10年前の自分が、今の自分を見たら、カッコいいって思うんじゃないですか。たぶん歳取ったほうがカッコいいはずなんで、俺たち
逆のコンプレックスってありません? ハングリーさがないことに対する劣等感。
「あぁ、俺にはできないなって思うだけかな、そういうのは。もちろんロックの解釈って何通りもあるんだけど、基本的に自分のサイズで生きていくのがロックだと思ってて。自分は全然苦労しなかったです、って言うのが俺のロックだと思ってる」
それを堂々と言えるのって素敵ですよ。みんな、何かと苦労話をしたがる中で。
「そうですよね。なんでか悲しいエピソードとか挟みたがる人多いですよね(笑)」
28歳になるまで、バンド始める前までの期間も、ただゆったり構えてました?
「んー、バンド始める直前はちょっとヤバいなと思ってましたね。高校出て大学中退して、そこから10年近くフリーターやってる人間だったから。周りの友達が就職したり結婚したりする中、俺は〈なんか起きないかなぁ?〉と思いながらフリーターやってる。もちろん何も起きないんだけど(笑)。で、30手前になって〈あれ? もしかしてこれ詰んでないか?〉と」
それでも、別に焦ってないんでしょ?
「うん。〈焦ったところでなぁ。べつに生活に困ってないしなぁ〉くらいの感じ。はははははは!」
そこからバンドが始まって、価値観や人生観は激変したと思います? それとも昔のまま来てる?
「あ、でもやっぱバンドの世界が合ってたんだと思う。中学卒業以降の友達って俺ひとりも肌に合わなかったから。それがこんなにすんなり友達できて、こんな毎日遊べるものなんだってびっくりした。だから俺の価値観がそもそもここに合ってた。好きなことやって楽しく生きる、みたいなものが最上にある人間なんだっていうのが確認できたんだと思う」
今、4人の関係性は良好ですか。
「うん。良好。自主でやりはじめてさらに良くなったと思いますね」
蒸し返すようだけど、事務所から独立する時、一番反対して、消極的だったのがケンジくんらしいですね。
「あ、そうですね。いまだに半々なところはありますよ。前の事務所とだって協力体制がしっかり取れる環境であれば、もっと面白いことができただろうなって思うこともあるし。ただ、精神衛生上、4人でやったほうが気持ちいいって思えるんだったら、そっちでいいんだろうなと思ってた。それでちゃんと一年半、自分たちでできてるから、結果的によかったですね」
思ったよりも全員がやれる子だった、みたいな感じ?
「そうっすね。もっと早めに、まぁ関係が壊れはしないまでも〈うわ、もう全部面倒くせぇよ!〉ってなるかと思ってたけど。いまだにそれがないんで。あ、そうそう。こないだHEY-SMITHと対バンした時に、サックスの満さんに言われたんですよ。『TENDOUJIって、ケンジくん以外みんな天然だよね』って。俺、あんまりメンバーのことそんなふうに捉えてなかったんだけど、言われてみたらめっちゃ腑に落ちた」
どういうこと?
「これは羨ましいなと思うところでもあるけど、例えば独立の話が出た時も、3人はいい想像のほうが強いんですよ。でも俺は、〈言ってることはわかるけど、こういうこと起こる可能性も考えとかなきゃマズいよ?〉って、まず悪い想像もするから。でもそれを毎回言うのも細かいヤツみたいで嫌だし。そういう感覚のズレがずっとあって。あぁ、そういうことかと思った」
たぶん本人たちは天然と思ってないと思うけど(笑)。
「うん。俺、自分のサイズを正確に測るのはネガティヴなことじゃないと思ってるし、今自分たちはこういう状況だよね、っていうのを冷静に見たいと思ってるんです。で、あいつらはつねに、俺が見てるよりもちょっとだけTENDOUJIを大きく見てる(笑)。でも、そういうふうに信じられるの、ちょっといいなと思う、俺は」
面白いし意外です。長いこと、天然系のケンジと根性論のナオっていう組み合わせなんだと思い込んでました。
「そうですね。たぶんね、TENDOUJIの見え方として、俺が一番自由なほうがわかりやすいんですよ」
それは確かに。
「でも俺がほんとにそうなって暴走しちゃうとワケわからなくなるな、っていうのはつねにあって。で、俺がこんなこと考えてるの、たぶん3人とも知らないと思う(笑)」
ただの陽キャじゃないことは、歌から伝わります。今回の「GREAT DAWN」は、とくにエモい名曲。
「あぁ。この曲に関しては、けっこう思いっきり込めた感じですね。そもそもこれ、2020年の3月とかにできてた曲で」
あ、そんなに前?
「うん。これからコロナがどうなるかわかんない、ライヴが次々止まり始めた、みたいなタイミング。こんな長引くとは想像もしてなかったし。〈今はライヴできないけど、まぁすぐよくなるよ〉くらいざっくりした感覚で作ってた。でも状況はどんどん悪化していくし、先も見えなくなって。これ今は違うな、ここで理想論言ってもしょうがねぇなと思って一回お蔵入りにしてた曲で。そっからずいぶん経って、去年11月にZepp Shinjukuでやった時かな。コロナ完全に終わったなっていう実感があって」
はい。以前の景色がばっちり戻ってきて。
「それで今回の『TENDOUJI』を作る時には、もともと書いてた時とはまたイメージが切り替わってた。世界のざっくりした〈みんな〉じゃなくて、ライヴでまた会えた〈みんな〉。ちゃんと夜明けみたいな感覚で作りたいなと思って。だからこの曲だけはいろいろ考えて書いたかな。やっとまとまってよかった、って感じでしたね」
いい曲だし、説得力も違う。10年前、28歳の自分が、今の自分を見たらどんなことを思ってると思う?
「カッコいいんじゃないですかね。へへへっ。たぶん歳取ったほうがカッコいいと思うんで、俺たち」
文=石井恵梨子
NEW ALBUM
『TENDOUJI』
2024.05.15 Release
- TENDOUJI のテーマ
- TOKYO ASH
- TEENAGE VIBES
- NO!NO!NO!
- Black Star
- Jellyfish
- The John
- Just Because
- Sugar Days
- SHPP
- GREAT DAWN
- BIG LOVE(CD Only Bonus Track)
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〈TENDOUJI ONEMAN TOUR〉
5月18日(土)新潟 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
5月26日(日)岡山 PEPPER LAND
6月1日(土)北海道 札幌 SPiCE
6月2日(日)宮城 仙台 LIVE HOUSE enn 2nd
6月8日(土)香川 高松 TOONICE
6月9日(日)福岡 the voodoo lounge
6月21日(金)愛知 今池 CLUB UPSET
6月23日(日)大阪 心斎橋 Music Club JANUS
6月29日(土)東京 恵比寿 LIQUIDROOM