昨年秋にスタートした〈SOARING “THE PHOENIX” TOUR〉。谷口鮪(ヴォーカル&ギター)の体調不良による一時中断もあったが、今年1月、無事行われたファイナルのステージで谷口は、「情熱の炎が途切れることがなければ、覚悟があれば、どんな状況でもバンドは続けられる」と語った。まさにその言葉通り、一昨年末のメンバー2名の脱退による活動休止を経て、サポートメンバーを迎え精力的にライヴを重ねながら、1年にも満たない期間で新たなKANA-BOONを構築。バンドが前に進む姿をしっかりとみせていったのだった。そこで今回、谷口と遠藤昌巳(ベース)それぞれに、ライヴバンドとしての進化と成長も感じさせたツアーを終えた現在の思い、そして初めて遠藤が作曲を手がけた最新曲「日々」について語ってもらった。より誠実で正直に生き様を鳴らすロックバンドとなっていく、そんなKANA-BOONの逆襲が、ここから始まる。
(これは『音楽と人』2025年4月号に掲載された記事です)
谷口鮪 INTERVIEW
復活ツアーが終わって3週間ぐらい経ちましたが、改めて鮪くんにとって、どんなツアーでしたか?
「自分の中では、メンバー2人が抜けたことに対してどういう思いでいるのか、それを直接みんなに会って伝えていくことで、ツアーが終わる頃には、すっきりした状態で2025年に向かって前進できるんじゃないかっていう感覚で臨んだところがあって。だけど、セミファイナルとファイナルが延期になって、それも年を跨いでしまうのかと思っていたんですよね」
すっきりする状態になるのも持ち越し、みたいな。
「でも年末フェスに出て、いろんなものがきれいに削がれた感じがあって、なんかすごいすっきりしたんですよね。なので、セミファイナルとファイナルは、去年のツアーとはまた違う切り口、より光が差してるような、そういう音や言葉たちで前に進んでいくことをちゃんと伝えられたかなという気がします」
ファイナルのMCで「音楽の女神が一回止まれと言ってくれた気がした」と言ってましたが、セミファイナルの前に体調を崩したことで、何か思うこともありましたか?
「そうですね。やっぱり超弾丸復帰だったじゃないですか」
メンバー脱退による活動休止の発表から、サポートメンバーを迎えて新体制で復活するまで、半年もなかったですもんね。
「僕らは幸い、2人が抜けるという発表のタイミングで、すでにサポートメンバーと出会えていて、わりとすぐ次に向かう準備は進められたんですよね。でも、初めましての人とコミュニケーションを重ねて、1から音を作っていくにあたって、よりタフにこの人たちの真ん中に自分はいなきゃいけないっていう感覚が強くなって。だから、またバンドをやれる喜び半分、こうやってバンドを背負って生きるのが、自分の生き様なんだなっていう重み、みたいなものも半分あって」
気負いというか。
「うん。自分としては、やれる限りのことをやって頑張らないと、っていう気持ちがあったし、KANA-BOONが表に出られる場所をたくさん設けたいっていう意思があったんで、マネージャーに『なるべくライヴを入れてくれ』って言って」
それによって、ちゃんとバンドが前に進んでることを見せたいみたいな。
「そうですね。そういう気持ちの中でワンマンツアーを迎えて、セミファイナルのタイミングで体調を崩して……どうやら自分は、フルスロットルでやれるのは7ヵ月が限界だったというのが、そこでわかったというか(笑)。やる気満々でしたけど、ここで無理しちゃうと、それこそ長い休養に入らないといけなくなってしまう可能性もあるんじゃないかっていうのもあったし、音楽の女神が『一回休んどき。ちょっと頑張りすぎたよ』みたいなことを言ってくれてるんじゃないかなって。それでチームのみんなで話し合って、チケットを取ってくれていたリスナーには申し訳ないけど一旦延期しようっていう感じでした」
やる気があっても身体は正直だからね。MCでは、一度立ち止まったことで、いろいろ考えることができたとも言ってたけど、フルスロットルで駆け抜けた1年を、自分の中で整理することができたところもあるのかな。
「そうですね。KANA-BOONというバンドをやるうえで、全部を背負ってやることの美学というか、そういうロックバンドのカッコよさみたいなものが自分の中にはあったんです。でもこの先、これまでのことをすべて背負っていくのか?って考えた時に、それはさすがに無理があるなと思って。だから、KANA-BOONという屋号だったり、大切な思い出はこれからも背負っていくけど、それ以外のいろんな出来事に関しては、もう過去のものとみなして、自分の人生とは切り分けていいんじゃないかなって」
いいことも悪いことも一切合切背負うのではなく、自分にとって必要なもの、大事にしたいもの以外は、切り捨ててもいいんじゃないかと。
「うん。これからの人生を考えて、健康的に楽しく音楽をやるには、もうちょっと身軽に生きてもいいんじゃないかなって。そう思いました」
去年までのツアーの本編は「まっさら」で終わっていたわけですが、延期があったことで「今の自分たちにとってこの曲が最後にふさわしい」と言って、セミファイナルとファイナルは、ラストに「日々」を演奏しましたよね。
「〈まっさら〉で終わってた時は、〈タフだな、KANA-BOON〉って感じで、パンチをぶっつけるみたいに圧倒するような終わり方をしてました。だけど、〈日々〉が加わったことによって、こぶしじゃなく、温かい拍手みたいなものに変換されましたよね。だから、〈日々〉をワンマンでやれてよかったです」
12月にリリースされた最新曲というのもありますが、この曲を最後に演奏した理由を問われたら、なんと答えますか?
「そうですね、そもそも〈日々〉が生まれたことが、僕にとってかなり大きな出来事で。マーシーがすごくいい曲を作ったっていう喜びがあって。レコーディング中、僕、マーシー(遠藤)に何度も尋ねたんですよ。『うれしいやろ? お前の曲がどんどん形になっていくんやぞ』って(笑)」
そしたらマーシーくんはなんて答えたの?
「ほーぉーみたいな(笑)」
くくくく、かなり喜んでいたと。それこそ本編ラストの「フカ」「まっさら」「日々」という流れは、去年1年かけて復活したKANA-BOONを物語るものになったなと思うし、マーシーくんが作った曲が最後に演奏されたことで、バンドの新しい一歩を示すこともできて。もし予定通りにツアーが終わってたら、こういう流れにならなかったことを考えると、そこも音楽の女神が味方したところもあったんだろうね。
「そうですね、うん」
あと「情熱の炎が途切れることがなければ、バンドは一生続く。覚悟があればどんな状況でも続けていられる」と同じくMCで話していたけれども、その思いは、バンドを始めた頃から持っていたものなのか。それともバンドを続けていくなかで実感したものなのだろうか。
「自分は一生これで生きていくんだなっていうのがわかった瞬間が中学生の頃にあって。一生音楽で、バンドで生きていくと決めてからは、その気持ちがずっと変わらずにあるんですけど、そこだけしか信じられるものがないんですよね。それに、これだけいろいろ経験したら、しんどいし、ラクになるために辞めたっていいと思うんですよ。でも自分の中に、一生これで生きていくっていう意思だったり、情熱の炎がまだある以上は、やり遂げないと自分の人生に失礼だと思うんです。せっかくこんなに女神が守ってくれてるのに、それに応えなければ、自分は何のために音楽に選ばれたんだ、って思うというか」
自分の音楽に対する思いは揺るぎないものだし、それをちゃんと信じていれば、この先も大丈夫だって改めて思ったところもありますか。
「うん。マーシーはもちろん、新たな仲間たちと一緒にバンドがやれていて、それぞれが持ち寄った炎のおかげで、今、僕自身の炎も大きくなっているから、それさえ信じてれば大丈夫だなって。それになんて言うんですかね。自分の中に燃えるものがある限り、バンドだけじゃなく、何事だってやり続けられると思っているというか。だから、こないだのツアーファイナルで続けようと思えばずっと続けられるんだよっていうのを伝えようと思ったし、それをこの先、体現したいなって」
自分が体現していくことで、何があっても、物事を続けることはできるということを伝えたい。そういう気持ちが今の鮪くんにはある。
「まあ、僕はなんも悪くないですけど、いろんな痛い目を見たKANA-BOONが、ここから頑張って、這い上がっていけたら、きっと誰かの希望になると思うんですよ。この往生際の悪さをカッコいいなって思ってくれる人もおるやろうし(笑)。そういう存在としてちょっと頑張りたいですね」

期せずしていろんなことがあって、いよいよ生き様をみせていくロックバンドになってきたんだな、というのも、ファイナルのライヴを観て感じたところではあって。デビュー当時の瑞々しい野心を支えていた情熱は今も変わらぬまま、しっかりと生き様を見せていくロックバンドにKANA-BOONはなってきてるんだなって。
「うん、そう言ってもらえてうれしいですね。バンドの生き様がちゃんと見えてくるっていうのは、自分のやりたいことでもあるんで。しかもそれって時代にちゃんと抗ってるというか、闘ってると思うんです。今、顔出しをしないとか、そういうのもエンタメのひとつの流れとしてあるじゃないですか」
いい言い方をすれば、プロジェクト化が進んでるというか。
「もちろん、そういう音楽の魅力もあるけど、その音楽をやってるのはどんなヤツか、っていうのが見える。それがロックバンドだと思うし、今の時代背景に対して、自分たちはロックバンドとしての戦い方をやろうとしてるって実感はありますね」
そのうえで、2025年をどんな1年にしたいですか?
「ここから逆襲していきたいなって思います。時間はかかりますけど、着々と準備はできているし、汚名返上というか、かつての仲間の蒔いた種ではあるけど、ボコボコになってしまったKANA-BOONの名前が、みんなにとってまた誇らしいものになるようにしたい。あとはやっぱりシンプルに自分たちの作った音楽をもっと聴いてほしいし、今のライヴを観てほしい。そのためにも、より結束力強く、バンドだけじゃなくチーム全体として進んでいけたらなと思いますね」