みんなバンドを始めても、我慢できなくなって途中で終わらせちゃう。その先にあるものなのにね
やっぱりそういったところから、バンドにいい風が吹くようになったんですかね?
「信頼関係はより深くなりましたね、昔は、3人の期待に応えられてないと思えた自分もいたし、みんなは少なからず不満があったと思いますよ。そんな中で信頼関係なんて作れないじゃないですか。でも呼吸や温度を同じように感じることができるようになって、うまくいかないことや弱さも見せて、それが信頼関係に繋がって。それがあると、バンドのグルーヴってどんどん強くなるんですよ」
長くやることに価値がある、と。
「ある意味そうですけど、でも、長くやってるだけじゃダメだと思うんですよね。バンドのシンガーでいることって、僕にとってすごく大切ですけど、バンドって、いい意味で大変じゃないですか。血の繋がってないメンバーが、家族以上の付き合いをして、さらに刺激的でいなくちゃいけない。1年に1回やるくらいならまだいいけど、それを生き様にするのは難しいし、なかなかできるもんじゃないと思うんですよね」
長い時間を共にして、一緒にツアーを廻って、同じ場面を見て、何か生まれてくるというか。
「そう。人間って完璧な存在じゃないから。そういう弱さとかも見せて、お互いをわかって、そこで成長するから」
今回のアルバムも、昔のD'ERLANGERをコピーするのではなく、徐々に成長して、わかり合ってきたメンバーが、今の年齢になって鳴らす音、って感じがすごくします。
「そうですね。再結成して15年。長い時間を共にして、一緒に歳をとってるのはけっこう大きなことで。音楽ってそうじゃないですか。若い頃には、なんでこんなに退屈なんだろうって思ってた曲が、歳を重ねて深みがわかって沁みてきたりしません?若い時のD'ERLANGERは、刺すような勢いや激しさが特徴でしたけど、もうみんな50代なんで(笑)。ムードのある雰囲気も表現できるようになってきて、大人の色気を表現できるようになってるんです」
このアルバムはまさにそうです。「Love Like Blood」みたいに、昔を彷彿とさせるような曲もありますけど。
「ははははは。あれは最後に録ったんですけど、やっぱりああいうの録るとカッコいいねってなる。血なんだねって(笑)」
でも歳を重ねると、そういう成長を感じると共に、失うものも出てくるじゃないですか。
「そうですね」
先日のライヴでGRAND SLAMの曲をカヴァーしてましたけど、ギタリストの白田一秀さんが亡くなられたり。ISSAYさん(DER ZIBET/ヴォーカル)もお亡くなりになられました。そういう事実にぶち当たると、人生観に変化を感じませんか?
「そうなんですよ。自分では感じないけど、人がいなくなることには喪失感を強く感じたりしますね。仕方のないことだとは思っても、それで割り切れることではないから。ちょっとそれはね……昔はあまりリアリティを感じなかったけど、今は複雑な感情が胸にきますね」
さっきの話に戻りますけど、D'ERLANGERのkyoと、一個人としての存在に、すごく距離を置いてますよね。
「意識しないようにしてる、というのが本音だし、あんまり分けようとしてないですけど、でも今は、その世界観は守りつつ、ステージでは感情をそのままさらけ出していこうと思ってて。それを誰にも負けない大きな声で、そのまま出していこう、って思うようになったのはあります。例えばですけど、うちのバンド、音デカいじゃないですか」
おそらく日本一デカいです(笑)。
「僕も声がやっぱりデカくなっていくんですよ(笑)。するとイベントに出た時、対バン相手と話してるメンバーが『うちのヴォーカル、声デカいでしょ?』って、嬉しそうにしてるんです。上手いとか、声がいいとかじゃなくて、声がデカいって(笑)。それがもう染みついて、頭で考えなくても、それを求めてるんだって身体がわかってる。それが信頼感になってるというか」
ですよね。kyoさんも、D'ERLANGERのヴォーカルであるプライドを、強く持ててるというか。
「うん。生き様をすべて出せる場所ですからね。だって、うちのメンバー、あんなにカッコいいんだから(笑)」
そうやって自然と口にできるところが、素晴らしいですよ。
「でも、そうじゃなきゃ長くできないでしょ。やっぱり今でもいちばん影響受けますもん。たぶん20代より今のほうが影響受けてるんじゃないかな」
なるほど。
「若い頃、こういう信頼関係や、カッコいいたたずまいを手に入れたくて、みんなバンドを始めるんですよ。でもなかなか手に入らなくて、我慢できなくなって、途中で終わらせちゃう。その先にあるものなのにね。そういう意味では奇跡だと思いますよ。今この歳で、若い頃に手に入れたかったものを持ってるぜ、って言えるのは」
若い時に手に入れたかったものっていうのは……。
「カッコいいメンバーとカッコいい音を鳴らすロックバンドをやること、ですよ。それしかなかったもん」
それが夢だったんですよね。
「そうですね。まあ……もうちょっと金持ちになってもよかったんじゃないか、って思うけど(笑)」
はははははははは。でもそれ以上の価値があるものを手に入れたというか。
「そうですね(笑)。だから今が本当にベストだと思います。このベストをずっと続けていきたい、本当にそう思うんですよ。胸張って『いいだろ』って自慢できるものなんて、人生にそんなにないじゃないですか(笑)」
そうですね。
「それが自分にあることが嬉しいんですよ。僕が加入して、すぐ解散して、いろんな人を裏切った結果になって、今でも申し訳なかったなと思うことがあるんですけど、33年後、同じメンバーで、こんな気持ちでバンドをやってることを考えると、ああいう出来事も、こうなるための必然だったんじゃないかって言えるというか」
末永くバンドを続けてほしいです。
「頑張りますよ。これから年齢に反抗していかないといけないですけどね(笑)」
でも50歳過ぎると、体力は間違いなく衰えていくじゃないですか。そうならないよう頑張るのか、衰えていく姿すらドキュメントとしていくのか……。
「後者はないですね。僕がD'ERLANGERで唄う限りは、衰えを見せちゃいけないから」
ああ、なるほど。
「だから病気して、治療生活が長かったから体力落ちて、これはマズいと思ったので、逹瑯(MUCC)に連れてってもらって、ジム通いをするようになったんですよ、そういうの苦手だったんですけど、いざやってみたら、唄うことにもプラスな面が出てきて。今、マメに通ってます」
今日はリモートで取材してますけど、すごく健康そうですもんね。
「ありがとうございます。まあツアーに出ることが、いちばんの体力トレーニングになるんですけどね」
なるほど(笑)。何度も言いますけど、今そういうふうに思えることが、バンドが今、とてもいい状態なんだなってわかります。
「そうですね。メンバーそれぞれの自信が、このアルバムの音に反映されてると思います」
最後に、タイトルの『Rosy Moments 4D』の意味について教えてください。
「CIPHERのアイディアだったんですけど、まだ曲が出揃ってるわけでもないのに『今回のアルバムのタイトル、なんかいいのない?』って話になるんですけど(笑)。その時CIPHERが、薔薇色の瞬間、みたいなイメージだって説明して。4Dっていうのは、要は4のD=4人のD'ERLANGERって意味でもあるんですけど、4=FORという意味にもとれて」
D'ERLANGERのための薔薇色の瞬間、みたいな。
「その意味もすごく今のバンドにはぴったりだなと思います」
文=金光裕史
NEW ALBUM『Rosy Moments 4D』
2023.09.13 RELEASE
01 Longing
02 Bitter Sweet
03 le grand bijoux
04 Missing Piece
05 what's yours is mine
06 Sacrifice Love
07 Be with Your Love
08 La Brea
09 Love Like Blood
10 哀撫
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〈D’ERLANGER Rosy Moments 4D Premiere 2023〉
9月18日(月・祝)豊洲PIT
10月12日(木)Veats Shibuya
10月13日(金)Veats Shibuya
10月21日(土)梅田クラブクアトロ
10月22日(日)梅田クラブクアトロ
11月22日(水)Veats Shibuya
11月23日(木・祝)Veats Shibuya