カッコよくいないとな、みたいなプレッシャーにもなってて。たまにワンマンより汗かく(ハヤシ)
そして3年目(2013年)のUKFCは、新木場で3日間開催。この年、ノーベンバーズはUKPを卒業しましたが、その後2015年と2018年のUKFCに参加された際は、どんなことを感じましたか?
小林「やっぱりUK.PROJECTっていう場所の素晴らしさだったり、そこにいる人たちのカッコよさを改めて感じましたよね。独立して、それまで周りの人たちに自分たちがしてきてもらったことへの感謝みたいなものが日に日に大きくなってるタイミングでもあったし、だからこそ少しでも成長した姿を見せたいなっていう一心でステージに臨みましたね」
ポリシックスは、ほぼ皆勤賞ですが、これまでUKFCに参加してきて、どんなことを感じてますか?
ハヤシ「毎年すごく新鮮な気持ちでやれてるんだけど、それはつねにマンネリにならないように、いろんなトライしているところがあるからだと思ってて。それこそ2013年に新木場で3デイズをやった時は、UK.PROJECTの歴史や精神、オルタナティヴなマインドを3日間にわたって、それぞれ内容を変えて見せたり。あとノーベンバーズと入れ替わるような形で、2014年からTOTALFATが出るようになって。そこでまた新しいムードに変わっていったじゃないですか」
初めて陽キャが来たみたいな感じでしたよね(笑)。
ハヤシ「そうそう、ちょっとびっくりした(笑)。そうやってイベント自体がどんどん進化・深化してることも感じるし。だから毎年緊張するんだよね」
あら意外(笑)。
ハヤシ「バリバリ緊張するよ!(笑)。同じ事務所やレーベルのバンドたちばかりだし、よく知るスタッフたちがバックヤードにいる安心感もあるんだけど、だからこそ、いいライヴにしないとな、カッコよくいないとな、みたいなプレッシャーにもなってて。たまにワンマンより汗かく時あるもん。俺、なんでこんなビショビショなんだろう?って(笑)」

またある時期から、UKFCの現場では〈和気藹々とせめぎ合う〉という言葉が聞かれるようになりましたよね。
ハヤシ「そう。ほんと、どんどんそういう空気になっていったんだよな。バックヤードでみんなと和気藹々としながらも、だからこそステージで下手はできない、っていうプレッシャーを毎年感じるし、それもあって毎回新鮮な気持ちでやれているところはあるのかな」
小林「あとUKFCは、お客さんも含めて、自分事だと思ってその場にいる人が多いイベントだと思うんですよ。それこそ今って、〈俺はこういう体験、こういう感動がしたい〉ってなった時に、〈こういうコンテンツあります!〉とか〈こういうサービスあります!〉って提案される一見便利な世の中になってますけど、あくまでも〈体験〉じゃなくて〈体験風サービス〉ばかりが多くなっている気がして」
ハヤシ「あくまで〈風〉なんだよね。YouTubeでも映画の見どころ紹介チャンネルとかあるけど、それを見るだけで満足しちゃう人がめちゃくちゃ多いでしょ」
小林「そうそう。でも〈おまえの人生2倍速にできんのか? やってみろよ!〉って感じじゃないですか(笑)」
ハヤシ「ははははは。それこそタイパ、コスパじゃないけど、それが重要視されてる傾向には、自分もずっと違和感はあるな」
小林「ですよね。最適化とか効率化ばっかりが優先される世の中になっていて。でもタイパ、コスパ、最適化みたいな流れで言うと、ポリシックスが表現してることって、最強のカウンターだと思うんですよ」
ハヤシ「あはははは! その解釈いいね」
ニューウェイヴの教科書には(笑)、無駄こそが美徳である、という記述がありそうですし。
小林「今みたいな世相の中で、人との関係においても、なんとなくの繋がりで満足したり、傷つくことが怖いからこの距離でOKです、みたいになってしまってるところがあると思うんです。だからこそ、誰といつ、どこでどんな縁を築くか、深めるかっていうところに今立ち返らないといけないなって思うし、UKFCは、そういう大事なことを確認できる場だと僕は思うんですよね」
ハヤシ「うん、そうだね。今日こうやって小林くんと改めて語り合うのもそうだけど、UKFCを通して〈縁〉っていうのは本当に感じてるな」
15年目のUKFCに臨むにあたって、今どんな気持ちだったりしますか?
ハヤシ「やっぱり、こんなにずっと孤立してたバンドをファミリーとして迎えてくれたし、毎年呼んでくれてるのもあるし、UKFCに対する〈感謝〉というキーワードはまずひとつあって。そこでどういうものを見せようかな?っていうのを今考えてるかな。あと曲だけじゃなくてムードとかも含めて、新しさみたいなものも見せたいなとも思ってますね」
小林くんはどうですか?
小林「僕もハヤシさんと同じ気持ちが基本的にあるんですけど、ただノーベンバーズとしては、今年結成20周年でもあるので、集大成というか自分たちのすべてを、その日のライヴから感じてもらえるようなものにしたいなとは思っていて。それは単に新旧織り交ぜてっていうことじゃなく、自分たちの精神性や、いい時間を過ごして今日までたどり着きましたっていう成長を、目の前の人たちや、UKFCに集まったみんなにちゃんと伝えたい。だからすごく気概を持ってやりたいと思ってます」

では最後に、今年気になるアクトや注目しているバンドがあれば教えてください。
小林「みんな気になるっちゃ、気になるんですけど、日にちが分かれてしまった先輩たちですかね。Zepp Hanedaで理樹さん(木下理樹/ART-SCHOOL、ヴォーカル&ギター)と握手できると思ったら、出演日が別になってしまって」
小林くんが青春時代に聴いてたART-SCHOOLやsyrup16gは、1日目の出演ですね。
ハヤシ「確かに初日は、普通にお客さんとして観に行きたいなと思うメンツだし、自分的には、椿屋四重奏がどういうショウをやるのか気になるな。あと新人も含めて、どれも観たいね。ライティライトとAre Squareは、まだライヴを観たことないんで、どんなライヴをするのか気になるし」
そして2日目には、久々に初期5バンドが揃います。それこそノーベンバーズは2018年以来、実に7年ぶり、BIGMAMAやTOTALFATもUKを卒業してから3年ぶりにUKFCに帰ってくるわけですが、それぞれの場所で戦って、いろんな経験を積んできたみんなが久々に再会することで、どんな空気が生まれるか、すごく楽しみです。
ハヤシ「いや、ほんと楽しみ。たぶん特別な日になる気がするな」
小林「そうですね。ただアーティストが集まってライヴをやるだけじゃないですからね。それぞれの思いや物語とか歴史を持ち寄って再会する日になるから、絶対に独特な何かが生まれると思います。あと今回、観に来てくれる人の中には、初めてUKFCにくる若いファンの方もいると思うんです。そこで、〈ロックバンドってやっぱり最高だな〉と思うような体験を持って帰ってもらって、何年後とかに、〈あの時のUKFC行きました〉っていう人がUK.PROJECTの門を叩いてスタッフになったり、バンドを組んで俺も出たい!ってなったり。そういうのが起こったら超カッコいいなって思うし、それってひとつの希望だと思うんですよ。だからそういう象徴的な日になったらいいなと思いますね」
ハヤシ「いやぁ、素晴らしい!」
確かにUKFCは、出演バンド、スタッフ、そしてお客さんが一緒になって1日を作っていくような場所でもありますからね。
小林「そうなんですよ。だからUKFCには、その場にいる人たち全員が主役だし、ここにいた甲斐があったって思える、そんな素敵なヴァイブスがすごくあると思うんで、そういう空気をブーストさせるものをステージ上にいる僕たちは置いていきたいですね」
ハヤシ「うん、ほんといい日を作りたいね!」
文=平林道子
撮影=森川英里

〈UKFC on the Road 2025‐15th ANNIVERSARY‐〉
会場:Zepp Haneda (TOKYO) ※2ステージ制
2025年8月9日(土) open 12:00 / start 13:00 ※SOLD OUT
出演:Age Factory / ART-SCHOOL / the dadadadys / Helsinki Lambda Club/ the myeahns / syrup16g / からあげ弁当 / 椿屋四重奏2025 / ペルシカリア
2025年8月10日(日) open 12:00 / start 12:30
出演:[Alexandros] / Are Square / BIGMAMA / LAYRUS LOOP / The Novembers / POLYSICS / the telephones / TOTALFAT / the shes gone/ WurtS / 銀杏BOYZ(弾き語り) / ライティライト
*銀杏BOYZは峯田和伸、加藤綾太の2人編成での出演になります。
Ticket 前売 6,600円(Drink代別)
学割 ※当日1,000円キャッシュバックあり
一般発売(8/10の公演のみ) http://eplus.jp/ukfc/