畑 芽育さんとなにわ男子の大橋和也くんがW主演を務める映画『君がトクベツ』。イケメン嫌いの陰キャ女子・さほ子(畑)と国民的アイドル・皇太(大橋)のまさかの出会いと恋愛模様を描く王道ラブストーリーだ。映画の見どころや撮影秘話を、松田礼人監督にたっぷり教えていただきました!
(これはQLAP!2025年6月号に掲載された記事です)
原作は幸田もも子さんの同名少女コミック。実写映画化する上で松田監督が大切にしたことを教えてください。
原作を読んで僕がまず感じたのは、とても“愛しい”作品だということ。国民的アイドル LiKE LEGEND(以下ライクレ)の皇太が、実は天然で泣き虫キャラだったり、イケメンを毛嫌いする陰キャのさほ子が、ボケに対して激しく突っ込むタイプだったり。愛すべき2人が織り成す物語が本当に愛しくて、これは絶対に原作ファンを裏切らない作品にしなくては!と強く思いました。
そんなプレッシャーを主演の畑 芽育ちゃんと大橋和也くんは軽くクリアしてくれました。それくらい2人は原作のイメージ通りでした。2人が紡ぎ出す空気感が本当にステキで。原作者の幸田もも子先生も、現場で芝居を見ながら涙ぐんでいるぐらい、いちファンとして作品を楽しんでくださっていて、僕までうれしく思ったくらいです。
お客さまには、大好きなスナック菓子を食べるような、気軽な感覚で映画館に足を運んでほしいです。笑いながら楽しんでいただいて、でも見終わったときに、なぜかあったかい気持ちになれる……。そんな作品になっているとうれしいですね。

陰キャ女子・さほ子役の畑さんと国民的アイドル・皇太役の大橋くんの役者としての印象はいかがでしたか?
初めて会った芽育ちゃんは、本当にかわいらしくて整った顔立ち。それが髪を結んで、メガネをかけたら、もうさほ子にしか見えないんです。陰キャ全開の笑い方、鼻の穴全開の怒り、本当に漫画から飛び出してきたみたい。そんな百面相を見せてくれるさほ子が、物語が進むにしたがって、恋する切ない表情になっていく。恋に浮かれていただけの女の子が本当の恋に目覚めていく成長物語を、芽育ちゃんが見事に体現してくれました。
皇太を演じる大橋くんは、いつも笑顔で、真面目で、役柄のまんま。アイドルとしての皇太の演技に関しては、思うままやっていただくのが正解だと思っていたので、僕からアドバイスはしていません。『そのままのあなたが出るのが一番いい』とだけ話しました。あえて言うなら、皇太がさほ子を突き放すシリアスなシーンなどで、笑顔がいいのか、真剣な表情がいいのか、といった“アイドルの顔”と“皇太自身の顔”について話すことはありましたが、大橋くん自身がキャラをしっかりつかんでいたので、安心して任せることができました。


さほ子と皇太の恋を描く上で大切にしたのはどんなことでしょう? 印象に残っているシーンも教えてください。
恋愛シーンを描く上では、皇太の心が揺れる瞬間を大切に撮影し ていきました。過去のトラウマから、もう特別な存在は作らないと決めていた皇太が、さほ子には何かを感じていくようになる。あえて“ここだ!”とわかるようには描かなかったのですが、皇太の微妙な心情の変化は見て感じ取っていただけるのではと思います。
また、僕が印象に残っている恋愛シーンは、さほ子が皇太への恋心に蓋をするシーンです。さほ子は皇太の近くにいるのが苦しくて身を引こうとするし、皇太はそばで応援してほしいと思いながらも『わかった』と納得したフリをする。お互いに伝えられない思いがあるのに、映画を見るお客さまには伝わってほしいという、そのさじ加減が非常に難しくて。
ただ、そこは芽育ちゃんと大橋くんの理解が素晴らしく、『この瞬間だけドキっとしてほしい』といった少しの説明だけでも、十分にその絶妙な空気感を表現してくれたと思います。

国民的アイドルグループ・LiKE LEGENDを演じるメンバーの印象は?
ライクレのメンバーは、なにわ男子の大橋くんをはじめ、FANTASTICSの木村慧人くん、M!LKの山中柔太朗くん、DXTEENの大久保波留くん、 MAZZELのNAOYAくんと、今をときめく旬の子ばかり。5人が並ぶと、普通に『あ、ライクレがそこにいる!』と思わせられました。
クールな叶翔を演じる木村くんは、すごくシャイ。最初は緊張もしていたのですが、やればやるほど芝居が良くなる柔軟性がありました。山中くんは、小悪魔キャラの晴を演じていますが、冷静で大人っぽいタイプ。一生役のNAOYAくんは、いじればいじるだけおもしろいのに、踊り出すとすごくカッコいい。優生役の大久保くんは、ひたむきさが伝わってくる子でしたね。
ステキなメンバーが揃ったライクレですが、この映画だけの特別なグループ。主題歌『YOU ARE SPECiAL』のパフォーマンスもこの映画でしか見られないので、何度も劇場に足を運んで楽しんでいただきたいです。

大橋くんは、なにわ男子として活動するリアルアイドルでもあります。皇太を演じる上で等身大の魅力も生かされているのでしょうか?
冒頭のコンサートシーンは、映画を見に来てくれたお客さまの心をつかむ大事な場面。実際には コンサートとは異なる環境で撮影したのですが、大橋くんはさすが本職のアイドル。リアルなコンサートの空気をスッと再現してくれました。
また、MVの撮影シーンでは、歌の合間に胸キュンなセリフも差し込まれます。これが、男の僕が聞いても、不思議と照れくさくならないんですよね。皇太がファンの皆さんへの思いを込めて言うセリフなのですが、大橋くんにも同じ気持ちが根っこにあるからか、全然ウソくさくないし、スルっと胸に入ってくる。生まれついてのアイドルってこういうことなんだな、と感心しました。
それから後半のライヴ中継シーンも見どころのひとつ。タイトなスケジュールをみじんも感じさせないクオリティーと笑顔で、メンバーが歌とダンスを披露してくれて。素晴らしくて、撮影している僕までこみ上げるものがありました。

文=室井瞳子
松田礼人監督
まつだ・あやと/1969年7月9日生まれ、山形県出身。TBSスパークル所属。映画『エンドレス アフェア〜終わりなき情事〜』、ドラマ『正月時代劇 いちげき』『恋愛のすゝめ』『地獄の果てまで連れていく』など、多数の映画、ドラマの演出を手掛けている。
『君がトクベツ』
(ギャガ配給/6月20日より全国ロードショー)
出演:畑 芽育、大橋和也、木村慧人、矢吹奈子、山中柔太朗、大久保波留、NAOYA/佐藤大樹
©幸田もも子/集英社・映画「君がトクベツ」製作委員会