ニューシングル「「火花」/「無修正。」」は、現在進行形のバンドを包み隠さずしたためた一枚だ。「「火花」」はPrime Videoで世界配信されるドラマシリーズ『人間標本』挿入歌として起用されるだけでなく、そのドラマにメンバーが出演することになっている。47都道府県ツアーのみならず、来年3月の幕張メッセに向けての施策が発表される中、千秋(ヴォーカル)は幕張のプレッシャーにジタバタすることもなく、粛々と自身のタスクをこなしているようだ。追い込まれるとすぐ悪態をついたり八つ当たりしがちだった彼だが、最近の言動には気遣いや思いやりを感じるようになったという噂を聞き、なるほど、だから「「火花」」は自分ではない誰かの背中を押す気持ちに溢れているんだと納得した。決意の歌であると同時に〈みんなの歌〉であるこの曲を、傍若無人だった頃の彼が聴いたらどう思うのか。そんなことを想像してしまうインタビューとなった。
(これは音楽と人2026年1月号に掲載された記事です)
幕張はどうですか。
「やっと幕張ハラスメントはもう終わりました」
なにそれ(笑)。
「ファンクラブ先行が終わるまで毎日SNSで告知していたからファンの人はちょっとウザかったかもしれないけど、もう終わったんで。今は別に焦りとかもないですね」
他のメンバーは最近どうなの?
「あんま話してないです。今、各々で行動してる期間で、打ち合わせとかもなく。僕は僕のこと、SORAくん(ドラム)はSORAくんのこと、Sacchan(ベース)はSacchan、みーちゃん(Miyako/ギター)はみーちゃん、みたいなゾーン。昨日も4人でレコーディングの準備したけど、大した会話はなかったです」
ツアーはまだ残ってるけど、ここまでやってきてどうですか?
「安定しましたね。長かったけど、今はゴールが見えちゃってるんで、〈こんなもんかな〉みたいな雰囲気ができちゃってます。で、それをぶっ壊していくのが俺の仕事かなと思うんだけど、みんなにハッパをかけるのも難しくて」
空気が悪くならないようにしないと。
「わかりやすい言葉でシンプルに言ったりして。例えば『今日が最後やと思ってやろう』とか言っても、SORAくんは混乱するんですよ。〈え、今日が最後って……無理!〉みたいな(笑)」
あははは。
「それって〈今日できることは出し切ろうぜ〉ってことをカッコつけて言ってるだけなのに。だからもっと真っ直ぐ言うようにしたり、いらん小言は言わないようにしたり。前はあえてそれを投げかけて悩ませたりしたけど、それでメンバーの気持ちがバラバラになるのもダルいんで」
言い方を考えるようになったと?
「やっぱ言い方って大事ですよ。最近そう思う。ファンに対してもそうですし、周りに対しても言い方ってめちゃくちゃ大事だなって。LINEとかも」
LINEね。
「次のコラムで書こうって思ってるネタです。さっき決めたんですけど」
そういえば連載が始まりました(笑)。
「LINEも返事の仕方ひとつで相手の動きが変わるっていうか。そういうのがやっとわかってきた」
言い方が大事だとわかった今、前の自分はずいぶん乱暴な物言いをしていたことに気づいた?
「乱暴だったけど、そのほうがカッコよかったんで。だから本音を言えばそのままでいたかったですね。それで周りから〈めんどくせぇなこいつ〉〈また人を傷つけることを言って〉って思われるようなヤツを目指してたから」
普通は目指さないと思うけど。
「今の自分は思い描いていたのと違うし、ちょっとずつ人に優しくなってる。しかもそんな自分が嫌いではない。ただ、カッコいいとは思わないですね」
状況的にカッコつけてる場合じゃないでしょうし。
「ほんとにそう。だから自分のやるべきことを粛々とやる。で、なるべく『俺、こんなに頑張ってるんだぜ』とか周りに言わないようにしてます。それ言っても人は動かんから。でも、ほんとはそれを言うような自分でいたかった」
それって憧れるようなものかな。
「や、憧れてはいないと思います。あの頃はそういうやり方でしか前に進めなかった。自分に余裕なかったし。でもそのほうがカッコいいじゃないですか」

千秋くんって高校時代、バスケ部のキャプテンだったでしょ? その時はどんな感じでチームをまとめてたの?
「いわゆる高校生が思うカッコいい不良のキャプテンですね。キャプテンなのに髪は長いしピアスはつけてるし、けど地元では進学校、しかもまぁまぁバスケも上手いっていう。だから周りの親からも人気があって。〈熱いカリスマ〉って呼ばれてた(笑)」
あはははは!
「でも顧問の先生には嫌われてたし、試合に出るともっと強い学校にボコボコにされるし。カッコいいけど、キャプテンとしてはダメでしたよ」
その熱いカリスマの部員に対する物言いはどうだったの?
「酷かったですね。よく後輩をなじるんですけど、5文字ですむことを500字でなじるんですよ。例えば試合なのに後輩がボールを忘れたら『ボールがないと練習できないじゃないか』っていうのを帰り道ずっと言い続ける」
それは酷いな。
「『ボールなくても練習できんの?』『いえ』『じゃあどうすんの?』みたいな」
初期のDEZERTと一緒じゃん。
「そうっすね」
昔はよく楽屋でメンバーをなじってたよね。
「でもあの頃のそういう自分がいたから今があるというか。初めから今みたいな〈千秋です! よろしくお願いします!〉っていうキャラだったら誰もついてこないですよ。しかもそんなバンドに誰も魅力を感じなかったはず」
確かに。俺も初めて観たライヴで、あなたの傍若無人さに目が止まったわけですし。
「そこから長い時間をかけて少しずつ変わってきて、今があるって感じですね」
そんな今の自分にとって、「「火花」」はどんな曲だと?
「もともと武道館が終わってすぐ書いた曲なんですよ。バンドが次へ向かおうとするタイミングで書いたというか」
じゃあバンドにとって大事な曲ですね。
「そう。だからほんとはこういう曲をキラーチューンにしたいんだけど、たぶんそうはならない。むしろ〈「無修正。」〉のほうがライヴ曲として人気になると思う」
なんでそう思うんでしょうか。
「〈「無修正。」〉は可愛い曲だからじゃないですかね。僕らってカッコつけてるけど、どこか可愛げがあるバンドじゃないですか。今の俺の優しい部分、善の部分。つまり〈善の無修正〉ってことで、ほんとに思ってることを書いたんで。だから優しいし可愛い」
個人的に「「火花」」は「The Walker」の続きっていうか、パート2だと思いました。
「なるほど。あれ、日比谷ワンマンの前に書いたから、なんか近いですね」
でも一時期、この曲が嫌いになってたじゃないですか。
「嫌いでしたね。だってほんとは〈立ち上がるんだ〉なんて歌で言いたくないんですよ。僕、そういう言葉で自分を鼓舞できるような光属性の人間じゃないんで」
知ってます。それでも当時は〈立ち上がるんだ〉って自分に向けて言い聞かせる必要があって。つまり自分のための曲。
「そうっすね。でも周りからはすごくポジティヴな気持ちで書いたと思われるのが嫌だったんですけど、今は違ってて。ちゃんと自分を演じられるようになったんですよ。これ聴いて立ち上がろうとする人がいるなら、そう唄ってもいいかなって」
つまり決意表明の歌で。一方で「「火花」」も幕張に向けての決意表明なんだけど、こっちは自分のためじゃなくて。みんなの歌になってる。
「なるほど……〈みんなの歌〉っていいな」
そう言われてどうですか?
「確かに〈みんなの歌〉だし、〈共に行こう〉って唄ってるけど、別に一緒に肩組んで歩こうってわけじゃないんですよ」
わかります。むしろ人はどこまでもひとりだし、それぞれの道を歩くしかない。けど気持ちだけは共有しようって意味での〈旅を共に続けよう〉なんでしょ?
「そうです。人生っていう長い旅をね。どっかで終わるんです、旅は。しかもバラバラで、同時に終わることはないし、どっかで脱落するヤツがいるかもしれない。けど、〈共に〉っていう気持ちで旅をしようぜって。もし仮に僕らが〈DEZERT党〉という政党だとして、幕張メッセへという目標と共に掲げる公約があるとすれば、こういう感じかなっていう」

つまり政治家が私利私欲ではなく国民のために頑張るのと同じで、今の千秋くんは自分より誰かのために歌を唄ったり、曲を書いてるわけで。
「そうですね。今はこの曲だけじゃなく、全部がそう。ほんとは昔みたいな厨二病っぽい言葉をふんだんに使いたい気持ちもあるけど、それやっちゃうと公約違反になるんで」
その公約を守ることだったり幕張に向かうことだったり、それを自分よりも優先させてるから、メンバーに対しても言い方を考えたり気を遣ったり。
「はい。しかもすごい我慢してやってるわけでもないですし。我慢はしてないけど、こういう自分――誰かを優先させてる人生は初めてですね。プライベートでも皆無。親に対してもそう。でも無理してるわけでもない」
もし今みたいな自分がバスケ部のキャプテンやってたら、違う人生が待ってたかもしれない?
「もしかしたら近畿大会には行けたかもしれないですね」
でもありえなかったでしょ?
「はい。『なんで俺の言うことができないの?』『昨日練習したじゃん』みたいな感じだったし、あの時はあの時ですごいバスケ部を背負ってたんですよ。試合に負けて一番悔しかったのは僕だったはず」
なぜそう言い切れる?
「チャラく見えるぶんだけ坊主頭の相手に絶対勝ってやろうって思ってたから。だからさっき昔の僕を『傍若無人だった』って言ってましたけど、そうやって最初はDEZERTも背負ってたんですよ。このバンドをカッコよく見せなあかんって、ひとりで背負ってた。けど、今はもうみんなのものっていうか」
キミだけが背負ってどうにかなるものじゃない。
「だから今はリーダーっていうよりも、代表取締役みたいな。で、会社って大きくなると取締役でも仕事から外されるじゃないですか。今はそんな感覚(笑)」
なるほど。
「で、自分のやるべきことをやる。みんなもそう。『あれどうなってる?』ってわざわざ僕から首を突っ込んだりしないし、やることやってくれればそれでいい。それって風通しのいい、やりがいのある職場じゃないですか」
つまりすごく真っ当な生き方をしてるわけですね。
「そうだと思います。真っ当だなって自分でも思い始めてます。だから……すごくつまらないですよね」
客観的に見ればそうかもね。
「だってそういうことを馬鹿にしてきたから。でも今は馬鹿にできない。そういう自分をダサいとは思わないですけど、カッコいいとも思えない。そうなりたくはなかったから」
じゃあ「The Walker」では〈再会の果てで〉と唄ってましたけど、そこはどうなるんでしょうか。いつかカッコいい自分と再会することを誓った歌でもあったわけで。
「うーん……無理なんじゃないですかね。だってそれやったら、ここまでやってきたことを全部否定することになっちゃうじゃないですか」
それだけ今の自分を肯定できてるってことでしょうね。
「そうですね。あと、いつでも曲で昔の自分と再会できるんで。今の自分が昔の曲を唄うと〈久しぶり。あの頃は上手く唄ってあげられなくてごめん〉みたいに思うんで。そうやってツアーの中で再会してますよ」

文=樋口靖幸
撮影=石川浩章
ヘアメイク=井上佳代
スタイリング=越中春貴_RIM
NEW SINGLE
「「火花」/「無修正。」」
2025.12.24 RELEASE
- 「火花」
- 「無修正。」
- My Unhappy Life
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〈DEZERT 47 AREA ONEMAN TOUR '25-'26 "あなたに会いに行くツアー"〉
2026年
1月5日(月)新宿LOFT ※SOLD OUT
1月6日(火)新宿LOFT ※SOLD OUT
1月10日(土)福井 CHOP ※SOLD OUT
1月11日(日)金沢AZ ※SOLD OUT
1月17日(土)福島 HIPSHOT JAPAN ※SOLD OUT
1月18日(日)栃木 HEAVEN'S ROCK 宇都宮 VJ-2 ※SOLD OUT
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1月25日(日)鳥取 米子 AZTiC laughs
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〈DEZERT 47 AREA ONEMAN TOUR GRAND FINAL 「僕らの音楽について」〉
2026年3月20日(金・祝)幕張メッセ イベントホール
