好きなものを理解してくれる人がいるところにはいる。そういう人たちと信頼関係を作って、もっと自分の好きを大きくしていきたい
もうひとつ新しいこととして、ポニーキャニオンへの移籍も発表されました。
「はい。ヒゲダン(Official髭男dism)とかがいるIRORI Recordsを立ち上げた守谷(和真)さんとは、もともと10年以上前に出会ってて。一番初めに僕らのことを『カッコいいよお前ら』って言ってくれた人なんですよ」
前に別冊(註:『別冊 音楽と人 × go!go!vanillas』)でも聞きましたけど、あらためてどういう関係か話してもらえますか。
「インディーズの頃に、俺らはレッドクロスってライヴハウスによく出してもらってて、俺らが出てた日にたまたま守谷さんもいて。その時の俺らってリバティーンズみたいなバンドだったわけですよ、服装から何から何まで。そしたら守谷さんもリバティーンズが大好きで、ライヴ終わって物販やってる時に声かけてくれて。『めっちゃカッコよかった。俺にできることあれば手伝うよ』って。それで、自主音源作る手伝いをしてくれたり、ツアーを組んでくれたりっていうのを一時期してくれてたんですよね」
もともとそういう出会いがあったわけだよね。
「うん。ドンズバでこんなにUKロック好きな人って出会ったことなかったから、こんな人がいるんだってびっくりした。でもお互いの状況もあって、組んで一緒にやっていくっていうのは難しくて。それが、今年からタッグを組んでやれることになった。昔、いつかロンドンでレコーディングとかライヴとかしたいねって話してたんですよ。今回ロンドンに行った理由もそこで。あの日話してた夢が10年経って実現できた。守谷さんも『ここに来て、バニラズとカッコいいもん作って世の中に出していけるっていうのは俺の夢だから』って熱いこと言ってくれて」
気持ちが上がるよね。
「うれしいですよ。それに、すべてが新しいわけじゃないのがいい。移籍して心機一転って感じじゃなくて、昔の夢が掘り起こされて、それをここからもっと大きくしよう、みたいな感じがするから」
10年前はお互いの状況的に実現できなかったけど、このタイミングで一緒にやるっていうストーリーがちゃんとあるからいいんだよな。
「ね。勢いあるレーベルだからそこに行くんですね、みたいなことを一部の人は思うかもしれないけど、そうじゃない。ちゃんと俺らには俺らの歴史があるし、そういう表面しか見てないやつは知らねえよっていうスタンスでやってこうと思ってます(笑)」
それでいいと思います。向こうで録ったのはあと2曲あるんでしょ? これからどんなものが出てくるか楽しみだな。
「どれも昔に近い気はしますね。楽しい感じ(笑)。別に曲調的にハッピーとかじゃなくて、構成だったりアレンジメントだったりに、〈これオモロくない?〉とか〈やったほうがよさそうじゃない?〉みたいな昔の純粋さがあるから。そういうものがこれからもっと出てくるんじゃないかな。それに、今ってなんでもやっていく時代じゃないですか。〈こういうもんだろう〉って自分の中で制限してたり、ビビッてたものを一回取っ払って、ほんとにいいものを!っていう感覚はすごく強くなってるんで」
その「いいもの」って、もうちょっと具体的に言葉にするとどういうもの?
「うーん、それって感覚的なところが大きいけど、どこに出しても恥ずかしくないっていうのはけっこうデカいと思うんですけどね。それこそ言語が伝わらなかったとしても、このビートめちゃくちゃいいとか、歌がいいとか、どこか刺さるものをちゃんと作るっていう。俺らが思う、これカッコいいでしょ!ってものを、しっかり音楽で見せていきたい」
これまではそこまで思えてなかった?
「うーん、人と関わっていくことって疲れるじゃないですか。難しいし。さっきの海外にバンドの友達なんてできるわけないっていうのと一緒で、昔は、どうせわかってもらえないだろうって諦めがちになってたんですよ。自分が好きなアーティストや音楽の話して、わかんない場合、変な空気になるじゃないですか。で、逆にこっちが気を遣うみたいな。そういうのに疲れてたというか。でも今はフラットに見てもらえる人に対して、もっともっとアプローチしたいっていうのはあって。そしたら自分の好きなものを理解してくれる人がいるところにはいるし、そういう人たちとしっかり信頼関係を作って、自分の好きなものをもっと大きくしていくっていうのが健全な気がするんです。昔はね、ほんとに手あたり次第にいい顔してたから」
当たり前だけど10年やってきて、自分の中のそういう芯みたいなものができてきたって感じだよね。
「そうですね。この10年いろんなものを吸収してみて、これは違ったなってこともあるんですよ。でも自分に合うものやいいものがちゃんと理解できて、取捨選択をできるようになった。だからこそ、味見をいろいろしてきて、ほんとの料理を作りますっていうのが今だと思うんで」
いろんな味を試して、今が一番おいしい料理が出せるタイミングだっていう。
「洋楽を聴いて培ってきた自分なりのセンスはちゃんと表現していきつつ、でも聴く人を置いてけぼりにしないっていう塩梅をより意識したい。背伸びしたいわけでもないし、別に自分たちを下に見せるつもりもない。嘘がなく自然な状態でいられるっていうのが、たぶんいい音楽につながるんじゃないかな」
今日の話を聞いてると、このタイミングでロンドンに行けたのは、すごくよかったよね。
「本当に。レコーディングだけじゃなくて、街の環境とか全部がいろんなことを気づかせてくれた。日本にいるとスマホばかり見てるし、一番身近でラクなところに行きたくなっちゃう。けど、向こうに行ったら全部が新しいからスマホ見てる時間もったいねえ、みたいな」
下見てる場合じゃないもんね。
「うん。肉体的になるじゃないですか。そしたら気づきますよね。俺こういう街並み好きだとか、こういうのに心が動くんだとか。向こうでラフ・トレードにも行ったけど、ネットだったら自分で検索するからそこしか見ないけど、懐かしいバンドのレコード見つけて、思わず買っちゃった(笑)。そうやって心も身体もワクワクしてたから、レコーディングでの自分たちの音もすごい肉体的に聴けた。そういう中で〈SHAKE〉を完成させられたから、今度は肉体的な表現以外にもいろんなことが試せたりすると思うんですよ。だから、まだまだ伸びしろがありますよ、俺たちは」
文=金光裕史
写真=マーク・アベ
NEW DIGITAL SINGLE
「SHAKE」
2024.01.10 RELEASE
〈DREAMS TOUR 2023-2024〉
1月28日(日) Zepp Sapporo
2月9日(金) 岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
2月10日(土) BLUE LIVE 広島
2月12日(月・祝) 米子 laughs
2月22日(木) 金沢 EIGHT HALL
2月23日(金・祝) 富山 MAIRO
2月25日(日) 新潟 LOTS
〈DREAMS TOUR 2023-2024 FINAL「MAKE MY DREAM」〉
3月9日(土)幕張メッセ 国際展示場 展示ホール9〜11 ※ワンマン
OPEN 16:00 / START 17:00 / 終演予定 19:30
3月10日(日)幕張メッセ 国際展示場 展示ホール9〜11
w:[Alexandros] / sumika / 04 Limited Sazabys / My Hair is Bad / マカロニえんぴつ / UNISON SQUARE GARDEN
OPEN 10:30 / START 12:00 / 終演予定 20:00
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