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GEZAN、ソールドアウトの初の武道館公演。普遍的で特別な、ロックバンド愛に溢れた美しき夜

text by 石井恵梨子
2026年3月21日


【LIVE REPORT】
GEZAN 日本武道館 単独公演 『独炎』
2026.03.14 at 日本武道館




イーグル・タカ(ギター)が客席に問いかけた。「この中で、東京以外から来た人は?」。挙がる手の数に驚いた。半数……と書くのは大袈裟だが、少なくとも4割以上。武道館公演が発表されてから一年をかけて全国を廻ってきた54本のツアー〈集炎〉。そこで撒かれた熱をキャッチし、途中から居ても立ってもいられぬ気持ちになり、武道館に駆けつけたファンたちがこんなにもいるのだ。


ドラマなら多々あった。昨年末にはヴォーカル、マヒトゥ・ザ・ピーポーのSNS発言が大炎上。フルボッコに叩かれたあと、業火の果てには、かつてないほど優しい歌のアルバム『I KNOW HOW NOW』が誕生していた。アルバムのリリース直前にはメンバーが不眠不休で演奏を続ける〈100時間リレー〉と題した配信企画があり、それ自体は無謀な思いつきに見えたものの、気持ちや愛を寄せる仲間たちが集まることで大団円を迎えた。売れ行きが懸念されたチケットも見事ソールドアウト。開催直前の話である。


できすぎの脚本がGEZANの性格をよく表している。マネジメントも持たないDIY活動。過去の例に倣わない独創性はもちろん、時代を巻き込んでいく発言の鋭さ、直感だけで転がっているような危うさが魅力となり、このバンドを支えなければ、という連帯が生まれていく。それは限りなく宗教にも近く、一歩引いて見れば不気味な匂いを放ち出す。九段下駅に着いた瞬間からやたらと目につく赤、赤、赤……。頼もしくもあり怖くもある熱狂だ。


暗転。同時に2階スタンド席に立つ4人のバグパイプ奏者が浮かび上がる。イーグル? どういうこと? と思っていれば、実際にはアリーナ中央、後方からステージを目指し、フロアの真ん中をメンバー4人が悠々と行進していく。記憶にある限りこういう武道館の使い方は見たことがない。もちろん日本一有名なハレの舞台だ。過去にはリムジンで登場するスターだって多数いたわけだが、彼らが乗っているのはドラムの石原ロスカルが漕ぐチャリンコと台車なのだ。どこまでも型にハマらない、昨日吹いた風が今日の言葉になっていくGEZANらしさは、一曲目「HAPPY HIPPIE」の歌詞にもはっきりと反映されていた。


見たことのないドキュメントが続く。生バンドとサンプリングを掛け合わせた「誅犬」は原曲よりもBPMを落とし、PA内田直之によるとんでもないダブミックスが施される。止まらない呪術的ループ、儀式を思わせる赤いライト。さらには〈狂メドレー〉と題されたノンストップの展開に息を呑む。ヤクモア(ベース)はアンプの上に立ちディジュリドゥを吹きまくり、「Fight War Not Wars」の叫びは「Free Refugees」の苛烈なパーカッションと一体になって全身に突き刺さる。スクリーンに大写しになる〈NO WAR〉の文字と共に始まるのは「東京」。〈銃声が聞こえるだろう〉という歌詞が発売当時よりもリアリティを帯びているのがなんとも息苦しく、預言者、アジテイターとしてのマヒトゥ・ザ・ピーポーは、いよいよ時代に選ばれた存在感を発揮しているようだ。


と、このような書き方が危険なのだ。いっぽうで、初のメドレーだというのに寸分乱れない演奏力、次々移り変わる楽曲とぴったりリンクするスクリーン演出、赤と同じくらい青を効果的に使う照明の美しさはどう説明すればいいのだろう。行き当たりばったりに見えるGEZANの表現は、しかし想像以上に高いクオリティに担保されている。計画性と技術力がないとできないチームプレイ。予算のないDIYだからと誤魔化すところが何もない、プロフェッショナルな演出力。平たく言って、4人には武道館のステージがとても似合っていた。


異色と言える演出もあった。つねに時代と向き合うのがGEZANスタイルなら、マヒトがアコギを持って唄う「beat」だけは別。スクリーンにはバンドの過去が、2009年から始まった歴史が、次々と映し出されていく。抜けていった元メンバーの姿は、異形に見えるこの集団にも、普通のロックバンドと同じく、傷つきながら出会いと別れを繰り返してきたストーリーがあることを伝えてくれる。普通のバンドのように武道館を夢見ていたかどうかはわからない。ただ、あえて逆張りしてみせる様子はなかった。4人は全力で、神聖な場所に相応しいスケールと完成度を追い求めているように見えた。


そしてまた、「beat」で垣間見せたストーリーを補完するのがアンコールの「BODY ODD」なのだった。仲間たちが次々と飛び出すマイクリレーの曲であり、鎮座DOPENESS、向井秀徳、盟友・下津光史など豪華ゲストが登場するなか、最後に出てきたのはシャーク安江とカルロス尾崎! 抜けていった元メンバー、GEZANの初代リズム隊である。傷ついた別れの先にこんな再会があるのか。そんなヒューマンドラマをGEZANが見せるのか。シャークとカルロスが「NEVER END ROLL!」と叫び、続いてひときわポップな「END ROLL」に繋がるのも、なんだか嘘みたいに綺麗なシーンだった。


「こんな日が来ると思わなかった」とマヒトが最後に語り出す。今までで一番嬉しかった最高の日はバンドやろうってイーグルを誘って音を鳴らした日。シャークとカルロスが抜けた日は一番悲しい日。ロスカルとヤクモアが入った時も一番嬉しい日になったし、今日も今までで一番嬉しい日になった。


小学生のような素直な言葉に、預言者めいたムード、もしくは詩人らしいロマンはない。ただ無我夢中なバンド愛が、いまだ冷めない夢があった。もちろん反戦の強いメッセージ、マヒトにしか言えない美しい祝福も多々あった。最後に記すひと言は、それらに比べるとごく普通の、よくある言葉なのだと思う。これをマヒトが言うから特別だった。あの日本武道館が、あのマヒトゥ・ザ・ピーポーに言わせた言葉だったからだ。


「続けてください。続けてたらいいことがあるんで」。



文=石井恵梨子
写真=池野詩織


【SET LIST】

  1. HAPPY HIPPIE
  2. blue hour
  3. Memoria
  4. EXTACY
  5. 誅犬
  6. DUB ZONE
  7. 狂メドレー
    (赤曜日/SCHOOL OF FUCK/NO GOD/もうオレらは我慢できない/Man麻疹/共振/AGEHA)
  8. Soul Material
  9. Fight War Not Wars
  10. 東京
  11. I
  12. i ai
  13. BEST DAY EVER
  14. 忘炎
  15. beat
  16. Amrita
  17. TRANSIT
  18. DNA

ENCORE

  1. BODY ODD
  2. END ROLL
  3. Absolutely Imagination



NEW ALBUM
『I KNOW HOW NOW』
2026.02.11 RELEASE

  1. beat
  2. Amrita
  3. TRANSIT
  4. HAPPY HIPPIE
  5. Memoria
  6. 数字
  7. HOWL
  8. BEST DAY EVER (feat.Ichiko Aoba)
  9. 予感


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GEZAN オフィシャルサイト

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