【LIVE REPORT】
ネクライトーキー〈ゴーゴートーキーズ! 2022 野外音楽堂編〉
2022.04.10 at 日比谷野外大音楽堂
「愉快だったり笑えたりしんみりしたり……いろんな面がごちゃまぜになって、帰りに今日がいい日だったなって気持ちになってくれたら、少しでも音楽としての務めを果たせたんじゃないかなって。全部ごちゃまぜにして持って帰ってください」
アップテンポな曲でグイグイ煽っていた前半から、落ち着いた曲を立て続けに披露した後半。「続・かえるくんの冒険」を唄い終えたあと、朝日が客席に投げかけたこの言葉は、ネクライトーキーの音楽、そしてこの日のライヴを象徴しているようだった。
大阪城音楽堂と日比谷野外大音楽堂の2ヵ所で開催された〈ゴーゴートーキーズ! 2022 野外音楽堂編〉。ワンマンライヴとしては約7ヵ月ぶりで、新作を引っさげたライヴではなかったこともあり、新旧さまざまな曲が織り交ぜられたセットリストとなっていた。
東京公演の日は朝から快晴。初っ端からアッパーな曲が連続し、〈Say, CHAKAPOCOー!〉とメンバーが呼びかける「誰が為にCHAKAPOCOは鳴る」や、4つ打ちのビートが身体を揺らす「ふざけてないぜ」など、とにかくハイテンションでライヴが展開していく。サウンドもまるで日頃の鬱憤を晴らすようにパワフルで躍動的。けれど、そこから受ける印象はトゲトゲしさよりも〈今日を楽しんでやろう〉というポジティヴさだ。
そもそもネクライトーキーの音楽は、作詞作曲をメインで手がける朝日の鬱屈とした感情がベースになっているものが多い。それをバンドという形に落とし込み、もっさというキャッチーな声質を持ったヴォーカリストが外に放つことで、ネガティヴな心情がポップなものに昇華されていく。ライヴで彼らを観ると、メンバー同士で向き合う瞬間や5人そろって掛け声を入れることも多く、ロックバンド特有の一体感や人間味が、彼らのポップさやエンターテイメントに繋がっていることがよくわかる。
「ボケナスのうた」で朝日がギターをかき鳴らせば、藤田が男勝りなベースで応戦。力強いビートで土台から押し上げるカズマ・タケイのドラムや、キーボードでカラフルな彩りを加える中村のプレイにも胸が躍る。なにより、ライヴを重ねるごとにキャッチーさに力強さも加わってきたもっさの歌声も逞しい。ノリや勢いだけではなく、バンドが一体となって熱量をあげていく5人のパフォーマンス。昨年のアルバムツアーのファイナルで、バンドの演奏がずいぶんタフになったことは感じていたが、さらに磨きがかかった印象すらある。気持ちよさそうに演奏する5人の姿と表情にこちらも身体がほぐれて、自然と身体の動きが大きくなっていく。足元がしっかりしているからこそ、より高くジャンプできるし、より軽やかにステップも踏める。つまり、とことん楽しませる自信や余裕のようなものすら感じるのだ。
そんな〈陽〉のテンションに振り切ったまま、後半も駆け抜けるかと思ったが、実際は違った。朝日がジャズマスターをかき鳴らした「豪徳寺ラプソディ」からのブロックは、それまでのハイテンションから一呼吸置くように、歌をじっくり聴かせる曲が並んだ。とくに鍵盤とヴォーカルだけの「思い出すこと」、もっさのエモーショナルな歌と歪んだギターが絡み合う「大事なことは大事にできたら」、そして「続・かえるくんの冒険」の流れは、動くことすら忘れてステージにグッと引き込まれたほど。ネクライトーキーの中でも朝日の内省的な部分がごろっと露出したような曲からは、やるせなさや無力感が切々と伝わってくる。
盛り上がるようなアッパーな曲だけでセットリストを組むこともできただろうし、もう少し聴かせる曲をしぼっても緩急をつけることはできたはずだ。でも、「続・かえるくんの冒険」で〈いつか僕が嘘も要らないほど強い人になれたなら/こんなこと何も迷わずに前だけ見て進むんだろうか〉と朝日が綴っているように、前だけを見て進めないのがネクライトーキーなんだろう。生きていれば楽しいこともあるし、辛いことやうまくいかないことも絶対にある。その瞬間を無視できるほど無邪気ではいられないし、マイナスな感情ばかりに目がいきがちだったりもする。しかし、弱さや辛い日々と向き合うからこそ、楽しい瞬間を愛しく思えたり、全力で味わいたいと感じるもの。「全部ごちゃまぜにして持って帰ってください」という朝日の言葉のとおり、楽しさも切なさもすべてが生きている実感として、どちらにも寄り添ってくれるのがネクライトーキーの音楽なのだ。
ちなみに冒頭のMCの途中で朝日が噛んでしまい、「しまらんなぁ!」と自分でツッコミを入れ、「そんなもんよ。人間そんなもん」ともっさがフォローする場面があった。ステージのうえでカッコつけられない姿も、それを笑ったりギャグにするのではなく優しく受け止める姿も、どちらもネクライトーキーらしい、人間臭さと温かさがにじむやりとりだった。
本編を終え、アンコールで再び登場した5人。朝日が『MEMORIES 2』のリリースを伝えると大きな拍手が鳴り響いた。これは朝日がボカロP・石風呂名義で発表していた過去の曲をバンドアレンジしてパッケージするもの。ひとりで作った音楽を誰かと鳴らしたかった朝日の思い、当時の鬱屈としていた感情がまたひとつ昇華されていくんだろう。今のタフな音像でどんなふうに石風呂名義の曲が生まれ変わるのか。それはきっとまた、私たちを愉快にさせたり少し切なくさせたり、いろんな気持ちにさせてくれるはずだ。
文=竹内陽香
写真=かわどう
【SET LIST】
01 Mr.エレキギターマン
02 はよファズ踏めや
03 北上のススメ
04 ジャックポットなら踊らにゃソンソン
05 誰が為にCHAKAPOCOは鳴る
06 ふざけてないぜ
07 魔法電車とキライちゃん
08 涙を拭いて
09 踊る子供、走るパトカー
10 夕暮れ先生
11 ボケナスのうた
12 カニノダンス
13 こんがらがった!
14 許せ!服部
15 豪徳寺ラプソディ
16 朝焼けの中で
17 思い出すこと
18 大事なことは大事にできたら
19 続・かえるくんの冒険
20 気になっていく
21 めっちゃかわいいうた
22 オシャレ大作戦
23 俺にとっちゃあ全部がクソに思えるよ
ENCORE
01 君はいなせなガール
02 遠吠えのサンセット
SELF COVER MINI ALBUM『MEMORIES 2』
2022.06.15 RELEASE
01 君はいなせなガール
02 魔法電車とキライちゃん
03 ロック屋さんのぐだぐだ毎日
04 深夜の街にて
05 午前3時のヘッドフォン
06 壊れぬハートが欲しいのだ
07 サカナぐらし
08 だれかとぼくら
LIVE INFORMATION
〈ネクライトーキー「MEMORIES 2」リリースツアー「ゴーゴーメモリーズ!2022 夏」〉
2022年6月25日(土)千葉県 千葉LOOK
2022年6月30日(木)岡山県 YEBISU YA PRO
2022年7月2日(土)広島県 広島セカンド・クラッチ
2022年7月3日(日)香川県 DIME
2022年7月9日(土)石川県 Kanazawa AZ
2022年7月10日(日)長野県 ALECX
2022年7月15日(金)北海道 札幌PENNY LANE24
2022年7月23日(土)長崎県 DRUM Be-7
2022年7月24日(日)福岡県 DRUM Be-1
2022年7月30日(土)青森県 青森Quarter
2022年7月31日(日)宮城県 darwin
2022年8月4日(木)大阪府 BIGCAT
2022年8月5日(金)愛知県 THE BOTTOM LINE
2022年8月18日(木)東京都 LIQUIDROOM
【オフィシャルTOUR先行】 ※抽選
◎受付期間:2022年4月15日(金)15:00~4月24日(日)23:59
→https://l-tike.com/st1/necrytalkie2022-hp
※スタンディング
【チケット料金】前売り:¥5,000(税込) / 当日:¥ 5,500(税込)
【一般発売】受付期間:2022年5月15日(日) 10:00