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【特集】アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』とは何か?|陰キャのバンドストーリーに心動かされる理由

text by 蜂須賀ちなみ

昨年10月にアニメが放送開始となり、アニメファンだけにとどまらず、ミュージシャンや音楽好きの間でも注目されている『ぼっち・ざ・ろっく!』。音楽と人.comでは、『ぼっち・ざ・ろっく!』がどうしてこんなに心を打つのか、その魅力を探るテキストを2日にわたって公開。アニメの感想を聞いたバンドマンインタビューをお届けした1日目に続き、2日目は、他の音楽アニメとの違いやこの作品が与えてくれるさまざまな感情を探ります。


(以下、音楽と人2023年3月号に掲載された記事です)



今期は何か面白そうなアニメはあるかなと、何気なく観始めた『ぼっち・ざ・ろっく!』。女子高生がバンドを始める話なら、キラキラした感じだろうなと思っていたら、主人公があまりにも陰気で驚いた。ライヴだっていうのに、段ボールに入ってギターを弾いている……。その姿は衝撃的だったけど、何よりも〈わかる〉と思う自分がいた。喋り始める前に「あっ……」と言ってしまいがちなのもわかる。相手の目を見られず、俯いて、早口で、自分の言葉を押しつけてしまうのもわかる。そんな自分を変えたいと、本当は思っているのもわかる。


ぼっち(後藤ひとり)はバンド活動に憧れてギターを始めたが、「一緒にバンド組もうよ」と誰にも声を掛けることができず、中学の3年間は一人で自宅でギターを練習するだけで終わった。結果、凄腕ギタリストとしてネットで有名にはなったものの、学校では相変わらず一人ぼっち。高校入学後もギターを背負って登校し、楽器をやっていると暗にアピールするのが精一杯だった。一方、私は高校時代、吹奏楽部でトランペットを吹いていた。トランペットといえば、主にメロディを演奏する花形の楽器。その華やかさに憧れていたはずなのに、主旋律やソロを他の人に譲り、ハモりのパートに甘んじていた。当時の自分の中にあったのは〈音楽をやりたいし、本当は目立ちたいけど、人前に出るのが怖い〉という気持ち。おそらくぼっちもそんなふうに思っていて、だからこそ、段ボールを被ってライヴに出るのがしっくりきたのではないだろうか。

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
©はまじあき/芳文社・アニプレックス


音楽に熱中する高校生が主人公のアニメはこれまでにもあったが、こんなにも共感できたのは初めてだった。では、共感できるキャラクターの活躍がただただうれしかったかというと、そう単純な話でもない。あまりにも自分に近いからこそ、冷静には観ていられない場面も多かった。例えば第9話がそう。夏休み中、ぼっちはバンドのメンバーと一緒に遊びに行きたいと思っていたが、結局自分から誘うことはできず、とうとう夏休み最終日を迎えてしまう……というエピソード。〈私もいまだに友達を呑みに誘えないんだよな〉と思うとともに、〈ぼっちよ、大人になっても、こんな感じのままだぞ……〉と切なくなった。


極度の人見知りで自意識過剰、陰キャと呼ばれる私たちは、社会に出て、自分にできる仕事を選んだり、一緒にいて楽な人とだけ過ごしたりできるようになるにつれて、自分が陰キャだと意識することは減っていく。しかし、〈そうだ、私はこっち側の人間だった〉と思い出すきっかけはあらゆるところに潜んでいて、いつ地雷を踏むかわからない恐怖に怯える毎日。そんな人間からすると、〈陰キャあるある〉が詰まった『ぼっち・ざ・ろっく!』は特大の爆弾だ。私はこのアニメに出会ったことで、〈そういえば、なんで他のバンドものアニメにハマらなかったんだろう?〉という疑問を持つようになったし、〈おしゃべりばかりで全然練習しないから、観ていてイライラするんだよな〉という気持ちが、そういう青春を知らないがゆえの羨ましさから来るものだったと気づいてしまった。恥ずかしくてどうにかなりそうだ。

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
©はまじあき/芳文社・アニプレックス


だから正直〈なんてことをしてくれるんだ〉と言いたくなる気持ちは否めない。しかし〈頭ではわかってる、でも怖い〉と震えるぼっちは、やはりかつての自分であり、〈こんな奇跡、一生起こらない〉と一歩踏み出した彼女のことを応援せずにはいられなかった。ぼっちも頑張っているんだから私も頑張ろうと、勇気をもらっていた。


また、『ぼっち・ざ・ろっく!』といえば、実在のバンドやライヴハウス、下北沢の街などの忠実な描写も魅力のひとつ。オマージュも多く、〈STARRY、見るからにシェルターじゃん!〉と元ネタに気づくたびにうれしくなっていたバンド好きも多いはずだ。シェルターの店長は〈残念ながら女子高生はバイトしていませんし、星歌さんのような綺麗な店長はいません〉とユーモアのあるツイートをしていたけど、下北沢に行けば、本当に彼女たちに会えるかもと思えるほど、結束バンドは私たちにとって身近な存在になっていた。だからこそ4人が成長し、少しずつバンドらしくなっていくのが自分のことのようにうれしかったし、アニメの放送が終わった今、〈あの文化祭ライヴは伝説〉と言って廻りたいくらいの気持ちになっている。

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
©はまじあき/芳文社・アニプレックス


ステージからダイヴしたぼっちに笑いながら、同じ種類の人間として思う。そうそう、論理も自意識も劣等感もすっ飛ばして、自分でも理解不能な、突拍子もない行動をしちゃうことってあるよね、と。人生の先輩として伝えたいのは、その衝動が、きっとあなたの人生を切り開いてくれるはずだ、ということ。だから、ぼっちよ、そのまま進め。その無茶苦茶さで、バンドシーンの天下を獲ってくれ。もしも結束バンドがめちゃくちゃ売れたなら、私たちの薄暗い青春もきっと報われるだろう。


文=蜂須賀ちなみ


ALBUM『結束バンド』
2022.12.28 RELEASE

01 青春コンプレックス
02 ひとりぼっち東京
03 Distortion‼
04 ひみつ基地
05 ギターと孤独と蒼い惑星
06 ラブソングが歌えない
07 あのバンド
08 カラカラ
09 小さな海
10 なにが悪い
11 忘れてやらない
12 星座になれたら
13 フラッシュバッカー
14 転がる岩、君に朝が降る

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