【LIVE REPORT】
BIGMAMA〈Swear by My Name 〜宣誓、我々BIGMAMA一同は〜〉
2022.06.19 at 八王子Match Vox
ものすごい熱量だった。ライヴハウスのキャパシティもあっただろうし、新たな発表をすると謳われていたからその意気込みもあっただろうけど、それ以上にBIGMAMAというバンドがこれまでに培ってきたものやファンと作り上げてきた関係、そしてそれを5人がひと塊になって叩きつけるような圧倒的なエネルギーが渦巻いていた。
デビュー前によく出ていた八王子Match Voxでのワンマンライヴ。この日は〈新たなる誓い、発表がある〉と事前に告知されていたこともあり、会場に入るとライヴに対するワクワクに混じって、一体なんの発表だろう？といったソワソワした空気も少し感じられた。定刻どおりにメンバーが登場し、最新曲「Let it beat」からスタート。緊張なのか気合いが入りすぎているのか、演奏が少し硬い。続いて「Little cloud」「I Don't Need a Time Machine」が立て続けに披露されると、だんだん身体と演奏がほぐれていったが、それでも今日にかける並々ならぬ思いが一音一音から伝わってくる。
4曲目までが終わったタイミングで、バケツをかぶったドラマー・Bucket Banquet Bisがマイクを握る。この日の「宣誓」をするにあたり、もともとライヴをやる予定はなかったが、ビスが「お客さんに会って音でも届けたほうがいい」と提案したことでワンマンが決まったという。正式加入して1年ほど。しかも八王子で活動していた時代を知らない彼が、そういった提案をしてくることに、BIGMAMAへの強い思いを感じる。実際、ビスのドラムは曲に対してとても繊細で丁寧だ。「Strawberry Feels」のように激しい曲もテンポやリズムへの徹底した意識を感じるし、しっとりした「beautiful lie, beautiful smile」では滑らかに緩急をつけて曲に寄り添う。彼が加わったことで、バンドの演奏も活動も、新鮮な空気が循環するようになったところはあるのだろう。
ヴァイオリニストがいて、バケツをかぶったドラマーまでもいる。まったくもって稀有なロックバンドだが、その中で彼らは、BIGMAMAとはどんなバンドなのか、なにが得意なのか、どんなことができるのか、さまざまな試行錯誤や挑戦を繰り返してきた。作品ごとに違う面を見せたり、ファンを喜ばせるためのライヴ企画を行ったり。そのひとつの到達点とも言えるのがクラシックとロックを融合させた〈Roclassick〉シリーズで、この日もその中からグリーグの『｢ペールギュント｣第1組曲』をオマージュした「Perfect Gray」が披露された。金井、柿沼、安井、東出の4人がステージの前っ面に出てきて、音をぶつけ合うようにプレイしたアウトロは圧巻だった。4人を後ろから後押しするビスのドラムも力強く、ステージから溢れた衝動や感情がフロアを巻き込み、まばたきするのすら惜しいほど。さまざまなことがあったけれど、挑戦をし続けてきたバンドは、今日を区切りにまた新たな一歩を踏み出そうとしている。その意思がハッキリ伝わってきた。
彼らがずっと挑戦し続けられた要因のひとつに、目の前にいるファンの存在も大きいだろう。もっと一緒に楽しいことを、もっと一緒に夢見られることを、その思いを胸にバンドは船を漕いできた。モッシュもダイブもしたいところをグッと堪えて、手をあげて上にピョンピョン跳ねる観客。感染対策で歓声はNGだが、それでも曲が始まる時には〈わぁ！〉という声が思わず漏れてしまう瞬間は微笑ましかったし、「秘密」で一緒に息をひそめたり、「#DIV/0!」で指で数字を一緒に数えたり、曲を通してバンドとファンの距離がグッと縮まっていく。そして真っ白な照明に包まれて〈僕らは“SPECIALS”〉（SPECIALS）と高らかに唄い上げれば、バンドとファンの共犯関係のできあがり。その関係は「Neverland」「CPX」「Sweet Dreams」でさらに深まり、「We have no doubt.」へ。「CPX」とともにデビューミニアルバムに収録されていた曲。ふと、武道館のアンコール1曲目がこの曲だったなと思い出す。新たな誓いの場にふさわしい、青臭いサウンドが響いた。
そして、金井が落ち着いて語り始める。2年半前にオリジナルメンバーから脱退の申し出をされ、それでもバンドを続ける決意をして新たなメンバーを迎え、やり遂げてないことを叶えるために〈ある決断をした〉と。それが、長年所属してきたUK.PROJECTからIGNITE Managementへの移籍。そして、10月21日のフリーライヴ開催だった。フロアからはその決断を後押しするように温かい拍手が送られる。「宣誓、我々BIGMAMA一同は、挑戦し続けるバンドであることを皆さんに誓います」と伝えた金井の目は、真っ直ぐにこの先の未来を捉えているようだった。
もう一度、今の5人で武道館に立ちたい、いろんな国でライヴをしたい、みんなと一緒に夢の先を見ていきたい。だからこそ、たくさんの思い出がある場所を巣立って、未来へ向かって挑戦を続ける覚悟を決めたBIGMAMA。これからのことは誰にもわからない。もしかしたら茨の道になるかもしれない。でもこの5人なら、果てしなく広がる海原も乗り越えていけるだろう。最後に披露されたのは「荒狂曲"シンセカイ"」。そこでも彼らはこう唄っていた。〈“世界が退屈で仕方ないのです”／誰かの航路をなぞったってたどり着けはしない／新世界へ〉。これからも他のバンドにはないアイデンティティを突き詰めて、死ぬまで覚めない夢を見続けさせてくれるだろう。会場を出たあともそんな予感でいっぱいだった。
音楽と人8月号（7月5日発売）では、金井政人の単独インタビューを掲載！ 「宣誓」に込められた思い、そしてバンドの今やこれからについて話してくれています。
文＝竹内陽香
【SET LIST】
01 Let it beat
02 Little cloud
03 I Don't Need a Time Machine
04 神様も言う通りに
05 秘密
06 Strawberry Feels
07 Perfect Gray
08 beautiful lie, beautiful smile
09 #DIV/0!
10 Paper-craft
11 SPECIALS
12 The Naked King
13 Neverland
14 CPX
15 Sleeping Beauty
16 Ghost Leg
17 セントライト
18 Sweet Dreams
19 We have no doubt.
20 荒狂曲"シンセカイ"
2022年10月21日（金）
LINE CUBE SHIBUYA（渋谷公会堂）
「Hello, My Name Is」
OPEN 17:45 / START 18:30
チケット料金：無料
＊チケット代は無料ですが、入場にはチケットが必要となります。以下よりお申込みください
■BIGMAMA mobile 最速先行 → https://bigmama.tpm.jp/
■オフィシャル最速先行 → https://eplus.jp/bigmama1021-hp/
受付期間：6/19(日)22:00～7/3(日)23:59（イープラス）
