【LIVE REPORT】
SUPER EIGHT
〈超アリーナツアー2024 SUPER EIGHT〉
2024.10.10 at 横浜アリーナ ※一部ネタバレあり
デビュー20周年を迎えたSUPER EIGHTが、全国アリーナツアーを開催中だ。今年7月に14枚目のアルバム『SUPER EIGHT』をリリースした彼ら。〈1000年後の未来から来たSUPER HERO〉というアルバムおよびツアーのテーマに因んで、炎がバンバン上がりまくる特撮チックな演出や、派手な演出に負けないほど華やかな5人のパフォーマンスに、開演早々ワクワクとさせられた。この記事でレポートするのは、10月10日の横浜アリーナ公演。平日18時開演ということで、学校や仕事を早めに切り上げて向かった人も多かったと思うが、ポジティヴでエネルギッシュなSUPER EIGHTのエンターテインメントは、日常を燦燦と照らす太陽のようだ。この安心感を支えに生きているeighter(註:SUPER EIGHTファンの総称)が、全国各地で彼らのことを待っている。
セットリストはアルバム収録曲を中心に構成。バラエティ豊かな楽曲群に対し、SUPER EIGHTはバンドに歌にダンスにと、各曲に合ったスタイルでアプローチした。右手中指のケガのため一時活動休止していた安田章大は、ツアー序盤ではギターを弾かないスタイルで参加していたが、10月1日の福岡公演からはギターを弾けるようになり完全復帰。この日のライヴでも、同じくギタリストの横山裕と向き合って楽器を掻き鳴らすなど、元気な姿を見せてくれた。アルバム『SUPER EIGHT』で鳴っている楽器の音はメンバーの演奏によるものではない。スケジュールの都合上、楽器のレコーディングは断念せざるを得なかったそうだが、今回のツアーでは「音楽が聴こえている」や「群青の風」などのアルバム曲を自分たちの手で鳴らした。ツアースタートまでの間も5人は多忙だったはずだが、それでもやりたいと、照準を合わせて練習を重ねたのだろう。
丸山隆平のベースフレーズをきっかけにアウトロを延長した「“超”勝手に仕上がれ」で、5人がすべてを出しきるような演奏をすれば、観客がその熱演を讃えるように拍手や歓声を送る。客席から起こった手拍子のリズムに、5人の鳴らす音が合流して始まった「音楽が聴こえている」では、安田が〈そうさ 未来はeighterとEIGHTのものだ〉と歌詞を変えて唄い、「頼むぞ、大倉!」と託された大倉忠義がキレのいいドラムで締める。5人とeighterの想いのリレー。熱い場面が続くなか、歌詞の言葉一つひとつが流れることなく、心にグッと入ってきた。ヴォーカルに意識を集中させたレコーディングの成果だろう。
5人の歌を聴きながら改めて思う。『SUPER EIGHT』は未来や夢について唄ったアルバムだ。それも、〈星空を駆け巡り一緒に夢を見よう〉(「未完成」)〈ふるえるような憧れ 抱いて走り続ける たとえ明日が遠く見えなくても〉(「群青の風」)などポジティヴなニュアンスで。デビュー当時を振り返るMCでの「最初はCD手売りで売ってたもんね」「あの頃は、なんかわからんけど三味線弾いてた」「漫才やコントもやった」「(メンバーが)約半分になるとは思ってなかったよね」というやりとりからは、この20年、本当にいろいろなことがあったんだなと伝わってきた。未来は不確か。人生何があるかはわからない。20年グループを続けるのは難しい。5人は誰よりも強くそう実感したはずだ。
それなのに、なぜ前を向いていられるのか。きっと、〈一人ではない〉という気持ちがあるからだ。村上信五が「いろいろ耐え忍んで、ついてきてくれて、本当にありがとうございます。……アカン、グッときてまう」と感謝を伝えたように、安田が「育ててくれてありがとう。あなた方一人ひとりはSUPER EIGHTの一員」と表現したように、SUPER EIGHTという夢は5人だけでは描けなかったもの。一人では持ち続けるのが難しい希望も、5人でいれば手離さずにいられた。5人だけでは挫けそうになった時も、eighterからの声援を活力に変えて走った。今は違う道を歩む仲間の想いも、ずっと心にあった。そういう積み重ね、想いの収束が大きな光となり、グループの進む道も、オーディエンスの日常も照らしている。それが彼らがライヴで見せてくれる、ちょっとやそっとじゃ消えない光の正体ではないだろうか。
「一緒に迷って、また進んで、迷って進んで、迷って進んで……それでよしや」
5人で唄い繋ぐ「Eighdays」の前向きな響きに包まれながら、安田はそう言った。観客に伝えながら、自分にも言い聞かせているような口調。彼らは無敵のヒーローではないし、暗闇を切り裂く最強の武器も持っていない。しかし、だからこそ、人々の心を照らすエンターテインメントを作れるのだろう。未来が見えないのもまた一興。むしろワクワクするじゃん?と笑えるしなやかな強さを、SUPER EIGHTとそのファンは手に入れた。この絆は祝福されるべきもの。年末から始まるドームツアーも、笑顔溢れる時間になるだろう。
文=蜂須賀ちなみ
撮影=小林龍之介