2024年に結成20周年のアニバーサリーイヤーを迎えた9mm Parabellum Bullet。彼らの記念すべき節目にあたり、〈9mm Parabellum Bullet 20th × 音楽と人〉と題し、これまでに発表されたアルバムに関する記事を順次公開していきます。毎月1作ずつ、9ヵ月に渡る特別企画。先月公開したファーストフルアルバム『Termination』に続いて、今回は2作目となる『VAMPIRE』のインタビューを公開。
(これは『音楽と人』2008年11月号に掲載された記事です)
9mm Parabellum Bulletのセカンドアルバム『VAMPIRE』が10月15日にリリースされる。前作『Termination』を遥かに凌ぐポップ感とスケール感とバラエティ感、風通しの良さとシリアスさを兼ね備えた傑作だ。バカがバンドをバカみたいにエンジョイしている。いっぽう、バカじゃバンドやれねえ、暗いと言われようともひたすら考え込んでこそ俺たちだという思いに満ちている。それが4人でそれが9mmである。そして両者が見事なタッグを組み、曲を生み出し、新たなチャレンジが生まれていくのだ。彼らがそのバランス感をとても大事にしてこのアルバムに取り組んでいること、この楽しくも生真面目なインタビューからも伝わってくるはずだ。
夏フェスお疲れ様でした。
全員「お疲れ様でしたー」
フェス9公演。疲れたでしょ。
菅原(ヴォーカル&ギター)「(笑)疲れました」
はははは。夏、ここまで本格的にフェスの演出に取り組んだのは初めてなわけで、得たものも大きいだろうなと。
菅原「そうですね。大きいとこでやっても小さいとこでやっても、気持ちは全然変わんなくなってきてるなっていうところが確認できましたね。9月になってすぐラママでやったんですけど、そこのライヴハウスな感じが楽しくて『やっぱこれだな』って思ったり、でもフェスの大きいステージでも楽しかったり」
ですね。今年の荒吐で観た時との野外でのたたずまいとは違うなと思いましたもの。
菅原「おお」
滝(ギター)「お、違いましたか」
かみじょう(ドラム)「うん、前に比べれば、ずっと自信満々でできるようになってきたと思います」
中村(ベース)「ライヴをやってる時がバンドをやってて一番楽しい瞬間なんで、ライヴ1つ1つが大きくて、全国いろんなところでお客さんもすごい盛り上がってくれたっていうのは、本当に楽しかったし、充実した期間だったなって思いますね」
滝さんはどうですか?
滝「体力的につらい時期もあって、やってる時具体的に考えられなかったんですけど、すさまじい人の前でやれたっていうのはまず大きいですよね。だけど大きなバンドを見て『自分たち、やっぱりまだまだだなあ』とも思いましたね」
でもさ、バンドってそうやって何かを超えていくもんなんだなと思った。フェスもそうだけど、ツアーって楽しいけど絶対エグいでしょ。
滝「エグいですね。ヤバいですね、ツアーは」
フェスもそうだけど、ツアーって実はすごく単調で、すごい疲弊するわけですよね。
菅原「そうですね。ライヴやって、移動しての繰り返しだから」
何があなたがたを駆り立ててるの?
滝「うーん、駆り立てていくっていうよりは、『ライヴいっぱいあって楽しいな~』ぐらいのものでしかないんですよ、うん。それを続けることによって体力ついてくるんだろうなっていう自覚もなんとなくあるし、今頑張っとけば、あとで何か身になるものがあるだろう、ってくらいの感じですよね」
シンプルにね。そうありたいですねぇ。
滝「『そうありたいですね』って(笑)。これ、そうあるっていう話だと思うんですけど」
ごめん、これ俺の話。フェスの増刊で8フェス行って、さすがに疲れた。
全員「あはははは!」
もうヘトヘトになっちゃったもんでさ。
菅原「ははは。でも俺らもちゃんとヘトヘトでしたよ(笑)。疲れましたから」
滝「うん、ちゃんと疲れましたよ(笑)」
かみじょう「でも、ベーリング海にカニ獲りに行く人とか、もっと凄い人もいるからね」
ははは、そうですね。
菅原「そうだね。ヘトヘト度で言ったらね」
で、セカンドアルバムなんですけど、評判も上々でしょう?
菅原「そうですね。ありがたいことですよ」
いいもん作れたし。それはかなり強く思えてるでしょう。
滝「はい。かなり思ってます。結構満足してますね。だから評判のよさを聞いても、素直に受け止められてる感じしますね」
菅原「うん、ヘンに謙遜とかしないっていうか」
ファーストの時は褒められると――。
菅原「ストップかけてましたよね」
うん、照れながら後ずさりして去っていくエビ4匹、みたいな感じだった。
全員「(笑)」
滝「(笑)『いやいやいやいや』みたいな」
もう、それとは違う感じですよね。
菅原「うん、堂々としてる」
今回のアルバムはそういうアルバムだと思いますね。皆さんの言葉を借りればファーストフルアルバム同様「激アツ」なんですけど――。
全員「ふふふふふ」
でも、肩の力抜けていて、風通しのいいところ、あるじゃない?
滝「そうですねえ」
だから、この新作を踏まえてファーストフルアルバムを聴くとさ、なんか額に青筋がビシーッ、みたいな感じのアルバムですもんね。
全員「(笑)」
まあ、あれはそこがよかったですけども、じゃあ、なぜ今回はこういうアルバムになったんだと思います?
菅原「まあ、やっぱりその反動だったんだと思います。ファースト、結果的にそういうテンションのいいアルバムになったんですけど、そこに至るまでの作業の過程もギューってなってて、ツラかったんですよね。今回はそれをもう繰り返さないというのが全員の共通認識としてあって。今回は楽しんで作ろう、と」
前にインタビューで合宿して曲いっぱいできたっておっしゃってたんですけど、それがこのアルバムを形づくってるって考えていいんでしょうか?
滝「実際に曲はそんなに入っているわけじゃないですけど、ヘンなテンションの高さと風通しのよさっていうのを作ったのは合宿ですね。それは間違いないですね」
あらためて聞きたいんですけど、どんな雰囲気の合宿だったんですか?
滝「合宿は楽器をセッティングして、音が出るようになったらとりあえず呑み始めて」
菅原「まず」
はははは。
滝「冷蔵庫にビールとかいっぱい詰め込んでたものをみんなで呑んで、呑んで――」
菅原「呑んで」
で?
中村「呑んで(笑)」
滝「パソコン開いて――」
3人「呑んで(笑)」
滝「みんなでいろんな動画見ながらワイワイ呑んでました(笑)」
「このPVちょっとアツいから見てくれよみんな!」みたいな感じだ。それはただの部屋呑みじゃないか!
中村「部屋呑みっすよ(笑)」
菅原「その合間に曲作ってたに近い(笑)」
滝「いろいろPV見ましたよ。昭和歌謡の映像とかも見たりして、『昭和か!』みたいな(笑)。ヘンなコード進行とか、ヘンな雰囲気とか、いろいろヒントになりましたよ」
菅原「そうそう、曲調よりダンスに気を取られたりとか。『このテンション!』(笑)」
中村「『この顔!』(笑)」
滝「『この衣装!』(笑)」
はははは。ま、9mm的に有用ないくつもの気づきをもたらしたってことで。
全員「はははは」
じゃあ、このアルバムへ至る道、まず入り方が非常にリラックスしたものだったんですね。
滝「ですね。その勢いでパッと思いついたものを練習して、録って、また思いついたものを録って。それはだいたい夕方くらいまでに終わって。あとはみんなで呑んでましたね」
前とはまったく違ったんですねえ。
滝「ファーストの頃はすっごい緊張してたんですよ。『どうにかしなきゃ、いいもの作らなきゃ!』って、すごい気負いだったんですけど、アタマすっからかんだったんですよ」
中村「うん、何も考えてなかった」
滝「肩にばっか力入って、そのおかげで結果ああいうブチ切れな感じになったわけですけど(笑)。でもああいうのはツラくてもうヤだから、合宿は予定立てて入って、楽しいものにするために、その前から綿密に準備してたんですよ。自分らからガンガン動いて曲をあげていって、みたいな。もうその時点でアタマ超働いてるんですよね。で、アタマ回るしすべて風通しはいいしで、だからやっぱり全然違うものになった。それはもう成長だと思いますね」
それ、バンドやんの楽しいじゃないですか。
全員「あはははは」
菅原「(笑)そっすね」
いいことずくめみたいだったですけど、ツライ局面はなかったんですか?
菅原「ああ、唯一歌詞だけありました。僕、途中で視野が狭くなりすぎてしまい、僕んとこで風通し悪くなっちゃいました。で、行き詰まっちゃって、歌詞のクレジットで共作になっているものは、その時2人で歌詞1つずつ書いてきて、それをみんなで見て、ああだこうだ作業していったんです」
そうだったんですね。
菅原「ギリギリのところで生まれたものではあったんですけど、そういう新しい作業が生まれた形にはなったんです。メンバーそれぞれ課題はあると思うんですけど、そのへんは僕の課題のひとつになりましたね。歌詞もオープンにできるじゃん、っていう」
閉じちゃった。
菅原「はい。僕は最終行き詰まって、閉じちゃいました」