【LIVE REPORT】
〈UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2025 「Charisma & Princess」〉
2025.03.05 at Zepp Haneda
昨年7月24日に結成20周年を迎えたUNISON SQUARE GARDEN。アニバーサリーを掲げて活動した2024年は、スペシャルなライヴやリリースを通じて、ファンと「おめでとう」と言い合う1年に。なかでも結成記念日である7月24日の日本武道館公演に対するメンバーの想いは強く、同公演を成功させ、バンド人生の目的を一つ達成できたことはとても大きな出来事だった。
そして2024年が終わってわずか10日後に始まったのが、シングル「傍若のカリスマ」を引っさげた今回のツアーだ。あんなに忙しかったんだから、もう少し休んだらいいのに……と思うが、ロックバンドの本分はやはりこれだという彼らなりの意思表明だろう。また、15周年の時もそうだったように、お祝いムードで1年を過ごしたあとは、すみやかに通常営業へ切り替え、揺り戻しをかけがちなのがこのバンド。昨年秋のベストアルバムツアーはシングル曲中心だったのに対し、今回のツアーでは、知る人ぞ知る名曲も多く披露された。

ニューシングルのツアーだからセットリストの自由度は高そうだという期待はあったが、それでもオープニングは予想外だった。ステージに現れたメンバーが始めたセッションは、「サンタが街にやってくる」のメロディ。そのまま始まった1曲目は「サンタクロースは渋滞中」だ。年が明けてクリスマスもとっくに過ぎたあとのツアーで、クリスマスソングをかますという大胆な選曲。照明も赤と緑のクリスマスカラーだ。
続く「オトノバ中間試験」もいい感じ。緩急があるテンポの曲だが、3人の息はぴったりで、破綻の恐れを一切感じさせないアンサンブルに安心感さえ覚えた。人生という航海の最中には、荒波に行く手を阻まれたり、霧で行き先が見えなくなったりすることもある。同じようにバンドも簡単に続けられるものではないが、今のユニゾンは凪で視界良好なのだと、3人の鳴らす音や佇まいから知った。よくぞここまでやってきた、と喜び合った20周年を経て、バンドの状態はますますよくなっているようだ。さらに、斎藤宏介(ヴォーカル&ギター)がライヴ冒頭に言及しながら「突拍子のないことを楽しんでくれるのがUNISON SQUARE GARDENのファンだと全国で感じてきました」と語ったように、彼らはファンをバンドの理解者として見ている。このバンド特有の尖りや癖を面白がってくれる人たちに対する信頼は、20周年を経て、より確かなものになったようだ。

思えば、彼らがライヴのMCでファンの存在に言及することは、周年以外ではあまりなかった気がする。いや、そもそも〈ファン〉という単語すら発していなかったかもしれない。ツアーが終わったかと思えば次のツアーに出発し、全国各地に音楽を届けに行く活動スタイルも、MCを極限まで削ったストイックなライヴも、〈まずは自分たちのためにカッコいいロックバンドでありたい〉〈それによって、喜んでくれる人たちを大切にすることもできる〉という気持ちが根っこにあり、彼らがどこかでファンを思っていることは理解していた。しかし「ファンがいるから、自分たちはこんな冒険もできる」といったことを明言されたのは今回が初めてではないだろうか。みんなと20周年を祝えたことは、彼らにとってよっぽど大きな出来事だったのだろう。
2015年の武道館公演以来封印されていた「3 minutes replay」が久々に演奏されたのも、バンドの中で何かが変わったことの表れだったように思う。ユニゾンのライヴのセットリストを考えている田淵智也(ベース)は、昨年7月24日の武道館で「世界は変わらなかった」「誰にも気づかれないように後ろを向いたら、君がいた」「君がずっと後ろから見てくれていた」と語った。そして今回演奏された「3 minutes replay」には〈世界が変わる夢を見た〉〈中心は僕で、そして君〉というフレーズ。選曲の背景は本人にしかわからないが、きっとファンへの信頼があったはずだと想像したくなった。

ライヴの終盤、19曲目に披露されたのは「君の瞳に恋してない」。ステージを駆け回りながらはしゃぐ田淵を斎藤が走って追うというじゃれ合いもありつつ、明るくポップなこの曲で大団円と思いきや、3人はフロアからの拍手をたっぷりと浴びたあと、「カオスが極まる」の爆裂サウンドを轟かせた。ライヴのエンディングにして、突拍子もない展開再び。しかしオーディエンスは呆気にとられるどころか、この3人だからこそできる妙技にむしろ興奮していた。アンコールの「シュガーソングとビターステップ」では、鈴木貴雄(ドラム)がタオルを巻いた目隠し状態で最初から最後まで演奏。そのアクロバティックなプレイを笑いながら間近で見ていた斎藤が、ギターリフを1オクターブ上げて弾くと、観客がすかさず反応して歓声を送る。そんな温かい場面の多いライヴであった。
20周年のロゴがデザインされた鈴木の衣装に、手書きで「+1」と足されているのを見て思う。確かに、20周年の温かいムードが引き継がれたツアーだったなと。彼らは、理想のロックバンド像を実践するために、ずいぶん多くのことを自分たちに課してきた。しかし20周年を無事に、最高の形で迎えられた実感から、背負っていた荷物を一つ下ろして、より自由にバンドを楽しめるようになったのだろう。

一方、彼らがファンに囲まれながら過ごした2024年にも、2025年になってからも、解散や活動休止を選択したバンドはたくさんいた。なかにはユニゾンが対バンしたことのあるバンドや、敬愛する先輩も。ライヴ中盤のバラードゾーンで思い浮かんだのはそういった存在や、今日みたいな時間がずっと続いたらいいと願っても、そうはいかない現実だ。とくにこの日の「harmonized finale」が脳裏に焼き付いている。〈今日が今日で続いていきますように〉というフレーズに心を込めて唄う斎藤、穏やかな表情でコーラスする田淵、力強いスネアの連打で言葉を押し上げる鈴木。プレイこそ三者三様だが、バンドが続くことの有り難さを誰よりも実感しているであろう彼らの感情が、確かに音になっていた。
そして同じ船に乗るメンバーの結束をもっとも強く感じたのが、今回のツアーの目玉でもある「傍若のカリスマ」だ。田淵、斎藤、鈴木が順にソロを披露するシーンを経て、燃えるようなバンドサウンドを放ち、斎藤が〈どこまでものめり込め お前が挑んだゲームだ〉という歌詞を、まるで自分たちに突きつけるように唄う。バンドは人と人との間に成り立つものだから、変化がつきものだ。歳を重ねれば、一人ひとりの考え方も人生も変わる。すると、3人のバランスも変わる。それはつまり、凪の海はいつまでも続かないということ。だけど3人は、多少の時化くらいは楽しんじゃう気持ちで、心折れそうな時はファンの存在を感じながら、バンドという航海を続けていくんじゃないかとライヴを観て思った。25周年も、30周年も、50周年も、まだまだ見たい。軽やかな覚悟を携えたUNISON SQUARE GARDENから、今後どんな音楽が生まれるのか楽しみだ。
文=蜂須賀ちなみ
写真=Viola Kam (V'z Twinkle)

【SET LIST】
- サンタクロースは渋滞中
- オトノバ中間試験
- 天国と地獄
- kaleido proud fiesta
- 3 minutes replay
- kid, I like quartet
- アトラクションがはじまる(they call it “NO.6”)
- Silent Libre Mirage
- 世界はファンシー
- like coffeeのおまじない
- City peel
- 憂鬱はプリンセス
- WINDOW開ける
- harmonized finale
- 傍若のカリスマ
- Simple Simple Anecdote
- シャンデリア・ワルツ
- 放課後マリアージュ
- 君の瞳に恋してない
- カオスが極まる
ENCORE
- シュガーソングとビターステップ