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東京少年倶楽部、自主企画で新たな誓い。過去を抱きしめ彼らが向かう先とは

text by 宇佐美裕世

【LIVE REPORT】
東京少年倶楽部〈東西自主企画2021〉
2021.11.15 at 新代田FEVER



音楽に導かれた少年は、音楽で導く側になった事実をまざまざと実感した時間だった。


東京少年倶楽部が11月15日に開催したワンマンライヴ〈東西自主企画2021〉。会場である新代田FEVERはバンド史上最大のキャパということ、そしてこの公演は延期の末にようやく開催されたことも相まって、バンドも観客も並々ならぬ思いや期待を抱えていたことは言うまでもないだろう。観客といえば、バンドと近い世代の若年層が多いことも印象的だった。学校帰りだろうか、制服を身に纏ったまま友達同士で来ている人もいれば、大学生と思わしきグループもいる。いずれにしても、今か今かと開演を待ち侘びる彼らから滲み出る高揚感には、憧れのバンドと対峙するための準備は万端だ!という心情が見て取れるようで、こちらまで微笑ましい気持ちになった。


開演時間を迎え、ステージ上に登場した4人。「最高の夜にしよう!」と松本幸太朗(ヴォーカル&ギター)が叫ぶと、熱のこもった演奏で「夢中飛行」を披露した。〈生きたいと願うなら今だ/命のかけら空に溶けた/今日がどうか 優しい日になるように〉〈大事な人を見つけたら/時間 育てて未来に遺したいんだ/いつだってそう ここじゃないどこかへ〉と魂を振り絞るように唄う松本、全身全霊で音を鳴らす三好空彌(ベース)、gyary (ギター&キーボード)、古俣駿斗(ドラム)の3人からは、今日という日の一瞬も逃さず、今の自分たちをぶつけたいという気迫だったり、この4人でしか作れないものや生み出せない時間を徹底的に楽しんでみせる、といった余裕も伝わってきた。


しかし、時折憂いの感情が顔を出すのが東京少年倶楽部らしい。この日のMCでも、松本は今を100%楽しむことができないことも正直に打ち明けていた。「今、すごく嬉しいし幸せです。でも、やっぱりどこか淋しいし孤独で。その存在を無くしてくれたのが、昔はロックという存在だったんです。それを自分が唄う側になったことで、救いだった音楽に近づき過ぎたがゆえに、悲しむこともあって……でも、俺は信じてます。音楽で誰かを救えることを」。音楽に対して生真面目すぎるくらい生真面目に向き合う彼らしい発言だが、不器用な自分に打ちのめされるだけでなく、そんな自分も受け入れながらも進んでいく姿勢には、東京少年倶楽部が大きな進化を遂げる気配も感じられた。


短期間のあいだに、彼らが、特に松本が自分自身を更新していく様には改めて圧倒された。初めて彼にインタビューをしたのは約1年半ほど前だが、極端に言えば、その時の彼はステージ上にいる人物とは別人のようだった。言葉を発する時も語尾が尻すぼみだったり、どこか自信がなさそうだったが、今となっては「楽しい!」とか「思いっきり遊ぼうよ!」と無邪気な言葉をストレートに観客に投げかけることだってできている。きっと、少しずつだが自信がついてきたのだろう。かつての彼は自己肯定感を高めていく過程にいた。実際、当時のインタビューでは、「(ライヴに)お客さんが来てくれるようになったり、最近加入したgyaryとかいろんな人に出会ったことで、過去の自分を肯定できるようになってきて。昔根強く持っていた否定感みたいなのが薄れていく感覚があります」とも語っていた。そして今はというと、もちろん過去の自分を引きずる瞬間はゼロではないと思うが、それよりも、自分にしかできないやり方で音楽を追求したり、そこから何かを感じ取ってもらうことに重きを置いているように感じられる。


世の中の大半の人は〈生きやすさ〉を優先して、割りきれない感情だったり、足掻いてもどうにもならないことに対して、人生のどこかで見切りをつけて、目を背けて生きていけると思っている。しかし、それができない人間の一人が松本である。彼自身、そんな自分に嫌気がさしたこともあったと語っていたが、そんな彼を救ったのが音楽だったという。10代の頃に手にしたロックンロール。その出会いは、彼に生きがいをもたらした。自分の中にある鬱屈とした感情を歌詞にして、最初は一人で、やがては仲間と共に表現していった。そして、メンバーやバンドに関わる人、自分たちの曲を愛してくれる人たちによって生まれた居場所――そういった不器用な人間なりに歩んでこれた経験があるからこそ、彼がこの日よく口にしていた「音楽で誰かを救いたい」という言葉は薄っぺらいものには聞こえなかったし、終盤に語られた〈誓い〉も信じられると思った。


「何があっても、音楽だけは守っていきます。俺を救ってくれた音楽との約束。俺たちは日本でヤバいロックバンドになります」


〈ヤバい〉という表現に込められているのは、あくまで憶測にすぎないが、自分の殻を破り、持ち合わせているもの全てを音楽へと昇華して、音楽で誰かを救いたいという気持ちではないだろうか。ラストに披露された、彼の生まれ年をタイトルに冠した「1998」の〈疲れたまま歩いて行かなくちゃいけない 不安定な道の上でも/それでも笑ってやろうぜ〉という一節を力強く唄う松本を見てそう感じたのと同時に、彼らは今日みたいにいくつもの誓いを重ねて瞬く間に大きくなっていくのだろう、と確信に近い思いが自分の中に湧き上がってきた。


公演終了後、会場から駅までの道のりで、興奮気味に今日の感想を語り合う高校生と思わしき2人組がいた。彼女たちの目はとても輝いていて、漠然とだが、音楽の良さやそこから得た力というのは、こんなふうに継承されていくのだと思った。松本はこの日の公演で、「憧れのロックスターみたいに唄えているかわからないけど」と何度か呟いていたが、その点については「大丈夫だよ」と伝えたい。あなたの歌や思いは、この日、会場に集まった人々の中でずっと輝き続けるはずだから。


文=宇佐美裕世
写真=toya


【SETLIST】
01 夢中飛行
02 転がる石になる
03 lolin’ lolin’
04 fripper
05 僕の中に住んでる女の子
06 白昼堂々
07 夕方
08 ばいばい
09 i hate you
10 新曲
11 踏切
12 1998

東京少年倶楽部 オフィシャルサイト

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