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ミセスのフェーズ2が5大ドームツアーとともに完結。「バベルの塔」で描いた桃源郷とは

text by 蜂須賀ちなみ
2025年12月29日


【LIVE REPORT】
Mrs. GREEN APPLE〈Mrs. GREEN APPLE DOME TOUR 2025 “BABEL no TOH”〉
2025.12.20 at 東京ドーム



Mrs. GREEN APPLEのカラフルな音楽は、今や老若男女の生活を彩っている。楽曲が演奏されるたび、歓喜や感動に包まれるこの光景は、メンバーがずっと求めていたものだろう。フェーズ2完結のタイミングで実現した、5大ドームツアーの最終日。中世の貴族を思わせる衣装を纏った大森元貴(ヴォーカル&ギター)、若井滉斗(ギター)、藤澤涼架(キーボード)は、手を繋ぎ、笑顔で姿を見せた。そして黄金のテープキャノンが放たれ、ライヴがスタート。きらめく音楽と大歓声は、フェーズ2を駆け抜けた3人を祝福しているようだった。


若井は「みなさんがいるから僕たちは活動できる。届ける場所があるから、次はどんな表現を届けよう?ってワクワクできるんです」とファンへの感謝を語った。藤澤は客席を見渡しながら「やっぱりいいよな……」と呟く。思わず零れた言葉だったのか、「あっ、ライヴが、やっぱりいいよなってことです!」と慌てて付け足していたのが印象的だった。


2人にとってミセスは、安心して帰れる場所なのだろう。若井が攻めのギタープレイを見せれば、大森のヴォーカルも熱を帯びる。藤澤が繊細なプレイで曲の入り口を作るからこそ、大森は心を込めて唄い始められる。そんな信頼関係の中でステージに立つ大森にとっても、ミセスはきっと帰れる場所だ。子どもの頃から、大きなステージに立つ日を夢見ていた大森。登場してすぐ、耳に手を当てて歓声を受け止める姿はとても嬉しそうだった。夢を叶えた今、隣には苦楽を共にしてきた仲間がいる。信頼できるスタッフに囲まれ、アイデアを形にできる環境がある。今の彼は、充実感の中にいるはずだ。


旧約聖書にある「バベルの塔」の物語をモチーフとした今回のライヴ。Mrs. GREEN APPLEは100名以上のキャストや壮大な舞台装置とともに、イマーシヴな世界観を展開した。セットリストの流れを追っていくと、大森の人生そのものが見えてくる。ミセスの楽曲の根底にあるのは、愛されたい、誰かそばにいてほしいという大森の願い。たった一人の小さな願いが、5万人をワクワクさせる壮大なエンターテインメントの源泉になっていた。


愛し愛されたいという気持ちの萌芽を唄った「Love me, Love you」で幕開けたステージ。ここからは歌詞に〈愛〉が登場する曲がしばらく続く。誰かから愛されたいと願ったり、自分を愛したいと思ったり、人間全体を愛そうと試みたり……。音楽もステージングも明るく華やかだが、大森はずっと愛について思い悩んでいる。


やがて、喪失の痛みを唄った楽曲が登場。フェーズ2で生まれた「Soranji」「フロリジナル」には、等速の時を刻む社会と、悲しみのさなかにいて、なかなか立ち直れない自分との対比が描かれている。大森は、胸の痛みを音楽にすることで自分を慰めてきた。そうやってどうにか日常を進めてきた。心の傷も、愛への渇望も、エンタメに昇華する。それがフェーズ2での大森の決断だった。


ライヴの終盤では、ステージにあった巨大な塔が客席にせり出す演出が。感情をぶつけるような激しい曲が続いたこのセクションは、「バベルの塔」の物語が描く人間の愚かさに、大森の「自分って情けないな」という実感を重ねていく構造。神が雷を落とし、塔が赤く燃えるなか、大森は塔の中腹から唄う。大森のいる塔からは、若井と藤澤が見えない。若井や藤澤の立ち位置からも、大森の姿は確認できない。友と分断され、自責の念に焼かれながら唄う大森。その姿に、フェーズ2の真髄を見た気がした。


大森は「バベルの塔」の物語に自分の人生を重ねて、「大事にしていたものは壊れるし、期待は裏切られる。そんなものの繰り返しでしかないんだろうな、生活は、って思います」と語った。続けて「人はネガティヴな生き物。どうせならポジティヴな音楽を、せっかくなら楽しいことをしたいと思って、曲を書いてます」と語られる。その言葉はきっと本心だろう。だが、あまりにも淀みのない口調から、友達とバンドをやっている青年でも、ただ音楽に救われていた少年でもない、Mrs. GREEN APPLE総監督としての視点を感じた。彼はもう、孤独を、大森元貴としての生き方を引き受けたのだ。


その覚悟は、最後の曲「天国」にも表れていた。この曲は、終盤で転調を重ねながら大団円へ向かうも、まるで途中で事切れたかのように唐突に終わる。大森は『音楽と人』2025年6月号のインタビューで、このラストについて「自分の気持ちをエンタメ化することに疲れた」と明かした。一方、今回のライヴでは、アウトロにアディショナルアレンジを施し、美しく完結させた。それは、なぜだろう。自分の人生をエンタメ化しながら生きていくんだと、覚悟を決めたからではないだろうか。 ドームという大舞台を謳歌するMrs. GREEN APPLEの姿は眩しかった。しかしMCに滲む諦観が示すように、大森は、何かを達成しても心が満たされるわけではないこと、塔を登るほど孤独が深まることを既に知っている。「天国」を唄う彼の表情は、どこか寂しそうに見えた。それでも胸をトントンと叩きながら、先に去っていくメンバーやキャストの背中を見送ったあと、最後は自分も光の中へ歩を進めた。光の先に待つのが、天国でも地獄でも構わない。その場所こそが自分の桃源郷であると信じ、音楽を作り続けていくのだろう。大森は背中を向けたまま、観客に手を振った。その姿はやがて眩い余白の中へと溶けていった。


文=蜂須賀ちなみ
写真=田中聖太郎写真事務所


※2026年1月7日発売の『音楽と人』2月号では、さらに詳細な東京ドーム公演のレポートを掲載。フェーズ2完結の物語について、10ページにわたりお届けします。


【SET LIST】

  1. Love me, Love you
  2. CHEERS03 アンラブレス
  3. Feeling
  4. パブリック
  5. おもちゃの兵隊
  6. WanteD! WanteD!
  7. ライラック
  8. Soranji
  9. フロリジナル
  10. ゼンマイ
  11. 君を知らない
  12. Soup
  13. 絶世生物
  14. Ke-Mo Sah-Bee
  15. ア・プリオリ
  16. Loneliness
  17. ダーリン
  18. コロンブス
  19. ANTENNA
  20. GOOD DAY
  21. Magic
  22. 天国


Mrs. GREEN APPLE オフィシャルサイト

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