一時は家族みたいな付き合いしてたはずなのに、関係切れたら他人、って嫌なんですよ。気持ちはずっと同じなので
今は楽しそうじゃないんですか?
「苦しそうです(笑)。2年前の〈Trigger In The Box〉は逹瑯が率先してイベントをプロデュースしてくれたけど、もう二度とやらないって言ってました(笑)。この会社は土壇場にならないと動かないですからね」
社長が言わないでください(笑)。
「日程なんて1年前から12月27日って決まってるのに、誰もこういうことやりましょう!とか言ってこない。どちらかというと手を挙げたもん負けなんです(笑)。今年は本当に酷かったな。今リモートで全体会議やってますけど、73人の関係者が参加してるわけですよ。その中で『はい、じゃあ今年のJACK IN THE BOX、どうするんだ?』って言うんだけど、誰からも反応がない(笑)。それが3ヵ月くらい続いて。どうすんだって一斉メールしても、誰も返信してこない(笑)」
で、ギリギリになって誰かが手を挙げる?
「いや、誰も(笑)。だからもう、40周年だから区切りがいいし、今年でJACK IN THE BOXは終了だな!と宣言したら、なんかホッとした空気が流れたんですよ。それにまたムカついて(笑)。そしたら逹瑯のソロを手伝ってくれている外部のスタッフから『そういう伝統あるイベントは止めないほうがいいんじゃないですか?』って声が上がって。よし、じゃあそういうなら松永さんよろしく!(笑)」
あははははは!
「でも今年は確かに大変で。コロナ禍でキャパが半分だから予算的にも大変。さらに中心になるのはどうしてもMUCCなわけですけど、今年はSATOちが脱退して、出れるかどうかもわかんない。MUCCなしでJACK IN THE BOXは無理ですよ、みたいな話になって、またどよーんとする。それが8月くらいまで続きましたね。そんな状態でいた頃、Petit Brabanconが形になり始めたんです。京くん(DIR EN GREY)とyukihiro(L'Arc~en~Ciel)が中心になって4年くらい前から温めてたんですけど、武道館のJACK IN THE BOXで初ライヴという案をメンバーに提案したら好感触で。これが見えたところから、逹瑯のソロ、シドのゆうやがプロデュースして始まる魅音。この3つがJACK IN THE BOXの今後、もっと言うとこれからのデンジャークルーを考えるうえで重要なキーになったんです」
デンジャークルーの新しい方向性というか。
「そうですね。時代は動きが早いんですよ。私が事務所を始めたきっかけの、REACTIONや44MAGNUM、kyoちゃんやL’Arc~en~Cielまでかな。その世代と、事務所の連中が頑張って育て上げてきたMUCCやシド、DEZERT、ノクブラ(NOCTURNAL BLOODLUST)の世代。今までこの2つの世代が絡み合って、このイベントを形にしてたわけですよ。でもそれ以外に、時代を意識したグループが必要じゃないかと思っていて。その2つの世代のバンドは、ドラムはツーバス組んで、マーシャル積み上げて、ケーブル引いて大きな音を出すバンドサウンドがほとんどなんだけど、そういうアーティストだけでいいのか、と」
なるほど。
「マネジメントのあり方も変わってきましたしね。今までは原石を育てて、メディアに出して、お金をかけてプッシュしていくやり方でしたけど、時代はそうじゃなくて、アーティストが自分で再生回数を稼いで、音源制作もやれてるんです。そういう人たちとどうコンタクト取って、どういうものにするか話し合って、違う層にアピールしていく。こういうスタイルになる。魅音も、事務所とは関係ないところでゆうやが知り合って、2人でやりとりして、音源作ったところで『社長、これマーヴェリックでやれます?』って聞いてきて」
そういう新しい時代のやり方を。
「JACK IN THE BOXでも提示しようと。逹瑯もソロをやるモチベーションが形になったしね。SATOちが辞めたことはそのきっかけにはなってるとは思うけど、彼はどこかで意識してたはずなんですよ、それが出てきたことは非常にいい……あ、YUKKEは何かすんの?って書いといてください(笑)」
あはははははは。
「だから前は俺やスタッフが企画して、強引に形にしてたけど、もうそういう時代じゃないんですよ。所属アーティストが、自分の中に沸いて出てきたものを形にする場所、みたいなイメージ。逹瑯はソロをやるにあたって、自分でマネージャーを連れてきて、彼とやりたいと言ってきた。そういうのがいい。これからのアーティストは、マネジメントにおんぶにだっこじゃなくて、自分が何がしたいか、それをやるにはどうしたらいいのか、セルフプロデュースしていかないとダメなんですよ」
プロデューサー大石征裕は寂しくないですか。
「全然寂しくないですね! 俺は楽したいから。JACK IN THE BOXも、自分の知らないうちにラインナップがまとまって、スタッフから『大石さん、たまには観に来てくださいよ。メンバー寂しがってますよ』って言われたい(笑)」
ラストの恒例セッション、MDC SUPER ALL STARSも、今年はD’ERLANGERのTetsuさんが仕切るんですよね。
「kyoちゃんが病気療養中なんですよ。僕にとってはそれが大きい。世話になってきた彼に、早くこのステージに戻ってこい、という俺なりのメッセージを送りたくて、まずD’ERLANGERには出てほしかった。kyoちゃんのためなら出るヴォーカルはいるから。で、それが決まったあと、40周年というこの区切りに、アーティスト側から見たデンジャークルーがあってもいいんじゃないか、と思ったんですよ。スタッフがお願いしてもミュージシャンはなかなか動かないんですけど、Tetsuさんが『これをやってくれませんか』って丁寧にお願いしたら、誰もノーって言わないし(笑)」
はははははは。
「だからTetsuさんが、セッションはマーヴェリックに所属しているか、所属したことがあるアーティストで構成したいと。で、曲を決めてくれて」
ちゃんと思いが伝わっているということじゃないですか。
「嬉しいですよ。なんで社員には伝わらないんでしょうね……」
原因がわからなくはないような……でも、40周年でこのイベント止める!とは言ったものの、まだちゃんとやるわけですよね。
「あれは脅しです(笑)。でも、こんなに無理してやる必要あるのか、とは思ってましたよ。だから30代が仕切ってくれて、40代以上が何もしなくても回るイベントになったら嬉しいんですよ」
じゃあ適任はDEZERTの千秋ですね。
「そうそう。千秋はね、コロナで結局実現しなかったんだけど、今年を仕切るはずだったんですよ。そういう若手に担ってもらって、そこに時代の空気を自然に入れて、そして40年の間、この事務所がお世話になった人たちを忘れないでいる。そういうイベントになればいいと思うんですよ。そういう気持ちを受け継いで……なんだか遺言みたいになってきましたが(笑)」
ははははは。
「JIMMYさんは永遠に出るっておっしゃっているので、それはお願いします。なんでもそうなんですけど、一緒にやってきた人たちじゃないですか。一時は家族みたいな付き合いしてたはずなのに、関係切れたら他人、って嫌なんですよ。もちろん事務所だから、解散してもずっと面倒を見るってわけにはいかないんですけど、気持ちはずっと同じなので」
恩返しをしたい、と。
「そう、恩返し! そういう気持ちは忘れたくないというか、いい意味で行く末をちゃんと見ていきたいんですよね。44MAGNUM、REACTION、GRANDSLAM、D’ERLANGER、DIE IN CRIES、全部。L’Arc~en~Cielは……まだ現役バリバリで、売上げもすごいので、恩返しなんてとんでもないですが(笑)」
そういうのが大石さんとJACK IN THE BOXの根っこにある一つですよね。
「だから続けてくれるといいなと思います。打ち上げもまた、初年度みたいに伝説になるような打ち上げをやりたいものですが」
それは受け継がなくてもいいかと(笑)。
「でも寂しいじゃないですか。親睦を深めようと、コロナの前は、事務所の1階の会議室で呑んでたんですよ。帰る社員を捕まえて『仕事終わったのか? まあちょっと呑んで行きなさい』って。でも今は誰も呑んでくれないし」
73人の社員から誰も返信来ないのがわかる気がする……。
「総務から怒られて、社内で呑み会禁止になりました(笑)」
文=金光裕史
〈DANGER CRUE 40th Anniversary JACK IN THE BOX 2021〉
12月27日(月)日本武道館
OPEN 14:00 / START 15:00
当日券 14:00~会場 西口正面 当日券売り場にて販売
出演者:
Petit Brabancon
NOCTURNAL BLOODLUST feat.宮田大作(a crowd of rebellion) / Kaito(Paledusk)
魅音(ミオ)
逹瑯 DEZERT feat.暁(アルルカン) / 来夢(キズ)
fuzzy knot
44MAGNUM feat.高崎晃(LOUDNESS) -JACK IN THE BOX SPECIAL VERSION-
MUCC feat.GRANRODEO
D'ERLANGER (CIPHER / SEELA / Tetsu) feat.HYDE / INORAN(LUNA SEA) / 逹瑯(MUCC)
MDC 40th Anniversary SUPER ALL STARS
are
Paul(44MAGNUM)/Jimmy(44MAGNUM)/STEVIE(44MAGNUM)/jack/ YUKI(REACTION)/CIPHER(D'ERLANGER)/SEELA(D'ERLANGER)/HYDE/NAOKI(REACTION)/ 逹瑯(MUCC)/ミヤ(MUCC)/YUKKE(MUCC)/Shinji(シド)/明希(シド)/ゆうや(シド)/ 千秋(DEZERT)/SORA(DEZERT)/Valtz(NOCTURNAL BLOODLUST)/Natsu(NOCTURNAL BLOODLUST)/ Tetsu(D'ERLANGER)
and more…