アルバム『Echo』の完全再現ライヴ〈"BEGINNING 2026” feat.『echo』〉開催に合わせて、『Echo』リリース時の懐かしい記事を再掲載。なお取材を受けているのは村松拓(ヴォーカル&ギター)でも生形真一(ギター)でもなく、ひなっちこと日向秀和(ベース)。どういう経緯で彼に話を聞くことになったのか今となっては不明だが(笑)、彼がどういう気持ちでバンドをやっているのかよくわかるインタビュー。


(以下は『音楽と人』2011年7月号に掲載された記事です)
Nothing’s Carved In Stoneが始動してから3年あまり。ついにバンドとして唯一無二のオリジナリティが確立できたようだ。結成当初は衝動と勢いに任せていた彼らだったが、作品とツアーを重ねてきたことで自信と余裕が生まれ、その中で作られた『echo』というアルバムは、バンドの成熟さえ感じさせる作品となった。今回、この作品から見えてくるバンドの現在、そしてこのバンドに賭ける思いを、バンドを代表してひなっちこと日向秀和が語ってくれた。いつものことだが、彼と話をすると決まってこう思う――バンドって素晴らしい集合体だな、と。頼ったり頼られたり、弱音を吐いたり吐かれたり。そういう関係こそバンドなんだよな。
ようやくバンドとしての歴史が積まれてきたというか。
「バンドっぽくなってきましたからね」
それを強く感じるアルバムで。自分ではどうですか?
「余裕が出てきたんですよ。もともとナッシングスって、いきり立ってる感じが魅力だったりするじゃないですか。このメンツでやるからにはアクセル全開で行くぜ!みたいな。最初はそういういきり立った感じがすごく強かったバンドだと思うんですよ」
そうそう。初めてライヴ観た時、すごいいきり立ってて、なんか怒ってんのか?って(笑)。
「でしょ?(笑)。最初はやっぱバンドとして固めるのに生き急いでたと思うし、勢いとか熱量任せでやってたんですよ。でも今はきっちりアルバムも何枚か出し、それに伴うツアーもして、ようやくバンドとして固まってきたというか」
それが自信となり。
「うん。自信があるから余裕も生まれ。もちろん今も衝動に駆られてるんだけど、勢い任せだったり無理やりロックモードで!っていう感じじゃなくなりましたね。それよりお互いもっとフラットというか素っていうか。だからガシガシ音を鳴らして突っ込んでくっていうよりも、もっと抜き差しみたいなところが出てきてて、そこがすごくバンドっぽくなってきたかなって感じますね」
じゃあ今まで一番自然なノリで音を鳴らして出来たのがこのアルバムというか。
「ですね。そのぶんヴォーカルが前に出てきて。もちろん拓(村松拓/ヴォーカル&ギター)もすごい成長してきたからなんだけど、そういうふうにバンドが育っていくのを感じられるっていうのがいいなって思いますね」
さっき日向くんが「いきり立ってた」って言ってたので思い出したんだけど、最初の頃のナッシングスって何か異様なテンションでライヴをやってたじゃないですか。
「そうでしたね。とりあえず音でケンカ売ってくみたいな、言い方おかしいんだけど(笑)」
いや、日向くんらしくていいよ(笑)。
「(笑)〈おりゃー!〉みたいな。それはそれでカッコ良かったし、その時でしかないナッシングスのスタイルだったから」
で、俺にはその姿が反動、っていうと聞こえが悪いけど、日向くんにしても生形(真一/ギター)さんにしてももともと別のバンドがあって、そこを意識せざるえないスタンスでやってるように見えたんですよ。
「まぁそうですよね」
エルレガーデンという存在だったりストレイテナーという存在だったり。そういうのに対して、こっちはこう、みたいな意識がどこかにあったんじゃないかなって。本当はどうなのかわからないけど、僕にはそう見えてたんですよね。
「まぁ……他にないカタルシス的なもので繋がってる部分はありましたね。そこはテナーのメンバーも理解してくれてたから出来たんだと思うし」
だから当時思ったのは、このバンドが主体として持っているヴィジョンはどんなものなんだろう?っていうところで。それが見えにくいというか、とにかくガチなぶつかり合いのバンドであることはわかるんだけど、これって続いていくバンドなのか?みたいに思ってたところがあって。
「あのね、続けることがヴィジョンでしたね、特に当時は」
あ、逆にそうだったのか。
「スバリ言っちゃうとね。で、お互いそこに対する熱がすごくあったというか。それでがっつりアルバムも出してツアーもちゃんとやっていこうぜっていう。だから……当時あったがむしゃら感っていうのも実はそこに繋がってるんですよ、どっちかっていうと。バンドを続けたいっていう気持ちこそがこのバンドのヴィジョンだったというか。たぶんそれはみんなここにいたら、口揃えて言うと思う」
じゃあ、今回のアルバムはそのビジョンの中で辿りついたひとつの到達点であるとも言えますよね。
「そうですね。結果そうなった、ということなんだけど、出来た時は自分らですごい……感動したし(笑)」
今までとの違いが顕著に出てるアルバムだよね。例えば日本語詞の曲があったりとか。
「前から日本語詞の話は出てたんだけど、やっぱタイミングっていうかちょっとまだ……自信がなかったんでしょうね、日本語でやるっていう。でも今回その自信もついてきたっていう表れだと思いますよ。結果やってみてカッコ良かったし」
ここからバンドが進化していく予感があるっていうか。
「そうですね。もっと自由に広がっていくでしょうね」
あと俺がすごいなって感心したのは、それぞれメンバーの好きな音だったり憧れみたいなものがそのまんま出てるってことで。
「そうっすね。今回は特にまんま出ちゃってますよね」
それこそ素っていうか、その人のクセみたいなものまで隠さず出してる。だから、言っちゃうとテナーっぽいサウンドが顔を出したり。
「そうそうそう。でもそれはもう、全然いいやと思って」
もちろんレッチリのフリーみたいなプレイもバンバン出てる。自分が影響受けたものからどう離れていくか、みたいな時期ってバンドマンなら誰にでもあると思うんだけど、すでにナッシングスは4人それぞれが〈俺、こういうのが好きなんだよね〉って素直に出しあう関係になってるんだなって思いました。
「ほんとそうだったんですよ。実際そうやって言い合ってたし。〈そういうのが好きだったら、それやっちゃえばいいじゃん〉って。例えば僕だったら〈これはちょっとテナーっぽいかな〉って思っても、今駆られてるこの衝動に任せたほうがいいな、とか」
