Mrs. GREEN APPLEの大森元貴さんとtimeleszの菊池風磨くんがW主演を務める映画『#真相をお話しします』。あらゆるゴシップの“真相”を明かすことで巨額の投げ銭を得られる生配信暴露チャンネルが舞台となる物語だ。暴露チャンネルを楽しんでいた警備員の桐山(菊池)と謎の男・鈴木(大森)。ついに桐山もスピーカー(話し手)に選ばれ自身の真相を暴露し大儲け。しかし友人だと思っていた鈴木も突如スピーカーとして名乗り出て......!? メガホンをとった豊島圭介監督に、貴重な撮影秘話を伺いました。
(これはQLAP!2025年5月号に掲載された記事です)
結城真一郎氏による同名ミステリー小説を映画化した本作。監督が感じた原作の魅力や実写映画化する上で大切にしたことを教えていただけますか?
原作は、SNSなど現代的なツールを用いたストーリーの中で、いかにどんでん返しを仕掛けるかということに主眼を置くミステリー短編集。二転三転の展開で、読者の感情を揺さぶって楽しんでいる作者像が見える、そんな作品だと思いました。映画では各エピソードを串刺しにする仕掛けを施して、鈴木と桐山を軸にした一つの長編となっているのですが、僕がこの作品に参加した時点である程度形になった脚本があり、ラストの展開におもしろさを感じて。そのラストをよりおもしろくすることを考えた上で台本を完成させていきました。
特にこだわったのは、うっかりすると見過ごすような“違和感”をどう埋め込むか。そして散りばめられた“違和感”が、主軸になる2人の物語にどう関わっていくのかということ。網の目のような構造を作り上げるのが難しい点でもあり、おもしろさでもありました。
また、キーとなるSNSは、我々の生活とは切っても切れないメディアですが、現代では匿名で人を傷つけかねないメディアにもなってしまっている。そこに真っ向に取り組んだ作品でもあるし、根底には“名乗り合って対話することの大切さ”というテーマも内包されています。この物語を通して、観客の皆さまにも何か届くものがあったらうれしいです。

謎の男・鈴木役を演じる大森元貴さんは映画初出演。そもそもの大森さんの印象は? また、現場での俳優としての姿はいかがでしたか?
鈴木役をMrs. GREEN APPLEの大森くんが演じると聞いたとき、平野 隆プロデューサーが映画『ラーゲリより愛を込めて』の舞台挨拶の集合写真を見せてくれて。そこに主題歌を担当していた大森くんもいたのですが、いたずらっぽい表情の彼を指しながら「これなんだよね」ってうれしそうに言うわけですよ。愛嬌があってポップなんだけど、その裏で何を考えているんだろうという策士感のようなものがある。その笑顔を見て、「なるほど、トリックスター感ね」と納得するものがありました。
実際にお会いしてみたら、愛らしさのある“恐るべき子供”というような方でした。映画初出演なので、役について話したり、大森くんが演技をしやすいように準備をしたのですが、クランクインのときには僕が普段俳優と会話するのと同じ感覚になっていましたね。
鈴木が事件の真相を話すシーンでは、「100人に向けて話すのではなく、目の前にいる一人の友人に話すようにしてみて」と伝えたら完璧にアジャストしてくれて、すでにベテランの域でした。 表情の表現も上手で、体のコントロール能力が高く素晴らしかったです。大森くん自身、鈴木を「狂った凪」と評していましたが、その言葉通りの役を体現してくれたと思います。

過去に秘密を抱える警備員・桐山役を演じるのは菊池風磨くん。監督は過去にも菊池くんとお仕事をされていますが、今作を通して新しい一面や成長を感じた部分はありましたか?
桐山は、過去はエリートサラリーマンでしたが、ある事件をきっかけに心を閉ざしてしまい、現在はやさぐれた警備員という二面性のある役柄。それを演じられるポテンシャルと意外性の両方を持っているのが、風磨くんでした。
風磨くんとは過去にドラマで一緒に仕事をしていて、そのときはアイドルの要素を生かした役だったのですが、今作の桐山は極限状態でボロボロになるという、彼がこれまでに演じてきていないような役。彼にとってチャレンジだったと思いますが、僕が出すリクエストに対しても、自分の中の引き出しとは違う新しいものを探してる感じがしたし、見たことのない顔がいくつも出てきて、さまざまな期待にも応えてくれました。恐怖で目をカッと見開いた顔なんて、アイドルではなかなかしない顔ですが、振り切った芝居で挑んでくれましたね。
また、衣装合わせのときには風磨くんが、「エリート時代の友人との関係は上っ面だけで心は開いてはいなかったはず。警備室で鈴木と一緒に話しているときのほうが、桐山らしかったんじゃないかな」と、役についての解釈を話してくれて。その解釈がおもしろかったし、俳優としての経験値が増えてアプローチに深みが増したなと成長を感じましたね。

主演の2人とはどのようにシーンを作っていったのでしょう? また、監督のお気に入りのシーンも教えてください。
映画は、警備室で暴露チャンネルの生配信を見る鈴木と桐山の物語が主軸。2人の会話は、物語が求める関係性の変化を逆算して考えていて、最初はちょけた鈴木に対して桐山が“下に見てもいい友人”といった接し方をしています。1日の中で関係が変化するのですが、特に大森くんは行動を起こす側なので細かく打ち合わせをしました。
僕のお気に入りは、鈴木が桐山の手をつかみ、狂気的な一面を見せるシーン。口調は大森くんからの提案だったのですが、「鈴木はどんな人生を送ってきたんだろう」と思わせられる芝居で、映画の方向性を決めた大事なシーンになりました。
ほかには、桐山がスピーカーに選ばれたシーンでは、横でグッドポーズをする鈴木に応える、喜びでも照れでもない、いろいろな感情が混ざったような桐山の表情がすごく良くて。簡単ではないその顔ができるのは、風磨くんがその場に没入して、大森くんとのコミュニケーションが成立してるということですし、2人の化学反応もおもしろかったですね。


暴露チャンネルでさまざまなスピーカー(話し手)が世間を騒がせた事件の真相を暴露するシーンも刺激的。こちらの撮影はいかがでしたか?
暴露チャンネルの複数のエピソードは、スピーカー(話し手)役の俳優陣が本当に優秀でしたね。主婦役の桜井ユキさんは狂気的な表情や目の泳ぎ方がいちいちおもしろい。それから美容室経営者役の伊藤英明さんは役を記号的なキャラクターにしないように考えて、芯を食った提案をしてくださって。ベテラン俳優お二人の演技は、さすがの一言でした。
また桐山が暴露するエピソードは、リモート飲み会中に起きたある事件の真相。 伊藤健太郎さん、栁 俊太郎さん演じる友人との通話のシーンは、実際にマンションの3部屋を借りて、リアルタイムにお芝居ができる環境を作りました。どのエピソードでも世界観まで細かくこだわっているので、ぜひ驚きの真相を楽しんでください。


衣装や髪形など、ビジュアル面作りでのポイントはありますか?
鈴木の衣装は黒のジャケットにパーカー。過去の出来事から現在までの心境の変化と合わせて、服装もグレーから黒へと色濃くなるように、スタイリストが計算してくれました。
桐山は現代感やリアルな存在を意識して、髪形やアクセサリーは自由という設定にしています。髪色は茶髪で、根本をプリン状態にしてやさぐれた印象にしてもらいました。逆にエリートサラリーマン時代の桐山は、清潔感のある髪形とビシっとしたスーツ姿で過去と現在のギャップを強調。手足が長くてスタイルが良く、すごく似合ってましたね。
文=室井瞳子
豊島圭介監督
とよしま・けいすけ/1971年11月13日生まれ、静岡県出身。脚本家を経て、2003年に監督デビュー。以降、多数の映画、ドラマの演出、脚本を手掛ける。近年の作品は、ドラマ『霊験お初〜震える岩〜』『黄金の刻〜服部金太郎物語〜』など。
『#真相をお話しします』
(東宝配給/4月25日より全国ロードーショー)
出演:大森元貴、菊池風磨 ほか
(C)2025 映画「#真相をお話しします」製作委員会