『音楽と人』の編集部員がリレー形式で、自由に発信していくコーナー。エッセイ、コラム、オモシロ企画など、編集部スタッフが日々感じたもの、見たものなどを、それぞれの視点でお届けしていきます。今回の担当である四十路編集者とnoodles・yokoさんが語り合う韓国ドラマコラム第11弾は、〈オススメの泣ける韓国ドラマ〉というテーマでお届けします。あくまでも2人の独断と偏見によるセレクトですが(笑)、いずれも名作ドラマ揃いかと!
体調はいかがですか? いくつかライヴを延期されてましたが。
「おかげさまで、もう全然大丈夫です! 元気です。振替公演も決まったので、もうすぐ案内ができると思う」
それはよかったです! あらためて今回もよろしくお願いします。今回は、〈泣ける韓国ドラマ〉というテーマでいけたらと思います。ただ毎回そうですが、私たち基準の「泣ける作品」という感じで挙げていけたらと(笑)。
「あくまでも私たち基準でね(笑)。今回のテーマに沿っていくつか作品を自分の中でピックアップしてみたんだけど、ちょっと泣いたっていう作品はいっぱいあるし、好きな作品を5つ、って言われたら、すぐ挙げられるんだけど、〈泣ける作品〉ってなると、けっこう選ぶのが大変で。だからまずは、私が観た韓国ドラマの中で、自分が記憶してる限りでダントツに泣いたなっていう作品を紹介しようかな」
それは何になりますか?
「王道中の王道であれなんだけど、『愛の不時着』」
おお、そうなんだ! 確かに後半にかけて泣き所がけっこうありますもんね。
「大抵のラヴコメ作品がそうだけど、前半は少しコミカルな部分が多いし、これもそうなんだけど、最後の3話は、ほんとよく泣いてた」
その中でも一番泣いたっていうシーンは何になりますか?
「たしか15話で、ヒョンビン扮するリ・ジョンヒョクが、嘘ついてユン・セリ(ヒロイン/ソン・イェジン扮)を冷たく突き放すシーンがあって。お互いに好きなはずなのに、セリを守るためにあえて冷淡な態度をとる、みたいな」
お互いのことが好きで大事だからこそ、相手に迷惑をかけないよう、あえて冷たく突き放そうとする。そういうシーンですね。
「そうそう! それぞれ想いあっているからこその嘘みたいな。そのぶん2人の愛の深さみたいなものも伝わってくるし……まあ、好きなのに嘘ついたり、人が変わったみたいに冷たくなったり、って恋愛ドラマでありがちな展開ではあるんだけど、このシーンはものすごく泣いたんだよね。たぶんそれって2人の演技がよかったのも大きいとは思うんだけど」
うんうん。俳優さんの演技に泣かされるっていうのはありますよね。今回、候補からは外したんですけど、『主君の太陽』の後半で、ヒロイン役のコン・ヒョジンさんが号泣するシーンがあって。その泣きっぷりに、思い切り泣かされましたもん。
「ストーリー展開もあるけど、やっぱり俳優さんたちの演技に泣かされるところはあるよね。よく韓国ドラマを観たことない友達から、『オススメって何?』って聞かれてるんだけど、今は必ず『愛の不時着』を勧めてて。やっぱり韓国ドラマの王道ストーリーだし、キャスティングもよかったし、かなりレベルの高い作品だと思うんだよね」
そしてこのドラマの主役カップルは、つい先日結婚しましたよね。
「そうだねえ。それもすごい話だよね。でもあまりにもベタすぎる作品を挙げちゃったけど……大丈夫?」
大丈夫です。私も、一番泣いた作品は、かなりベタなやつですから。
「待って、それ当てたい。そのドラマ、私も観てる? 観てない?」
観てるけど、最後までは観てないですね。
「……あ、わかった! 『トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜』だ!」
正解です(笑)。
「私は最後まで観てないけど、きっとこれは今回のテーマに合う作品なんだろうなぁとは思った。でも、そんなに泣けるの?」
これも、『愛の不時着』と同じで、後半になればなるほど泣かされました。最初の号泣ポイントが13話にあって、ラスト2話で大号泣っていう。あと〈死〉と〈輪廻転生〉というのがテーマにあるドラマなんで、ちょいちょい何気ないシーンでも泣かされましたね。
「ああ、なるほどね。もう一回、ちゃんと観てみようかな。ヒロイン役のキム・ゴウンちゃんは、一番好きな女優さんだしね。あとコン・ユ(トッケビ役)も、映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』や『82年生まれ、キム・ジヨン』で観てて、馴染みはあるし」
『愛の不時着』は、北朝鮮と韓国に住む、絶対に一緒になることができない2人が主人公じゃないですか。で、『トッケビ』も不滅の命の鬼とやがて死んでしまう人間っていう、ある意味、添い遂げることができない2人の物語なので、通ずるものがあるかなって。だから、ゾンビとか幽霊が出てくるのが苦手だとは思うんですけど、ぜひ観てほしいな。『愛の不時着』以外でも何かオススメの作品はありますか?
「あとは、前にもこのコラムで紹介してるけど、『恋のスケッチ〜応答せよ1988〜』と『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜』かな。どちらもものすごく泣いたというよりは、何度もほろりとさせられたり、とにかく切なかったりっていう作品で。あと音楽もすごくいいし」
以前、OSTの回でも紹介しましたよね。どちらも御曹司とか絶対的ヒーローが出てきたり、派手なストーリー展開があるようなものではないですけど、本当にいい作品ですよね。
「だよね! 『応答せよ〜』は、恋愛話もあるし、コミカルなシーンも多いんだけど、家族や幼なじみ同士の人間ドラマがメインになってて。温かい涙を流せる作品って感じかな。で、『マイ・ディア・ミスター』は、終始切なくてじんわり泣けるドラマで」
『マイ・ディア・ミスター』は、暗いトーンのけっこう地味な作品ですけど、回を追うごとに引き込まれていくものがあって。これは、IUと映画『パラサイト』に出てるイ・ソンギュンが主演で、〈韓国のゴールデングローブ賞〉と言われる「百想芸術大賞」のテレビ部門の作品賞&脚本賞を受賞してますね。
「前にも言ったけど、タイトルのイメージもあって、過酷な境遇で生きているヒロインのことを、足長おじさんのようにイ・ソンギュンが救ってくれるストーリーのかな?って、最初の3話ぐらいまで思って観てたのね」
私もそう思ってました。でもそうじゃなかった。
「IUちゃんの役は、貧乏で障害のあるお婆さんを抱えてて、明らかに悲惨なんだけど、でもおじさんはそういうわけではなくて。中流階級というか、大きな会社で働いていて経済的に困ってるわけではないじゃない」
そうですね。わかりやすく悲惨な環境で生きてきたのは、IU扮するヒロインのジアンだけど、ドンフン(イ・ソンギュンの役名)はドンフンで、かなりやるせない思いを抱えながら生きてるっていう。
「だから、ドラマを観ながらどっちのほうが辛い人生なんだろう?とか考えたりもしたよね。ドンフンが、仕事帰りにコンビニ袋をぶら下げて、踏切をトボトボ渡るシーンが何度も出てくるけど、それとか妙に切なくて」
ジアンの環境というのは、日本で生きてるとあんまり現実味がないところもあるんだけど、ドンフンの状況は、むしろリアルというか、観ていて感情移入しやすいところはありますよね。
「で、そんな2人が出会って、おじさんは、悲惨な状況にある子の力になってあげることで、自分は誰かに必要とされている存在であることを実感して。ジアンもドンフンや、その周りの人たちと交流するなかで、人の温かみを知っていって。色恋ではない愛情関係というか、人間として深い部分で惹かれ合って、お互いに癒されていくというね」
あと、ドンフンの周りにいる人たちも人生の悲哀を抱えていて、それもしっかりと描かれてますよね。
「そこも、このドラマのいいところだよね。だからどこで泣いたっていうよりは、とにかくひらすら切ないんだけど、最終的には心がほんのり温まって泣けるっていう。他に何かある?」
そうですね。『まぶしくて-私たちの輝く時間-』と『ディア・マイ・フレンズ』かな。これもやっぱり号泣したっていうことではないんですけど。
「『まぶしくて』は、私も入れようかなって思った! けっこうファンタジー要素が強い作品だけど、その下敷きにあるものが、けっこう重いじゃない」
ですね。時間を巻き戻せる時計が、物語のキーになっている、いわゆるタイムスリップ系の作品でありつつ、人間ドラマとしての色合いが強い作品……というか、ラスト2話で一気に見え方が変わるドラマでもあって。
「そうそう! ラスト2話の展開がけっこう肝だし、それによってより泣ける作品になってるんだけど、ただそれをここで話してしまうと完全にネタバレになっちゃうじゃない。だから紹介しづらいなぁと思って、候補から外したんだよね」
確かにそうなんですよねえ。途中からサスペンス的要素も少し入ってきたりして、その伏線回収にあっと驚かされるという。
「だから全部見終わって、この作品のタイトルが『まぶしくて』っていうことに、より切なくなって泣けるっていう……すごく深いし、泣ける作品でもあるんだけど」
いかんせん紹介しづらい(苦笑)。
「だから、〈とにかくすごくいい作品だから観てほしい!〉ってことになっちゃう(笑)。『ディア・マイ・フレンズ』はどんな作品?」
これは、韓国の大御所俳優が勢揃いしてるドラマで。さっき話した『マイ・ディア・ミスター』のドンフンのお母さん役のコ・ドゥシムさんや、『まぶしくて』で、老けてしまったハン・ジミンさんの役を演じたキム・へジャさん。あと映画『ミナリ』でアカデミー賞助演女優賞を獲ったユン・ヨジョンさんだったりが出ていて。
「ということは、演技派揃いの人間ドラマになるわけだ」
もうまさに。コ・ヒョンジョンさん扮する売れない小説家のワンが、自分の母親とその周りにいる仲間たちの人生を元に小説を書く、っていうところから始まる物語で。シニア世代の青春というか、人生讃歌みたいな作品なんですけど、コミカルでありながらも、親子間の葛藤であったり、熟年離婚や認知症や障害、介護という社会問題にもリンクしていく、味わい深いドラマなんですよね。
「へえ、今度観てみようかな。前に〈知ってる俳優の出演作を選びがち〉って話をしたけど、そういう意味では、絶対どっかで観たことある俳優さんたちばかりが出ているわけでしょ」
韓国ドラマ好きなら、絶対に観たことあるお母さん、おばあさん、おじいさん役の俳優総出演って感じですね。これも派手さは一切ないですけど、じんわり泣ける作品かなと。
「俳優さんの演技はもう間違いないわけじゃない。さっきも話したけど、泣けるドラマって、脚本や演出の良さももちろんあるけど、やっぱり俳優さんたちの演技のよさっていうのが大きい気がするんだよね」
確かに。観てる側の感情に訴えかける演技力っていうのは重要かもしれない。
「うん。いくら切ないシーンでも演技が下手だと、そこまでこっちも泣けないというかね。でも今回、どの作品を紹介するかを考えてて思ったけど、100%泣けるような設定――例えば余命○年みたいな病気ものだったり、動物ものとか。絶対に泣くだろうし、感動もさせられたりするんだろうけど、そういう作品よりも、普通のラヴストーリーや人間ドラマで泣くほうが多いし、そのほうが好きなんだなって思ったかな」
わかります。私も、「感動の!」みたいな枕詞がついた、いわゆるお涙頂戴ものは食指が動きづらいですもん。
「だから、今回挙げた作品――まあ、最初の『愛の不時着』と『トッケビ』は、思いっきり王道作品ではあるけど(笑)、どれも泣けるというか、名作ドラマとして、ぜひともオススメしたいドラマでもあるから、ぜひ観てもらえたら嬉しいな」
文=平林道子