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オレンジスパイニクラブの本当の姿がここにあった。理想のバンド像に到達したツアーファイナル

text by 石井恵梨子

【LIVE REPORT】
オレンジスパイニクラブ〈2nd Full Album『Crop』Release ONEMAN TOUR 2023-見えないものに愛を-〉
2023.12.09 at  Zepp Shinjuku(TOKYO)



オレスパことオレンジスパイニクラブを初めて見たのは、コロナ禍の真っ只中。まだ規制だらけのライヴハウス。床には場所指定のマーキングがあり、マスク必須で声も出せなかった頃だ。演奏は、正直、アンバランスであった。


もともとヤケクソ気味のパンクをやっていた4人が、よりポップな存在になるべく改名したのは2019年。翌年ファーストミニアルバムを出した矢先に、二つの出来事が起きたのだ。ひとつはコロナによる緊急事態宣言。もうひとつが収録曲「キンモクセイ」のSNSバズである。


会えない恋人を思う一曲がネット上で再生回数を稼ぎ、しかし得意のライヴは当面禁止。あれよあれよとメジャーデビューが決定し、「キンモクセイ」を超える曲を書かなくちゃと考える。それでも久しぶりにライヴ再開となれば、かつての癖でめいっぱい暴れてしまう。パンクとポップの違い、ライヴハウスの至近距離とスマホ経由で広がる訴求力の隔たりを、まだ上手く掴めていなかったのだと思う。一寸先も見えなかったコロナ禍のムードを思えば、あそこで上手く立ち回るための正解はなかったけれど。


ただ、彼らは腐らなかった。メジャーの環境に見合うだけの名曲を、勢いで誤魔化さない正直な歌を、ちゃんと書こうと意識を変えていく。完成したのがセカンドアルバム『Crop』。胸を張って届けたい新曲を携えて廻ったのが今回の全国ツアーとなる。最終日、バンドにとって過去最大キャパとなるZepp Shinjukuは満員だ。


スタートは新作から「Crop」、そして「ルージュ」。生のバンド演奏は音源よりもだいぶ熱量が高い。スズキユウスケ(ヴォーカル&ギター)の声は愛嬌と熱血の狭間、ベタに言うと聴きやすさとエモさの中間で響き、スズキナオト(ギター)のコーラスははっきりと情熱的である。二人の役割分担もちゃんとあって、ユウスケがギターを弾かず、身振り手振りで伝える歌がかなり増えていた。観客を導くフロントマンが彼で、隣で補完するのが弟のナオト。3曲目「タイムトラベルメロン」。兄弟揃って広いステージで唄う〈いつか憧れていたミュージシャン/今でも夢を見てる〉のフレーズは、たまらなく気持ちがいいことだろう。


前半、そして大団円に向かう後半は、変わらぬ憧れとルーツが炸裂していた。パンキッシュな「洒落」のあと初期の「東京の空」になだれ込めば、やはり勢いは桁違い。激しいビートを叩くゆりと(ドラム)に全員が向き合い、アイコンタクトひとつでガーンと音をぶつけ合うシーンなど、言葉もいらない最高の快感がある。サマになっているのも事実で、これを理想とする心に嘘はない。ラスト手前、「急ショック死寸前」では、ブレイクのたびにナオトとユウスケとゆっきー(ベース)が揃いのジャンプを決める。笑ってしまうほど最高の瞬間がたくさんあった。しかし。


結論を言えば、この日最も心に残ったのは中盤のミドルテンポなのだった。8曲目からは新作の制作にも参加したトオミ ヨウが登場。彼の鍵盤と共に「ハルによろしく」が始まる。どこまでも軽やかで柔らかいユウスケの声は、それまでとは明らかに唱法が変わっている。ここで見せる素直さや優しさも、また嘘のない本音なのだ。トオミが「めっちゃ楽しいです」と言えば、即座にメンバーから「なんだったら正式メンバーに」と冗談が返ってくるほど、違和感のない空気も印象的。バンドが他者を拒んでいないのだ。


トオミの鍵盤入り、THE FIRST TAKEヴァージョンの「キンモクセイ」を観客全員に唱和させていたシーンも、とても感慨深いものがあった。初のバズ曲、扱いの難しい一曲ではなく、すでに〈みんなのうた〉になったことを実感する。ただ、この曲よりもさらに沁みたのは新曲「hug.」である。始まりは鍵盤とユウスケの独唱のみ。リズムも入らない、原曲以上にバラード風のアレンジになっていて、ナオトが書いた一語一句を、全員に丁寧に届けようとするユウスケの姿がじわじわと感動を運んでくる。兄弟愛を全面に押し出すバンドではないが、最終的に滲んで見えるのがそれであることも、オレスパの愛すべき個性だと思う。


熱くロックに始まり、ごく自然と素直なポップスに移行し、最後は派手に大ジャンプ。そういう1時間半は、とてもいいバランスだった。これが本当のオレスパなのだろう。もともとそうだったという意味ではなく、納得できる理想のバランスをようやく確立できた。激しさも優しさも〈本当のこと〉にした今、初めて見るような4人の笑顔があった。


文=石井恵梨子
写真=冨田味我


  1. Crop
  2. ルージュ
  3. タイムトラベルメロン
  4. no reason
  5. ノーバイブ
  6. 洒落
  7. 東京の空
  8. 理由
  9. ハルによろしく
  10. タルパ
  11. まいでぃあ
  12. キンモクセイ
  13. 9分間
  14. ピンクフラミンゴ
  15. hug.
  16. パピコ
  17. 君のいる方へ
  18. 急ショック死寸前
  19. モザイク
  20. エブリディ・ロックンロール
  21. 敏感少女

ENCORE

  1. イージーゴーイング
  2. スリーカウント


オレンジスパイニクラブ オフィシャルサイト

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