと思う。バンドを始めた頃の、この思い出のような。
「高校生の時、ナンバーガールのライヴを福岡へ観に行った帰り、ばったり向井秀徳さんと会って、インスタントカメラで写真を撮ってもらったんですよ。『写るかわかんないから2枚ぐらい撮ってください!』って、カメラ渡した人にお願いしたら、向井さんに『1枚でよかろうが!』って怒られた(笑)。あの頃の気持ちは忘れてない。でも何度も言うけど、それを盾にというか、甘えにしたくない。だからまずはいい結果を出すこと。それをsunsiteで形にしたい。そしたらバンドへのいろんな気持ちが成仏できる気がする(笑)」
文=金光裕史
sunsite NEW EP
「Magan」
2026.03.18 RELEASE

- Summer
- Magan
- Natsunokage
- feels
