『音楽と人』の編集部員がリレー形式で、自由に発信していくコーナー。エッセイ、コラム、オモシロ企画など、編集部スタッフが日々感じたもの、見たものなどを、それぞれの視点でお届けしていきます。今回の担当である四十路編集者とnoodles・yokoさんが語り合う韓国ドラマコラム第10弾は、韓国では年末恒例行事として開催されている演技大賞に倣い(笑)、〈極私的・韓国ドラマアワード2021〉と題して、2人が今年観たドラマを紹介します。
今年ラストということで、〈極私的・韓国ドラマアワード2021〉と題して、新作・旧作問わず、私たちが今年観たドラマを紹介していけたらと思います!
「1年がもう終わるなんて早いねえ。今回は、どういう形で紹介していく?」
やはり演技大賞に倣って、新人賞、ベスト助演賞(男性部門・女性部門/各1名)、優秀作品賞(3作品)、ベスト主演俳優賞(男性部門・女性部門/各1名)、大賞(優秀作品賞の中から1作品)という感じでいきましょう。あとこれまた演技大賞ではおなじみの〈ベスト・カップル賞〉も挙げていけたらと。まずはまずは新人賞からですかね。
■新人賞■
チョン・ホヨン(『イカゲーム』/カン・セビョク役)yoko選
タン・ジュンサン(『ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士です』/ハン・グル役)ヒラバヤシ選
『イカゲーム』のチョン・ホヨンさんは、どんな方なんですか?
「彼女はこのドラマで注目されて、韓国でも彗星の如く現れた新人っていう感じで。それこそ一夜にしてインスタグラムのフォロワーが、何10万人になったみたいな。ところで『イカゲーム』は観た?」
観てないです。すごく話題になりましたけど、基本的に『カイジ』みたいなデスゲーム系の作品、私あまり好きじゃないんですよね。映画『CUBE』がギリギリ……。
「そっか。私、『カイジ』とか全然知らなくて、友達に言われて、〈そうなんだ〉ってあとから知った感じで(笑)。でもね、すごい面白かった! 全9話だし、もう一気に観ちゃった。もちろん主役のイ・ジョンジェは有名だし、すごい存在感あるんだけど、彼女も、ものすごくインパクトのある演技をしていて。モデル出身らしいんだけど、今後、期待の女優さんかな」
なるほど。私の新人賞は、『ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士です』のタン・ジュンサンくんです。このドラマは、自閉症の男の子と、イ・ジェフン扮する、彼のおじさんで前科のある主役が、遺品整理士の仕事を通して距離を縮めていくっていうもので。
「イ・ジェフンって、映画『建築学概論』に出てるよね。この映画、いいよねえ」
いいですよねえ。ヒロインをスジちゃんが演じてて、その相手役でしたね。たぶんこの映画のヒットで注目されるようになったと思います。で、自閉症の男の子を演じたのが、タン・ジュンサンくんで。すごい演技上手いなぁと思って調べたら、『愛の不時着』にも出てたんですよ。
「え、そうなの!? 何役で?」
ヒョンビンの部下の5人組がいたじゃないですか。そのマンネ(末っ子)兵士役で。その時は、全然印象に残ってなかったんですけどね。でも、このドラマでの演技は本当に素晴らしかった。あと作品も、派手さはないんですけど、サブストーリーとして、遺品整理に訪れる家の持ち主=亡くなった人が、どんな人生を過ごしてきたのか?というのも描かれていて、味わい深いドラマでした。
■ベスト助演賞・男性部門■
チェ・ウシク(『恋するパッケージツアー~パリから始まる最高の恋~』/キム・ギョンジェ役)yoko選
ク・ギョファン(『D.P.-脱走兵追跡官-』/ハン・ホユル役)ヒラバヤシ選
チェ・ウシクは、映画『パラサイト』に出てる俳優さんですね。
「そうそう。このドラマの主役は、CNBLUEのジョン・ヨンファとイ・ヨニちゃんなんだけど、韓国ドラマによくある、主役カップルとは別の、サブカップルの彼氏役で出ていて。『パラサイト』以降、かなり注目されてるけど、主役と絡みのある、ちょっと三枚目的な役を演じてることが多いし、彼に助演男優賞を差し上げます!」
ちょうど前回のコラム取材の際、このドラマを観たって言ってましたよね。
「そう。けっこう前の作品ではあるんだけど、すっごい面白かった。最初は、チェ・ウシクくんが出てるなと思ってなんとなく観始めたんだけど、ちょうどその頃、自分の中でフランス・ブームだったから、全編フランスロケっていうのもあったし、ストーリーも良くて、かなりハマって(笑)。ヒラバヤシちゃんの助演賞は誰?」
『D.P.-脱走兵追跡官-』のク・ギョファンですね。このドラマで初めて知ったんですけど、すごくいい味出してる役者さんで。ドラマの主役はチョン・ヘインで、脱走兵を捕まえる軍隊内警察みたいな部署がメインの物語なんだけど、チョン・ヘインとコンビを組む先輩役で出ているんですね。コミカルな演技も、シリアスな表情も絶妙で。しかも『D.P.〜』のシーズン2の制作が決定したってニュースが最近出たので、今からちょっと楽しみですね。
■助演賞・女性部門■
チョ・ヨジョン(『凍てついた愛』/ソ・ウンジュ役)yoko選
シン・ヒョンビン(『賢い医師生活2』/チャン・ギョウル 役)ヒラバヤシ選
「女性部門がなかなか思いつかなくて……一瞬、該当者なし、って思ったんだけど(笑)、助演といえば悪役の人が選ばれることも多いし、『凍てついた愛』のチョ・ヨジョンさんかなって」
この人も『パラサイト』に出てますよね。
「そうそう。お金持ちの家の奥様役の人ね。『凍てついた愛』でも、上流階級一家の奥様役なんだけど、けっこう強烈な役で。そういえば、さっき『愛の不時着』の話が出たけど、このドラマでチョ・ヨジョンさんの夫役の人も『〜不時着』に出てるオ・マンソクさんで。このドラマでも、すっごい嫌な感じの役を演じてる(笑)」
そうなんだ! 『〜不時着』だと、ヒョンビン扮するジョンヒョクと対立する少佐役を演じてましたよね。で、私の助演賞の女性部門は、『賢い医師生活2』のメインキャストであるユ・ヨンソク扮するジョンウォンの彼女役のシン・ヒョンビンさん。
「今、画像見てみたけど、すごいキレイな人だね」
そうなんですよ! でもドラマでは、あまり外見に構わないタイプのキャラクターで。無造作に一本結びしたヘアスタイル&メガネでスッピンに近い感じなので、実際の彼女の姿とのギャップに驚くっていう(笑)。
「でもそれだけ役作りもしっかりしてる、いい俳優さんなんだね」
ですね。ちなみにジョンウォンとギョウルは、『賢い医師生活2』ファンの間で〈ウインターガーデン・カップル〉って呼ばれてるんですけど、2人のシーンもラヴラヴ度高めで、そこもまた良かったんですよねえ。
「え、なんで〈ウインターガーデン〉なの?」
どうやら韓国語でジョンウォンは庭園、ギョウルは冬っていう意味らしく、それで〈ウインターガーデン〉です(笑)。
■ベストカップル賞■
ジョン・ヨンファ&イ・ヨニ(『恋するパッケージツアー~パリから始まる最高の恋~』/yoko選)
キム・デミョン&アン・ウンジン(『賢い医師生活2』/ヒラバヤシ選)
キム・ソノ&シン・ミナ(『海街チャチャチャ』/yoko&ヒラバヤシ選)
続きましてベストカップル賞です。まずは、『恋するパッケージツアー』のジョン・ヨンファ&イ・ヨニについてお願いします!
「ドラマの役柄的な話ではあるんだけど、2人の距離感とか、すごくピュアな雰囲気のカップルで良かった。しかもフランスの風景に負けない、美男美女っていう(笑)。ヒラバヤシちゃんは『賢い医師生活2』から選んでるけど、さっき言ってた〈ウインターガーデン〉カップルじゃないんだ(笑)」
や、その2人もいいんですけど、2シーズンかけて徐々に距離が近づいていった、このカップルが本当に良くて。アン・ウンジン扮する産婦人科のフェローであるミナは、シーズン1からキム・デミョン扮する産婦人科医のソッキョンにずっとアタックしていて。
「最初は、片思いだったの?」
そうなんです。それがシーズン2に入って徐々にソッキョンが心を開き、第11話だったかな? ついに両思いになれた時は、思わず画面の前で「やった! 万歳〜!」って声あげてました(笑)。
「あははははは」
そして2人が選んだ『海街チャチャチャ』のキム・ソノ&シン・ミナ。
「もうこれは文句なしのベストカップル賞だよね!」
異論なしです! このカップルは本当に良かった。最初にキャスティングを見た時、いくらキム・ソノが人気急上昇中とはいえ、シン・ミナはトップ女優だし、格の違いとかが見えてきちゃったりするのかな?とか思ってたんだけど、全然そんなこともなく。
「うん。この2人の組み合わせは、本当に良かった! 作品も、ほのぼのとしたラヴストーリーであり、温かい人間ドラマでもあって、本当に良かったし。これはみんなにオススメしたい作品だな」
■優秀作品賞■
『イカゲーム』(yoko選)
『凍てついた愛』(yoko選)
『海街チャチャチャ』(yoko&ヒラバヤシ選)
『ストーブリーグ』(ヒラバヤシ選)
『賢い医師生活2』(ヒラバヤシ選)
ではここで、優秀作品賞にいきましょう。
「優秀作品賞の中から大賞が選ばれる感じだよね」
そこも演技大賞に倣って、その形でいきましょう。
「了解。じゃあ、まずは『海街チャチャチャ』でしょ。あとは『イカゲーム』、『凍てついた愛』かな。『凍てついた愛』は、いじめとか格差社会がテーマの復讐劇だから、かなり重苦しいものではあるんだけど、いい役者さんが揃っててたし、もう目が離せないストーリー展開で。夢中になって観れた作品だったんだよね」
私も『海街チャチャチャ』は入りますね。あと『賢い医師生活2』と『ストーブリーグ』。これは、主役がナムグン・ミンで、優勝請負人と呼ばれるゼネラルマネージャーが、弱小プロ野球チームを立て直していくっていうストーリーではあるんですけど、『未生-ミセン-』みたいな、働く人たちの物語で。ストーリー展開、脚本もすごく良かったんですよね。
「やっぱストーリー展開のテンポ感とか、脚本の良さっていうのは大事だよね」
■ベスト俳優賞・女性部門■
シン・ミナ(『海街チャチャチャ』/ユン・ヘジン役)yoko選
チョン・ミド(『賢い医師生活2』/チェ・ソンファ役)ヒラバヤシ選
「シン・ミナさんのことは、『僕の彼女は九尾狐』で知って。本当に可愛らしい役だったし、ステキな女優さんだなって思ってたんだけど、そこから10年くらい経ってるはずなのに、相変わらず可愛くて! もちろん顔立ちも可愛いんだけど、それ以上に人間的に圧倒的に愛らしいところが、この人の魅力だなと思ってて。そんな彼女の人間力を『海街チャチャチャ』で改めて確認できたな」
私が選んだチョン・ミドさんは、もともとミュージカルで活躍している俳優さんで。ちょい役で韓国版の『マザー~無償の愛~』に出てたぐらいで、本格的なドラマ出演は、『賢い医師生活』が初めてになるんですよね。
「そうなんだ。その作品が、大ヒットしたわけだ。メインの5人のうちの唯一の女性だよね」
そうです。5人は、99年にソウル大学の医学部に入学した同期で、一緒にバンドをやってるんですけど、彼女はものすごい音痴という役柄なんですね。だからものすごい調子っぱずれな唄い方をしてるんですけど、実際はめちゃくちゃ歌が上手い。
「ミュージカル女優だもんね」
それこそOSTで透明感のあるステキな歌声を披露してますけど、ドラマではめちゃめちゃ音痴な演技をしてるのが本当にすごいなって思いましたね。
■ベスト俳優賞・男性部門■
キム・ソノ(『海街チャチャチャ』/ホン・ドゥシク)yoko & ヒラバヤシ選
そして、男性部門は満場一致ですね!
「でも彼がブレイクしたきっかけは、『海街〜』よりも『スタートアップ: 夢の扉』になるのかな? その流れで、『海街チャチャチャ』の主演に抜擢された感じではあるじゃない」
ですね。『スタートアップ~』では、ヒロインを見守る二番手男のハン・ジピョン役で。
「前回のコラムで話題に出たけど、主演のナム・ジュヒョクを食うほどの(笑)、魅力的な存在感を放つ演技をみせていて。そもそも私の好みのタイプの顔でもないんだけど、やっぱオッパ感はすごくあるじゃない。それが『海街チャチャチャ』でもしっかり出てて」
私たちが大事にしている〈オッパ感〉については、パク・ソジュン回を見てもらえたらと(笑)。
「そうね(笑)。今回、作品にも役にも恵まれたっていうのもあるけど、これを撮影している時の彼は、人生の上昇気流に乗ってたと思うのね」
どんどん人気も出て、いい作品にも恵まれ。
「そうそう。まさに旬の俳優さんだなっていうオーラが出てたというか。本当に人としてキラキラ輝いてて。さらに魅力的になったよね」
本当に適役だったし、彼の代表作になりるようなものでしたよね。ただ『海街チャチャチャ』の放送終了後に、スキャンダル記事が出てしまい……。
「ねえ! でもスキャンダルと言っていいのかどうかって感じではあるじゃない」
ですね。これに関しては、最低最悪な女に引っかかってしまったな、っていうふうに私は思ってます。まあ、実際はどうなのかはわからないけど、彼女側から逆恨み的な報復をされたというか。
「しかも最終回が配信された翌日ぐらいに記事が出てさ。これはちょっと可哀想だなって思ったな。でも韓国内の反応は、その後どうなってるんだろう?」
最初の対応が遅かったというのもあって、かなりバッシングされましたけど、続報が出るなかで、彼女のほうにかなり非があるという流れになっていて、削除されたり非公開になってたCM映像もいくつか復活したり、映画も1本決まったりして。なので、当初よりは少し状況は良くなってはいるみたいですけど。
「そっか。トップスターの地位を目の前にしてどん底に落ちるみたいな、〈こんな人生ってある!?〉って感じで、もう彼のキャリアは終わったか……って思ったけど、最悪の状況は逃れたんだね。まあ、今までの勢いを取り戻すことは難しいとは思うけど、本当にいい役者さんだし、今後も頑張ってほしいよね。それにやっぱり『海街チャチャチャ』のホン班長は、最高でした!」
■大賞■
『イカゲーム』 (yoko選)
『賢い医師生活2』(ヒラバヤシ選)
ではいよいよ大賞発表といきましょうか。まず先に私の2021年ドラマ大賞を発表しますね。たぶんyokoさんの予想通りだとは思いますが、『賢い医師生活2』が大賞です!
「だよねー。もうさ、今回、この作品からどれだけ選んだって感じだもん(笑)。でもそれだけよかったってことなんだよね」
そうですね。元々、2シーズンものとして制作されたドラマなんですけど、できればシーズン3もぜひやってほしい!と思うくらい。
「好評だったから続編もあるんじゃないの?」
いや、シーズン2は、1からのいろんな伏線を回収して終わったんで、たぶん次はない気がしますね。yokoさんの大賞は、やっぱ『海街チャチャチャ』?
「そう思うだろうけど、大賞は……『イカゲーム』です!」
えっ、そうなの!? 意外!
「確かにこれは、私たちが好きな韓国ドラマの路線ではないじゃない。正直、『海街チャチャチャ』と迷ったんだけど、でも知ってる俳優さんがほとんど出てないのに、ほんと久々に2、3日で一気に観ちゃったくらい夢中にさせてくれた作品だったんだよね、『イカゲーム』は。だから、これが大賞かな」
なるほど。
「空気感としては、映画『パラサイト』もそうだけど、〈ザ・韓国〉的な重苦しい作品ではあるけど、そういう作品には優れたものが多いし、これもそのひとつになるのかな。まあ、なんか悔しいんだけどね!(笑)。話題に乗せられてしまってる感じに思われそうだから」
あははははは。苦手なジャンルの作品だけど、観てみようかな。
「面白いから観てみてよ。でも今年はあんまり韓国ドラマを観れてなくて」
夏頃、アメリカドラマにハマってましたよね。
「そうそう。そこで3、4作品観たんだよね。来年はもう少し韓国ドラマを観ようかな」
私ももう少し観れたらいいなって思ってます。ということで2021年もありがとうございました。また来年もぜひよろしくお願いします!
「2022年もステキなドラマに会えるといいね! まだちょっと早いけど、良いお年を〜」
文=平林道子
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