人気漫画『赤羽骨子のボディガード』がラウール主演で実写映画化。本作は、金髪のヤンキー高校生・威吹荒邦が、100億円の懸賞金がかけられた幼なじみの赤羽骨子を守るためにボディガードとなり、“3年4組のクラスメイト全員で赤羽骨子をバレずに守れ”という極秘ミッションに奮闘する物語。石川淳一監督に、見どころやキャストの魅力、撮影裏話を教えていただきました。
(これはQLAP!2024年8月号に掲載された記事です)
本作は、究極の“守られ系”学園アクションエンターテイメント。まず、原作漫画の魅力や実写映画化する上で大事にしたことを教えてください。
監督の話をいただき原作漫画を読んだときは、まだ2巻までしか単行本が発売していなかったのですが、いろんなキャラクターが登場するし、新しい学園ラブコメで、エンタメとして非常におもしろい映画になるのではないかと感じました。ただ、連載中の作品であるため、企画が進行中もどんどん原作で新事実が発覚したりもするんですよね。そこは整合性をとるために原作の続巻を確認しながら台本を整理して、原作の世界観や良さを損ねないように調整していきました。
映画化するにあたって僕が大事に描きたかったのは、大好きな骨子を必死で守る荒邦と、守られていることを知らない骨子の純粋な関係性。 それから、3年4組の絆や青春です。一度作品を見ただけだと、ストーリーとラウールさんを追うことだけに集中して見終わってしまうかもしれない。でも、それだけだともったいないくらいに、登場人物たちがいろんなことをやっていて、それぞれにドラマがあります。注目ポイントを変えながら見返しても楽しめる作品になっているので、ぜひ繰り返し見ていただけたらうれしいです。
主人公の威吹荒邦を演じるラウールくんの役者としての魅力とは? また、一緒に仕事をしてみてどんな印象を持ちましたか?
ラウールさんは、以前に映画『ハニーレモンソーダ』で爽やかなラブストーリーの主人公を演じていたのを見ていて。今作の荒邦は荒っぽいヤンキーで全くタイプが違うので、どう演じてくれるんだろうと初めは想像がつかない部分もあったんです。でも、撮影前の台本の読み合わせのときに、彼は本気で荒邦を演じてくれて。本読みって朗読だし、ほかのキャストの芝居を見ながら探り探りやられる方も多いので、なかなか本気の芝居は見れないものなんです。でも、ラウールさんはしっかり自分の中で荒邦を作っていて、その場で僕に提示してくれたんですよね。「ここまでテンション高く演じてくれるんだ」と驚いたし、僕の中での荒邦像とも近いものがあったので、そこからは信頼して撮影に入ることができました。
ラウールさん自身は荒邦とタイプは違うけど、彼は荒邦みたいな破天荒で熱い役が好きなんじゃないかなと。撮影でもこちらのリクエストに対して、すぐに意図を理解して真っすぐに骨子を守る荒邦を体現してくれました。抜群な存在感があり、才能もあり、努力もする。場数を踏んでいったら本当におもしろい役者になるだろうと思いましたね。
3年4組のクラスメイトには、赤羽骨子役の出口夏希さん、クラス最強の司令塔・染島澄彦役の奥平大兼くん、骨子の親友で空手の達人・棘屋 寧役の高橋ひかるさんなど若手キャストが集結。それぞれ役者としての魅力とはどんなところでしょう?
ヒロインの骨子を演じる出口さんは、現場のムードメーカー的存在。出口さんの天真らんまんな雰囲気が、何も知らずに楽しく過ごしている骨子と重なる部分がある。フレッシュな天然さもあり、この時期に一緒に仕事ができて良かったと思っています。澄彦を演じる奥平さんは、文学的な作品にも数多く出演している方。どれだけ原作に寄せたらいいのか深く考えながら演じてくれていて。彼自身の持つ雰囲気とも相まって、荒邦と正反対のクールな人物像をうまく表現してくれました。
空手家の寧を演じる高橋さんは、本当にプロフェッショナル。寧はアクションでもダンスでも見せ場があるのですが、 全体練習の前にきっちり仕上げてきて、真摯な役作りに非常に感心させられました。ほかにも3年4組のメンバーは、俳優や声優、芸人など幅広いジャンルの方々に演じていただきました。個性的なボディガードたちが集結しているので、一人ひとりに注目してみてください。
映画ならではのオリジナル要素や設定もありますが、特に見どころとなるシーンはどこでしょう? また、そのシーンを取り入れた理由とは?
ダンス部に所属する骨子と寧が大会で優勝を目指すというシーンが描かれているのですが、それは原作にはない映画のオリジナルになります。 約2時間の映画の中で山場となるシーンを考えたときに、原作では文化祭で骨子を守るシーンがあるので、映画でも同じように3年4組が一丸となる場面を見せられたらなと。ダンス大会となればダンスも見せられるし、“骨子が最後まで踊り切れるのか”という緊張感もあり、エンタメとしてもおもしろいシーンになるのではと考え、取り入れました。
実際に編集をしてみると、骨子と寧が楽しんで踊る姿と、3年4組の生徒たちが骨子にバレずに守り抜こうと戦うシーンが同時に進んでいて、守るためのアクションも見ていて気持ちが良い。3年4組の熱い絆を感じられる、注目シーンになりました。ラウールさんは、撮影前からアクション練習を重ねてくれて。手足が長いので迫力もあるし、魅せ方もキレイで、とにかくカッコいいアクションシーンに仕上がっています。
コメディー作品としての注目ポイントも教えていただけますか?
バレないように骨子を守る荒邦のコミカルな言動、それから3年4組のクラスメイトや土屋太鳳さん演じる骨子の姉・正親との掛け合いも見どころ。実は、特にコメディーの中心にいるのが正親なんです。骨子と同じく、国家安全保障庁長官である尽宮正人(遠藤憲一)の娘として生まれましたが、男として育てられ、幼い頃から訓練をさせられ、父の愛情を受けられなかったが故に骨子を憎んでいるという複雑な人物。
そんな正親と骨子をめぐり対峙する荒邦の掛け合いが本当におもしろくて、荒邦と出会ってどんどん変化していく正親の姿も、2時間の映画の中で収めるのがもったいないぐらいの魅力がある。土屋さんが今まであまりやってきてないような役柄かと思いますが、原作ファンの方にもおもしろいと思ってもらえる正親像になっていると思います。
また、ラウールさんもコメディーセンスが抜群で、芝居も表情もとても良くて驚きましたね。2人の新たな一面が感じられる芝居合戦をぜひ楽しんでいただきたいです。
座長としてのラウールさんの印象や撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?
本作のキャスト陣の中では主演のラウールさんが一番年下で。普段はアイドル活動をされているので、ほかのメインキャストの方々より芝居経験も少ないはずなんですが、そんなことを全く感じさせることもなく、座長として堂々と芝居をされていました。荒邦は特にセリフも多いし、話す口調も荒くて強い役柄なので、実直に荒邦の芝居をすることで現場を引っ張ってくれているんだなと感じましたね。
声掛けをしてぐいぐい周りを引っ張っていくタイプではないですが、みんなとコミュニケーションはちゃんと取っていたし、何よりも存在感がある。現場の雰囲気はとても和やかで、特にラウールさんと奥平さんは同じ年齢で共演シーンも多かったので、楽しそうに交流している雰囲気が伝わってきました。
※高橋ひかるの「高」は、正しくは「はしごだか」が正式表記です
文=室井瞳子
石川淳一監督
いしかわ・じゅんいち/1971年12月31日生まれ、山梨県出身。2015年に映画監督デビューし、現在は多数のドラマ、映画の演出を手掛ける。近年の作品は、映画『変な家』、ドラマ『テッパチ!』など。
映画『赤羽骨子のボディガード』
(松竹配給/8月2日より全国ロードショー)
監督:石川淳一
出演:ラウール、出口夏希、奥平大兼、高橋ひかる ほか
(C) 丹月正光/講談社
(C) 2024 映画「赤羽骨子のボディガード」製作委員会