解散、って打ち出す気持ちにはなれなかった。それは……どこかに夢としてとっておきたかったのかな
SHO WADA and His Bandは、和田さんがリーダーで、他はバックメンバー、という捉え方になるんでしょうか?
「ですね。今までのソロライヴは完全にひとりだった。だからソロアルバムの曲もバンドアレンジにしてるのに、全部ひとりでやってた。それをよりアルバムに近い形で再現できるし、トライセラのレア曲もやってみたい。なのでこのスタイルでやると、すごく曲の幅が広がる。そこは魅力のひとつだと思いますね」
ソロはわかるんですよ。でもバンド軸の活動を、新しいバンドを結成して、新たなバンド名つけてやろうとしないのは、トライセラへのいろんな思いがあるからじゃないかな、と思ったりもします。
「それはねえ……僕がどうこうできる問題じゃない気がする。この27年間の、お客さんそれぞれの思い出がトライセラには入ってるから、それをそう簡単に他のバンドを組んで、またみんなに一から夢を見せていくって、けっこう大変だと思う」
ですね。
「他でどんなに素晴らしい音源を作ったとしても、若い頃、最初に組んだバンドにかけられた魔法って特別で、それは誰にも解けない。僕もロックバンドのそういうところに魅力を感じてたわけだけど、やってた側としては、そんな簡単に再結成なんてできるわけないじゃん、って思う。だけど一旦ファンの立場になってみると、例えばポリスなんかオリジナルメンバー全員生きてるんだから、またやってくれよ、って思っちゃう」
再結成するバンドは価値観変わるんでしょうね。
「うん。人間らしいし、それこそ人生だと思いますよ。変わるんですよ。じゃなかったら再結成なんてしないですもん。だから僕らの場合は……そうだなあ、解散って打ち出すんだったら、ちゃんと解散活動しなきゃいけないと思うんですね。そうしたらそこそこスケールが大きくなるし、いやらしい話、お金だってかなり稼げる。でもそういう気持ちにはならなかった」
それはなんででしょうね。
「なんだろう……どこかに夢としてとっておきたかったのかな。別に解散したって再結成すりゃいいんですけど、でも解散したんだったら解散のままがいいかなって、僕はちょっと思っちゃいそうなんで」
なるほど。
「いろんな人たちが再結成しますけど、僕はどっかでちょっと、なーんだって思っちゃう(笑)。ファンの立場になってみたらきっと嬉しいはずなのに、なんか僕はそこらへんがちょっと冷めてて。〈なんだよ、じゃあ解散なんてしなきゃよかったじゃん〉って思っちゃう。でもさっきも言ったように、変わるのが人間だから。その時の自分に正直に、ってことでいいかと。だからいつかくる将来、〈一緒に音出すか〉ってなるかもしれない。その可能性は残しておきたかった、って感じかなあ」
いい話ですね。
「ただ僕ら3人、いつもさっぱりしてて、いじいじ引きずった顔見せないから、SNS見たら、あいつら思いのほか早く復活するぜ、みたいな書き込みを見かけるんです。いや、それはどうかなと思いますよ(笑)」
そうですね、今は27年間続いたバンドから解放されて、いろんな音楽活動やってみたらいいんじゃないですかね。
「なので自分が2番手のバンドはやってみたいって思いますよ、純粋に楽しめそうだし。あと、俺をギタリストとして必要としてくれる人がいたら、声かけてー(笑)」
あと軽く、バンドを楽しむ気持ちでやったらいい気がします。友達と……田中くんとか。
「ああ! なんかね、そんなくだけたLINEしたことありますよ。〈もし架空のバンドに俺と田中くんがいてさ、他にメンバー入れるとしたら誰?〉って」
高校生ですか(笑)。
「そしたらいっぱい候補挙げてくれて(笑)。若干マニアックな人選だったんで、全部YouTubeで見たんですけど、彼が挙げてきたミュージシャン、全員カッコよかった」
そうやって楽しみながら音楽やってもいい気はしますよね。
「楽にね。と同時に、人生ところどころで気合いを入れることが僕にはやっぱり必要で。それをやってないとね、ほんとだらけた人間になっちゃうんで(笑)。だからSHO WADA and His Bandも6月にライヴ組んだんです。今度メンバーと初めて会うんだけど、ちょっと緊張しますよね! そういうことやるの、たぶんトライセラ以来だから」
そうでしょうね。
「あと学生時代、楽器屋にメンバー募集って貼りだして、電話番号書いて、切って持って帰れるようにして……って今の子は意味わかんないですよね(笑)。そしたらほんとに電話かかってきて。お茶の水の、今はなき森永ラブで待ち合わせしたら、僕の理想と程遠いやつが来ちゃって(笑)」
ありがちです(笑)。
「まず見た目からして、一緒にバンド組むイメージがまるっきり湧かないし、話してみたら、めちゃ上から目線で。あれは辛かったな〜。あれ以来、メンバー募集ってトラウマなんですよ(笑)。そう簡単に理想のやつは来ないぞって」
でもそうやって音楽を始めるのは新鮮じゃないですか?
「そうですね、ちょっと新しい景色見ていきたいなって思ってます。でも、ある意味この27年、同じ景色を見続けてきたので。ちょっと今、不思議な感覚なんです。なんかね、年齢は今年50なのに、デビュー前に戻ったような、変な感じなんですよ」
文=金光裕史

〈SHO WADA and His Band ~TOKYO/OSAKA ~〉
6月15日(日)東京 日本橋三井ホール
6月22日(日)大阪 心斎橋 Music Club JANUS