開店休業状態ではあるけども、まだバンドが続いてるというだけで……よくない?
その〈ネバーダイ〉含めて、「ロックンロールハート」は、これまでサブタイトル違いで4曲書いてるけど、百々にとってのライフワークみたいな捉え方でいいのかな?
「自分とロックンロールの関わりを唄うってテーマで作ってて。最初は高校時代のことを唄ってたけど、3作目の〈~ネバーダイ〉は親父が死んだことを唄って、百々和宏とはこういう人です、今こういうことを思ってます、ってことをストレートに唄う場にしてる」
だから逃げられないわけですよね。
「もうデモの段階で〈ロックンロールハート〉って唄ってたしね。で、キュウちゃんからのLINEで腹くくった。どう捉えられてもかまわん、と」
誰かの不在、取り残された自分、みたいなものを感じざるを得ない曲ですからね。
「やっぱりショックだったわけですよ。自分もいつまで音楽を続けられるか、って考えたし。でもそんなことを言うのも野暮じゃん。基本的には、知るか!ってスタンスでいたいわけでさ。でも〈ロックンロールハート〉ってタイトルに付ける時は、カッコつけずに思うことを書く、と自分に強いてるから、余計にハードルが高くなる。おまけにこんなナイーヴなコード進行が出てきたから、どうにもこうにも逃げ道がない(笑)。だから歌詞をつけるまで半年近く寝かしてた」
そう思われるよね。モーサムで「ペチカ」作った時も、母親の死を唄ってたけど……。
「……あ、思い出した。随分前、〈ロックンロールハート(イズネバーダイ)〉を、セッションでキュウちゃんに叩いてもらって、何度かやったんだけど。その時『これいい曲だわ~』とか言うから、ポロっと『これ、親父が死んだ時に作った曲なんだよね』って話をしてさ。それからまた時間が経って、キュウちゃんとサシ呑みした時『〈~ネバーダイ〉って親父が死んだ時に作ったって話してたじゃん。その話聞かせてよ』って言われたの」
キュウちゃんも何年か前、親父さん亡くしたんだよな。
「そう。あとから知ったんだけど、それが亡くなった日だったの。確か、次の日実家に帰るとか話してた。それも強烈に記憶に残ってて。だからこの曲を形にしようって言ってくれるのは嬉しかったけど……やっぱ気も遣うじゃん」
まあバースディを3人で続けていこうとしてる時だからね。
「そんなタイミングだけど、この曲やったら俺、本気になっちゃいそうだからさ(笑)。そこまで言われちゃうと」
お互いがそう思うくらいいい曲なんだから、もっとバンドとして遠慮なく形にしていけばいいでしょ。
「そうでしょうね。でもバンド、疲れるんだよ(笑)」

もうひとつのバンドもそんな感じですからね。
「ははははは。あっちは開店休業中です。こないだ久々にライヴやって、お客さんにも関係者にも『もっと早くやれ』ってやんや言われたけど、なかなかやらない(笑)」
困ったもんだ(笑)。
「でも、居心地は悪かない感じになってきましたね。ライヴの本数は年間数本で、音源は9年近く出してないけど、ここに来て勇(藤田勇)も武井(武井靖典)もやる気を見せてきたので」
50歳超えてようやくか(笑)。
「周りにスタッフいないから、焚きつける人がいないのよ(笑)。まぁ歳をとったのもあるし、開店休業状態ではあるけども、まだバンドが続いてるというだけで……よくない?」
いいことです。続いてることに意味がある。
「単純に、誰かが旗振って船頭になるのが嫌なバンドじゃん? だから自分たちでやるようになって、動きがガクンと落ちたけど、あの時辞めなくてよかったなって勇も思ってるはず。それはやっぱり感じるのよ」
終わりにしなかったのはなんで?
「俺が嫌だって言ったから。勇は辞めてもいいってその時言ってたけど……またキュウちゃんに戻っちゃうけど(笑)、『解散は絶対に辞めろ。看板は降ろすな』って言われてたからね。中村達也とクハラカズユキ、3人で呑んでた時に」
ああ、昔、その話してたね。
「ずいぶん前だけど、あれはずっと引っかかってる。もう無理かなってなるたびに思い出してる。キュウちゃんは目を赤くして、中村達也は遠い目をして言ってたから(笑)」
それはこの歳になってしみじみ感じるでしょ。
「本当に。パーマネントなバンドが続いてるってことは、何ものにも代えがたいし、ありがたい。バンドの解散だけじゃないけど、こうしとけばよかった、ってしみじみ語る人を見てるとさ、メンバー誰かが死ぬまでは、絶対に解散せん!と思ったよ。だからって『もっとライヴやれ!』とか『新曲作れ!』って言われると、だったら辞めたくなっちゃう(笑)」
捻くれてるにもほどがある(笑)。
「だって疲れるんだもん(笑)。まあ3人とも元気なうちに音源作るよ。でもそうやってバンドが存在してると、それだけでありがたみも感じるしね。じゃないとソロで、あんなに酒呑みながらライヴやれないもん」
それはそれでモーサムがなくてもできるんじゃないの?
「いや、両方あっての百々和宏みたいなところがあるからさ。モーサムがなくなってたら、あんなダラッとした活動はしてないし、頑張って誰か探して、違うバンドを組んでたと思うよ。でもそれをやると今度はモーサムと比べられて、どんなにカッコいいバンドになったと自分が思っても、うまくいかないってことは、ロックリスナーとしての目で見たらわかる……まあ、バンドを組んだものの宿命みたいなもんだけどさ」

最初のバンドを引きずらざるを得ない、と。
「それで苦しんでるミュージシャンもいっぱい知ってるから、バンドの看板を下ろさなくてよかったと思うよ。でもピロウズの解散はびっくりした。さわおさん(山中さわお)らしいけど」
どう思った?
「うーんとね、さわおさんどうこうじゃなくて、ピロウズってバンドとして考えてだけど、もしモーサムが途中で解散してたら、同じようにしただろうな。解散ツアーやらないで、残されたツアーを黙々とやって、終わったら発表。その美学はすごく理解できる。でも……バンドをやりたかったんだろうな、って思ったな。単純に」
でも、もう看板を下ろすことはないだろう、と思ってた。
「バンドをやりたいんだよ。ちゃんと。それはすごくわかる。でもさわおさんやチバさんは、自分が看板背負ってる意識がめちゃくちゃ高かったと思うしね。その重さはあったと思う。俺はそれがあんまりないから、まだ楽。俺は自分から看板を下ろすことはないと思う」
いいことです。
「今はちょっとわかるんだよね。バンド組んでさ、このメンバーでやることに夢とかロマンを勝手に持つじゃん。それがいいんだけど、長くバンドをやることとは反比例するっていうかさ。違う場所があったほうがいいのよ。モーサムはハレとケの〈ハレ〉というか。尋常じゃない状態に自分を持って行く場所、みたいなイメージで、それはそれでめちゃくちゃ楽しいんだけど、自分をぶっとばす場所みたいなところだから」
ソロはそれとはまた違うというか。
「ソロは生活と地続きみたいなところがあるからね」
そういう人だから、「ロックンロールハート」みたいな胸を打つ曲が書けるんだろうな。
「虎舞竜を超えます!」
わははははははは!
「〈ロード〉は15章まであるらしいから(笑)」
でも俺は、69ersは3人のバンドとして遠慮なくバリバリ、それもガチンコでやったほうがいいと思うな。
「そうね。春から6月ぐらいまでツアー廻るんだけど、それでこの曲を育てたら、また何か見えてくるんじゃないかな」
そんなわけで今回のあの曲はとても素晴らしいと思います。
「ありがとうございます」
さすが速攻で送ってくるだけありますよね。
「絶対これ釣れると思って(笑)」
見事に釣られました(笑)。
文=金光裕史

NEW EP
「Rock’n’ Roll Heart, Over & Over Again」
2025.03.14 RELEASE
※ライヴ会場&オフィシャルサイトで販売

- ロックンロールハート (オーバー&オーバーアゲイン)
- 当たり屋ベイビー
- 69ersのテーマ
〈百々和宏と69ers TOUR2025“OVER & OVER”〉
4/18(金)高知ri:ver
4/19(土)高松燦庫SANKO
4/20(日)広島CLUB QUATTRO
4/25(金)東京 吉祥寺bar Days ※SOLD OUT
4/26(土)宮城 ARABAKI ROCK FEST.
4/28(月)新潟Live Spot WOODY
5/6(火祝)江ノ島虎丸座
5/9 (金)福岡UTERO
5/10(土)小倉FUSE
5/11(日)宮崎LIVE HOUSE ぱーく
5/30(金)名古屋得三
5/31(土)甲府桜座
6/1(日)東京 荻窪Top Beat Club
6/6(金)札幌SUSUKINO810
6/7(土)北見Blue Chipper
6/8(日)釧路火星ツイスト
6/28(土)宮古島 GOOD LUCK!