これまでのバンド人生を振り返ってみて、後悔がひとつもないのは、つねに自信と責任を持って決断してきたから
バンド活動を軸にしつつ、さまざまな場所で受ける刺激的な経験がいい連鎖反応を引き起こし、それが新たな表現へとつながっていく──さまざまな音楽活動のサイクルの中にあって、ピュアな情熱を持ちながら音楽を作り続ける現在の滝の姿は、そのすべてのプロジェクトを自然体で楽しんでいるように見える。
「私がいろんなことを自由にやらせてもらえているのは、9mmのメンバーからの理解があってこそなので、本当に感謝しているし、とても幸せなことだと思っています。みんなからは〈いろんなことに本気で打ち込んでいるのが滝の本質的な姿なんだろうね〉って感じで、私のやっていることを信じてもらえたんですよ。なので、好きなことを自由にやらせてもらっている私は、いろんなところで得た経験を9mmに返していかないといけない。そういうところも含めて、すべてのプロジェクトをストイックに頑張っていこうと思っていますね。とくに今年は新作アルバムをリリースしたので、ライヴで初演となる曲がすごく多いんですよ。初演の時は独特の緊張感があるし、まだ身体に曲が入り切っていないところもあって。だからステージに立つと、ものすごく自分の魂が削り取られるんです。ツアーの初日は、いつも本当に怖いんですよ。でも、初めて演奏する時のドキドキ感は昔も今も変わらないですし、あの気持ちが高揚する感覚は初演でしか味わえませんからね。そこもバンドの楽しさだと思っています。そういうところも含めて、僕が音楽活動をやり続けてきた中で軸になっているところはブレていないと思いました。というのも、これまでのバンド人生を振り返ってみて、〈ああすれば良かったな〉っていう後悔がひとつもないんですよ。なぜそんなことが言えるのかというと、ちゃんと自信と責任を持って決断してきたからだと思います。そうやって自分の好きなことを20年間続けてこれたのは大きな自信にもなっていますね」
結成から20年に及ぶ活動の積み重ねによって得た手応えを口にするのと同時に、滝は「良くも悪くも音楽以外の可能性に関して、〈切り捨てながら〉生きてきたということにも気付かされました」とも語ってくれた。柔軟な感性を持ちながら新たな表現を生み出すアーティストとしての一面だけでなく、理想をとことん突き詰めていく彼のストイックな職人的こだわりを垣間見ることができる言葉だと言えるだろう。
「普通だったら、もっといろんな未来が広がっていたと思うんですよ。例えば……私の場合、料理をするのが好きなので、それを仕事にすることもできたかもしれない。ただ私は──さっき話したこのスタジオの機能もそうですけど──〈音楽以外には何もいらない〉と、他の選択肢を最初から候補に入れて生きてきませんでした。だからこそ迷うことなくやってこれたし、筋の通った活動を続けてこれたんだと思います。たとえ何かに迷ったとしても、結局のところ音楽を選ぶことはわかりきっていることですからね(笑)。なので音楽とは関係ないところで、迷ったり、悩んだりしている時間はもったいないと思うんです。というのも何事も〈やり続ける〉ことが一番難しいと思いますから。9mmに関しては、この20年の中でいろんなことが起こりましたけど、バンドとしての活動休止や解散の危機というのはとくになくて。先ほども話しましたが、2016年に私が腕の不調でライヴ活動を休みたいとメンバーに伝えた時も、卓郎が『いや、俺たちはやり続けるよ!』と言ってくれました。〈ずっとバンドが動いていれば、復帰したいと思ったらすぐに合流できるだろうから〉って。実際にその言葉のとおりでしたね。復帰する時に以前と変わらぬ状態でバンドが待っていてくれたのは、本当にうれしかったです」
滝との対話の中で強く感じたことは、究極なまでに研ぎ澄まされた〈揺るぎない信念〉だった。彼を突き動かしている〈自分の人生に音楽以外は必要ない〉というシンプルな行動理念は、とても気高くて美しいとさえ感じる。今後も9mmと滝は、日本の音楽シーンの中で特異な魅力を放つ存在で在り続けることだろう。そしてこれから先の未来において、このスタジオから生まれた音楽が僕らの心を熱く燃やしてくれるに違いない。
「これからも変わることなくミュージシャンとしてやるべきことをやりながら、自分の信じる方向へ突き進んでいこうと思っています。そのために私がやるべきことは……練習、練習、筋トレ。これに尽きますね(笑)。とくに筋トレは重要です。人って筋肉がついてくると、自信が生まれてきますから。もし私が筋トレをしていなければ、今もまだ弱気なセリフしか言えなかったと思います。身体的な強さは、心の強さにも直結しますからね。なので、ちゃんと寝て、ご飯を食べて、たまにお酒を呑んで……心身ともに健全でいるということは、自分が好きなことをやり続ける上でとても大事なことですね。あと日々の練習もすごく大切です。私は若い頃から〈成長することをサボっている年上の人には余裕で勝つぞ!〉という勢いで活動し続けてきました。若い世代には音楽の世界で活躍したいって人も多いでしょうけど、そこは我々との真剣勝負ですからね。僕もそこに負けないように欠かさず練習に励みたいと思います」
文=尾藤雅哉_BITTERS,inc.
撮影=西槇太一
NEW ALBUM
『YOU NEED FREEDOM TO BE YOU』
2024.10.23 RELEASE
- Baby, Please Burn Out
- 叫び -The Freedom You Need-
- Mr. Foolの末路
- カタルシス -Album ver.-
- 幻の光
- Fuel On The Fire!!
- それは魔法
- Domino Domino
- 新月になれば
- 朝影 -The Future We Choose-
- Brand New Day -Album ver.-
BEST ALBUM
『THE ULTIMATE COLLECTION -20Years, 20Bullets-』
2024.07.31 RELEASE
- 太陽が欲しいだけ
- Black Market Blues
- The Revolutionary
- キャンドルの灯を
- Punishment
- Talking Machine
- Discommunication
- 光の雨が降る夜に
- 黒い森の旅人
- ハートに火をつけて
- ロング・グッドバイ
- Supernova
- 名もなきヒーロー
- Scenes
- スタンドバイミー
- ガラスの街のアリス
- 生命のワルツ
- Mr.Suicide
- Brand New Day
- One More Time
〈9mm Parabellum Bullet Tour 2024-2025
「YOU NEED FREEDOM TO BE YOU」〉
2025年
1/11(土)[東京] Spotify O-WEST
1/18(土)[広島] CLUB QUATTRO
1/19(日)[岡山] CRAZYMAMA KINGDOM
1/25(土)[水戸] LIGHT HOUSE
1/31(金)[渋谷] CLUB QUATTRO
2/1(土)[栃木] HEAVEN’S ROCK宇都宮 VJ-2
2/8(土)[福岡] DRUM LOGOS
2/9(日)[鹿児島] CAPARVO HALL
2/22(土)[東京] Zepp DiverCity(TOKYO)
3/1(土)[愛知] Zepp Nagoya
3/2(日)[大阪] Zepp Osaka Bayside
〈YOU NEED FREEDOM TO BE YOU」Extra〜カオスの百年vol.21〜〉
3/17(月)[神奈川] KT Zepp Yokohama