怒髪天・増子直純が、人生の兄貴分・先輩方に教えを乞い、ためになるお言葉を頂戴する『音楽と人』の連載「後輩ノススメ!〜オセー・テ・パイセン♥〜」。その〈補講編〉として、誌面に収まりきらなかったパイセン方のありがたいお話をWebにて公開していきます。 第7回のゲストは、レコード会社の社長職を辞し、昨年バンドに完全復帰を果たした横浜銀蝿のギタリスト、Johnny。増子直純が学生時代、初めてテレビで目にしたギターヒーローであり、還暦を超えて、ふたたびバンドマンとして生きることを選んだ大先輩との対話をここにお届けします!
増子「やっぱ我々からすると、Johnnyさんは学生時代にテレビで観てた人ですからね。それこそ、うちの友康(上原子友康/怒髪天ギター)は、すごくJohnnyさんのことが好きで。ソロも全作持ってるくらいだし、本当にね、ロックスター、ギターヒーローなんですよ」
当時、テレビで観た横浜銀蝿を通して、ロックンロールという音楽、そして革ジャンにリーゼントというスタイルを知った人は、かなり多いですよね。
増子「そう。当時〈不良の音楽〉って言われていたロックンロールを、テレビで演奏できるんだ!?みたいな。そういう衝撃がすごくあったし、不良たちの理解者じゃないけど、親からも学校の先生からも、いろんなものを押し付けられている中で、自分たちが投影できるものというか、〈ああ、わかってくれるのか〉〈俺と同じだ!〉みたいな共感性が、横浜銀蝿にはものすごくあったんじゃないかな。それが時代ともマッチしたというかね」
Johnny「まさにそうだと思います。ちょうどデビューした頃、校内暴力や暴走族とかが社会現象になっていた時で。そこに、ああいう出立ちで、『ぶっちぎり』っていうアルバムだったり、〈ツッパリHigh School Rock'n Roll(登校編)〉みたいな時代を背景にした曲を出したので、一気に若者たちの支持を得たというか」
増子「あとやっぱりロックンロールの3コード進行って、たぶんみんな銀蝿にすり込まれたものだと思いますよ」
Johnny「今考えると、同じような曲調ばっかだったし、よくあれを押し通したなって(笑)」
増子「でもすごいスイートで切ない感じの曲もあるじゃないですか。どうしてもロカビリーのバンドとか同じようなテイストの楽曲ばっかりになりがちなんだけど、銀蝿はそうじゃなくて。ぶっきらぼうさと優しさが同居するっていうか、その世界観もすごくいいんですよね」
Johnny「そういうのをみなさん声を大にして言ってもらいたいですね。なかなか銀蝿好きって陰に隠れがちなんで。もっと声を上げて言ってもらいたいです(笑)」
増子「後々考えると、ほぼ日本のピストルズなんだよね」
横浜銀蝿が。
増子「そう。ロックンロールというものをお茶の間レベルまで知らしめたバンドだし、ファッションから何からいろんなものをひっくり返した存在だから。ただピストルズと大きく違うのは、学生時代に組んだ、ちゃんと音楽ありき、メンバーありきでバンドが始まっているところで」
高校の同級生だったJohnnyさんとヴォーカルの翔さんを中心に結成されたバンドですもんね。
増子「そう。ピストルズみたいに大人に作られたものじゃないから。でもほんと、俺の周りみんな好きだったし、あんなにひとつのロックバンドが社会現象のようになったのって、後にも先にもないんじゃない? BOØWYとかブルーハーツがどんだけ売れたと言っても、髪型やファッションまでは一般的にはならなかったじゃない」
確かに。いわゆる80年代のヤンキー文化にも影響を与えてますもんね、銀蝿は。
増子「みんなキャッツアイ(型のサングラス)を買ってたし、俺も何個買ったかわかんないな。Johnnyさんはミラーが入ったやつでしたよね」
Johnny「そうでしたね。〈Johnnyと言えばキャッツアイ!〉みたいに完全に顔の一部になってましたね(笑)。たぶん当時、若い世代に支持された一番の要因は、ヴォーカルの翔くんの、ちょっとおちゃらけた、ユーモアのあるワードセンスが抜群だったからだと思うんです。ああいう出立ちをして『ベイビー』とか『サタデーナイト』とか言ってカッコつける人が多い中で、すごく熱い歌もあれば、ちょっと捻った感じの、世の中舐めてる感じのもあって。だから、コメディ、と言ったら翔くんに申し訳ないけど、そういう要素を含めて支持されたところはかなりあると思います」
増子「人に物を伝える、大事なことを伝える時にユーモアっていうのは非常に大事なんですよね。学校の先生とか偉い人の言ってることが全然耳に入ってこないっていうのは、きっとユーモアがなかったからで。もうちょっと面白おかしく言ってくれれば、絶対に心に残っただろうなって言葉もいっぱいあったはずなんですよ。だから不良の先輩で、面白いけど強いみたいな人って中学校の時とかにいたけど、そういう面白いけど頼りになる兄貴的なところが銀蝿にはあったかなと」
Johnny「やっぱりどんなに格好で目立ったとしても、結局作品が良くないとダメだと思うので。そういう意味でも翔くんの楽曲センスは抜群でしたよね。俺、けっこう増子さんのワードセンスと、当時の翔くんの冴えたワードセンスは、すごく似てるなと思うんですよね」
増子「いやいや! でもほんと、Johnnyさんがおっしゃるように、何をやるにしても、やっぱり作品、音楽が良くないとダメだっていうのは、俺らも肝に銘じてますね」
ちなみにJohnnyさんは、結成40周年のタイミングで、横浜銀蝿のメンバーとしてステージ復帰されたわけですが、その時すでに還暦を超えられてましたよね。
Johnny「そうですね、62の時でしたからね。本当に不思議だと思うのは、40周年でもう一度ステージに立つことになったのは、デビュー当時の担当ディレクターで、ジャックスのギタリストである水橋さん(水橋春夫)の偲ぶ会が、2018年の11月にあって。そこで20年以上ぶりに翔くんと会ったのがそもそものきっかけなんですね」
それまでほとんど会ってなかったんですね。
Johnny「30でレコード会社に就職して、そこからずっと裏方にいましたからね。で、『久しぶり』っていろいろ話をしていくうちに、翔くんから『再来年、2020年が結成40周年だけど、当時ファンだった小学生とか中学生はライヴも来れなくて、Johnnyが生で演奏する姿を1回も見たことないっていう人がけっこういるんだよ。だから40周年を記念して、もう1回なんかやんねえか?』みたいな話をされて」
2018年ということは、ちょうど還暦を迎えた年ですよね。
Johnny「そうなんですよ。還暦は、生まれ直し、リボーンの年って言いますし、この場所で翔くんと再会したのも、なんか水橋さんに『Johnnyちゃんも60過ぎたし、もう1回ちょっとやんなよ』っていうふうに背中を押されてるのかなって。そんな気持ちにもなって」
増子「2020年に1年間限定だけど、Johnnyさんが銀蝿に復帰するってニュースで見た時、俺も周りも〈Johnny復活するの!! マジかよ!〉って沸き立ちましたもん」
Johnny「まあ、翔くんにやらない?って言われた時は、やりたいとかやりたくないとかじゃなくて、20数年間ギターを弾いてなかったし、ステージに立てる気がまったくなかったんです」
ずっと音楽に携わる仕事をされてましたけど、やはりステージに出るのは、勝手が違いますもんね。
Johnny「だから、『練習するから時間ちょうだい』って。そこから4ヵ月くらいギターを必死に練習しました(笑)」
その後、レコード会社社長の職を辞してバンドに完全復活されて。
増子「会社のトップにまでなった、そのキャリアを置いてバンドマンに戻るっていう話を聞いた時は、ほんとちょっと涙が出ましたよ。やっぱりロックバンドなりロックンロールっていうものは、男が人生を懸けるに値するもんなんだなって。とくに銀蝿の場合、1回バラバラになって。かなり時間が空いて、また一緒にやってるっていう流れもあるわけで」
Johnny「65歳にして、またこっちの世界に戻ってくるとはね(笑)。だから今こうやってアーティストの方と同等の立場で話しをしてるというのも、まだ不思議な感じがありますよ」
スタッフ側にいた時間のほうが長いですもんね。
増子「でも離れている間にそれぞれ経験したものも、バンドの音に出てくるわけじゃないですか。それは絶対面白いと思うんですよね。それこそJohnnyさんは、プレイヤーの立場とメーカー側の立場、その両方を知っていて。だから、今また曲を作る時に客観的に見る部分と、あえてそこを捨てて作る部分もあるのかなって思うんですけど、そのあたりはどうですか?」
Johnny「翔くんにしてもTAKU(横浜銀蝿/ベース)にしても、お互いここまでやってきたことに対するリスペクトがあるので、ここに関してはお前に任せるよ、みたいな。そういう役割分担が今はけっこうしっかりできてるかな、というのはありますね。その中で俺は、やっぱりプレイヤーよりもプロデュース側にいることが長かったので、銀蝿の方向性、戦略は俺が練らせてもらっているかな」
今はそれぞれをリスペクトして、役割分担ができている。ただやはり若い頃は、そうもいかなかったわけですよね。
増子「やっぱり若い時期に、あんだけバンドが大きくなると、一気にいろんな環境が変わるだろうし、それによってお互いのエゴがぶつかり合ってしまうこともあったでしょうね」
Johnny「あの時は本当にそうでしたね。やっぱり〈俺が俺が〉みたいなところが、みんなあったりしましたし。とくに翔くんと嵐さん(横浜銀蝿/ドラム。2022年没)は、兄弟仲は良かっけど、たまに大喧嘩したり、お互いに文句を言いあってることもあったりして」
翔さんと嵐さんは、バンドメンバーの前に家族でもありますからね。
Johnny「そう。でもこないだ『生きてる時は頭にくることもいっぱいあったけど、でもこうやって時間が経ってみると、全部許せちゃうんだよね』みたいなことを翔くんが言ってて。そういう感覚はすごくわかるんですよ。やっぱり10代の頃からずっと一緒にやってきたメンバーで、仲もよかったんですけど、ぶつかるところもあったし、〈何だよこいつ?〉って思っていた時も多々ありましたからね。でも時間が経つと、〈それはそれで〉みたいなところがお互いにあるというか」
若い時は〈え? 何言ってんの?〉って思ったところも、時を経て許容できるようになるというか。
Johnny「ほんとそうです。さっきの翔くんの言葉じゃないですけど、すべてがいい思い出に変わるみたいな。そういうのは確かに年齢とともにあるというか。でもほんと人生っていうのは不思議なもので、こうやってもう1回バンドをやってみて、高校生の頃に翔くんと一緒にバンドを始めた時の気持ちになれたんですよね。音楽始めた頃って人にどう思われるかとか関係ないじゃないですか」
〈自分たちはこれをやりたい〉という衝動が、何よりも強くあって。
Johnny「そう。〈こんなことやったらウケるよね〉って感じで自分たちがやりたいことをやってた、その気持ちにもう一度なれたんですよ。〈60過ぎた大人がこんなことを唄ったらどう思われるかな?〉とか全然気にせず、〈今の俺たちがこれをやるとカッコいいよね〉って。そうやってまた音楽への情熱が掻き立てられていて。本当にメンバーや、当時から応援してくれた人たちに感謝ですよ」
増子「まさに今回、還暦を超えて何が一番の原動力であり、どんな喜びを感じることができるのか、ってことを聞きたかったんですけど、その答えを今いただきました!」
文=平林道子
■横浜銀蝿 INFORMATION
NEW ALBUM
『ぶっちぎりⅪ Vintage 3』
NOW ON SALE
- Ooah !
- Yokohama IKEOJI Rock’n Roll Band
- 愛しのVintage Queen
- Rock’n Roll Man Blues
- T.H.P.
- Believe
- Jollibee ~恋のハチアワセ~
- Get Ready !
- 晩春謳歌
- Like The Rolling Stones
T.C.R.横浜銀蝿R.S.オフィシャルファンクラブ「CRAZYRIDERS」限定無料配信
〈バレンタインデー・ラeve〉アコースティックライヴ
2024年2月13日(火)20:00配信スタート予定・重大発表あり!
「CRAZYRIDERS」
(2024年2月13日(火)時点で有効会員の方が対象となります。)
〈T.C.R.横浜銀蝿R.S. Johnny66th Birthday Live〉
2024年5月9日(木)池袋 Club Mixa
開場 18:30/開演 19:00
■怒髪天 INFORMATION
NEW DIGITAL SINGLE
「ザ・リローテッド」
2024.01.31 RELEASE
怒髪天結成40周年特別企画
〈オールスター男呼唄 真冬の大感謝祭 -愛されたくて・・・2/5世紀-〉
2月4日(日)、5日(月)渋谷Spotify O-EAST
出演:怒髪天 / 怒髪天にゆかりのあるゲスト多数(本番まで秘密)
〈ザ・リローデッド TOUR 2024〉
3月07日(木)千葉LOOK
3月19日(火)高松DIME
3月20日(水/祝)高知X-pt.
3月22日(金)福岡LIVEHOUSE CB
3月23日(土)熊本NAVARO
3月25日(月)神戸VARIT.
6月20日(木)渋谷CLUB QUATTRO
6月22日(土)大阪umeda TRAD
6月23日(日)名古屋CLUB QUATTRO
6月26日(水)札幌BESSIE HALL
7月06日(土)新潟GOLDEN PIGS BLACK
7月07日(日)郡山HIPSHOT JAPAN
7月15日(月/祝)仙台darwin
7月20日(土)金沢AZ
7月21日(日)松本ALECX
10月05日(土)高崎Club JAMMER’S
10月09日(水)和歌山CLUB GATE
10月11日(金)広島セカンド・クラッチ
10月14日(月/祝)岡山ペパーランド
11月02日(土)札幌PENNY LANE24
11月03日(日)札幌PENNY LANE24
11月16日(土)心斎橋BIGCAT
11月23日(土/祝)Zepp Shinjuku (TOKYO)
12月07日(土)沖縄Output
12月08日(日)沖縄Output
〈怒髪天 presents 湯ナイテッド・アワーヅ 2024 "春、温泉"〉
4月13日(土)、14日(日)粟津演舞場
磔磔50周年記念×怒髪天 presents 響都ノ宴
〈押せば生命の泉谷湧く〉
5月15日(水)京都 磔磔
出演:怒髪天/泉谷しげる
5月17日(金)、18日(土)京都 磔磔
出演:怒髪天(ワンマン)