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INTERVIEW
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忘れらんねえよの音楽と繋がるための熱海旅行。男2人が友達になるまでの暑苦しいドキュメント

2人で旅行も初めてだし、こんなに人と長い時間いることもないけど、俺、普通に楽しんでるぞ?



翌朝。チェックアウト30分前にようやく起きた柴田が、ちゃぶ台を挟んで目の前に座ると、昨夜の店の感想とともにSNSを眺めながら独り言みたいに呟き始めた。まるで俺の存在を気にしていないのがわかる。何年も前からコイツとこの部屋で暮らしている錯覚に陥るほど、彼と一緒にいるのが自然な感じがして、それが心地よかった。


今日は2人で箱根の景勝地を巡ることになっていて、まずは十国峠という富士山や駿河湾といった景観を堪能できる場所へ車を走らせる。曲がりくねった道をひたすら登り続けた頂上の目的地に到着、晴れた秋空の向こうに見える富士山の姿がとても美しい。「あー、確かにまぁデカくてカッコいいですよね、富士山。わざわざ見に来ようとは思わないけど」と言いながらも、峠の冷たい風を気持ち良さそうに浴びている。予定ではさらにケーブルカーに乗ってパノラマビューを楽しむつもりだったが、柴田は腹を下し、俺もなんとなく面倒になってやめにした。やっぱり我々には居酒屋がお似合いなのかもしれない。


昨日と同じく車中でいろんな話をした。ミュージシャンのセカンドキャリア問題、親ともいつかは別れが訪れることへの怖さなど、40代と50代ならではのビターな話題が続く。本性を晒せない、離れるのも辛い、でも一人でいるのも寂しい。堂々巡りで答えの出ない会話と、クネクネと曲がり続ける峠道がシンクロする。たぶん彼の人生という名の道がフラットになることはないだろう。急勾配と急カーブに翻弄されながら、酒と音楽に助けを求めながら自己愛を育てるしか術はないのだろうか。


芦ノ湖に到着。観光客で賑わう箱根の観光スポットに「やっぱり海とは違うんだな、湖って」と、妙に感心しながら白波の立つ湖面をじっと眺めている。巨大な鳥居に「これデザインした人、マジでセンスいい」とオマエ誰目線な感想を言ったかと思えば、その傍らにひっそりと佇むお墓に手を合わせたり、すっかり旅情をかきたてられた模様。そして最後は硫黄の水蒸気が噴き上がることで有名な大涌谷へ。名物の「黒たまご」を食べることにしたが、硫化鉄で真っ黒になった外観にどんな味を期待したのか「これ普通のゆで卵じゃん」とツッコミを入れて、一泊二日の旅のプランはこれにて終了となった。


芦ノ湖に引き返し、お土産物屋さんの片隅でこの2日間の感想を聞くことに。この頃にはすでに、遠くに見える富士山に「やっぱりすごいね」と感想を口にするぐらい素直になっていた。


どうでしたか。


「なんか、いいリハビリになったなって(笑)」


なんのリハビリ?


「旅行ってものに対するリハビリ。あと、人とこんなに一緒にいることもそう。普段は避けてるからね」


バンドって人と一緒にやるものだけど(笑)。


「そうなんだけど、仕事っていうか目的があるからどうにかなるの。ま、これも仕事なんだけど(笑)」


俺にとっても仕事だよ。でも感覚としては友達として――。


「いや、俺も途中からそういう感覚でした。あれ? 俺、普通に楽しんでいるぞ?みたいな。2人で旅行っていうのも初めてだし、こんなに人と長い時間一緒にいることもないけど、なんとかなるんだなって」


なんとかならない場合、どうなるの?


「すっごい疲れる。オデコのあたりが重たくなってきて、眠くなる。でも今日は気疲れしてない」


こっちも感想を言うと、「音楽と人」の歌詞じゃないけど、やっぱり柴田と友達になるには、痛みで繋がる必要があるんだなって思って。で、こうやって人と繋がれるんだったら、それは恋愛でもできることなんじゃないかと。


「この延長線上に、恋人が待ってるのか」


それでも穏やかな恋愛は訪れないような気がする。お互いの感情をぶつけ合って、何回も「別れる!」みたいな。


「えーそれは嫌だな。穏やかな恋愛に俺は憧れてるんだけど」


だからそれが逃げなんじゃないの?


「そうね。ケンカもしたことないし、別れるとか別れないとか、そこにすら踏み込めず終わるから。好きな人に自分の主義主張なんて恐ろしくて言えない。で、ずっと距離が空いたままで縮まらない。で、フラれる」


でも昨日と今日はリハビリになったんでしょ?


「うん…………やっぱり俺、好きな子に晒け出す必要があるってことですね。そしたら案外いい関係が作れるかもよ、みたいな。で、それにはケンカもできないとっていう」


バンドだってそうじゃん。痛みを伴う関係だから。


「だから魔法なんですよ、バンドって。それを信じてたけど、俺の場合、一回解けちゃったから。でもバンドって、お互いを傷つけ合って、そこでしか生まれないものなんだよね」


そういう関係を友達とも好きな子とも築いてください。


「できんのかなー」


最後に、ウチの雑誌に何か要望があれば。


「フェスやって。オンヒトに足りないのはそこだな(笑)」


仮にやったとしても、柴田を出すかどうかわかんないよ。


「いやいや! そこは友達だから出そうよ!(笑)」


これを読み終わってから、もう一度「音楽と人」を聴いてほしい。そして『いまも忘れらんねえよ。』をとことん聴き込んでほしい。そのうち本性を包み隠さず晒す柴田の感情に振り回され、彼のことが好きになったり嫌いになったりするだろう。でもその先にある彼との繋がりは、海とか山とか湖みたいな、我々がこの旅で目にした揺るぎないものになっているかもしれない。


文=樋口靖幸



NEW ALBUM
『いまも忘れらんねえよ。』
2023.12.13 RELEASE

[Disc1]

  1. 歌詞書けなすぎて、朝
  2. これだから最近の若者は最高なんだ
  3. 夢に出てくんな
  4. アイラブ言う
  5. 知ってら
  6. 俺にやさしく
  7. お前の話は聞いていない
  8. いいから
  9. 2時間なんもしなかった
  10. プロポーズ
  11. いやがらせのうた
  12. 悲しみよ歌になれ
  13. 音楽と人
  14. 君の音
  15. 犬人間

[Disc2]「忘れらんねえよを歌ってみた」

  1. 知ってら / 安藤裕子
  2. アイラブ言う / 田所あずさ
  3. 犬にしてくれ / NakamuraEmi
  4. バンドやろうぜ / ネクライトーキー
  5. CからはじまるABC /橋本絵莉子×忘れらんねえよ

Amazonで購入
TOWER RECORDSで購入
HMVで購入


15周年集大成ワンマン〈忘れらんねえよのすべて〉
2024年1月10日(水)Zepp Shinjuku(TOKYO)
OPEN18:00 / START19:00


忘れらんねえよオフィシャルサイト

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