『音楽と人』の編集部員がリレー形式で、自由に発信していくコーナー。エッセイ、コラム、オモシロ企画など、編集部スタッフが日々感じたもの、見たものなどを、それぞれの視点でお届けしていきます。今回の担当である四十路編集者とnoodles・yokoさんが語り合う韓国ドラマコラム第9弾のテーマは、2人が注目する若手俳優〈ナム・ジュヒョク〉について。いつも以上に好き勝手話しておりますが、これも彼への期待ゆえということでお許しください(笑)。
今回は、パク・ソジュンに続く、俳優特集・第2弾として、我らが(笑)ナム・ジュヒョクについて語っていけたらと。yokoさんが、最初にナム・ジュヒョクに出会った作品は何になりますか?
「『恋はチーズ・イン・ザ・トラップ』(2016年作)かな。これは、たまたま1、2話を観たら、すごく面白くてハマったドラマで。オススメドラマでは挙げてないけど、私の心のベスト5に入ってる作品で」
ものすごくハマってましたよね。このドラマでのナム・ジュヒョクは、ヒロインが通う大学の後輩役での登場でしたね。
「そうそう。ナム・ジュヒョクは、もともとモデルとしてデビューしたんだよね」
そうですね。2013年にモデルデビューして、翌年、20歳の時に当時同じ事務所だった楽童ミュージシャンのMVに出演してますね。
「モデルデビューが19歳だったってことは、『チーズ・イン・ザ・トラップ』の時は、全然10代じゃなかったんだ」
ですね。でもけっこう童顔ですよね。
「童顔だと思う。けど、『チーズ・イン・ザ・トラップ』の時は、私、ソ・ガンジュンがすごいかっこいいなと思ってて」
主人公を演じたパク・ヘジンではなく(笑)。
「そう(笑)。で、ナム・ジュヒョクのことも、あんまり気にしてなかったんだよね。で、いいなと思ったきっかけは、やっぱり『麗〜花萌ゆる8人の皇子たち〜』になるかな」
私は『麗〜花萌ゆる8人の皇子たち〜』と、同時期に観てた『三食ごはん -高敞(コチャン)-編』で存在を知った感じですね。で、そのあとに『恋のゴールドメダル~僕が恋したキム・ボクジュ~』観て、〈いい!〉って思ったっていう。
「そうなんだ。その次に『ハベクの新婦』を観て……『ハベク』はイマイチだったんでしょ?」
ええ(苦笑)。『三食ごはん』でのマンネ(註:韓国語で末っ子のこと)感であったり、『恋のゴールドメダル』での純真な青年のイメージがあったから、台詞回しとか俺様キャラのナム・ジュヒョクに、最初ギャップを感じてしまって。作品自体は面白かったんですけど。
「前にそういう話したよね。『ゴールドメダル』でのナム・ジュヒョクがいいと思った人は、たぶん『ハベク』の役の感じは、いまいちなんだろうなって思う。しかも水の神様で、人間じゃない役だったし」
yokoさんは『ハベク』で完全にハマった感じなんですよね。
「うん。やっぱツンデレな俺様キャラって、私の好きなタイプだから(笑)。でもナム・ジュヒョクの本来の姿に近いのは、『ゴールドメダル』のほうなのかなとは思うけどね。少年ぽくて、爽やかっていう。最新ドラマが『スタートアップ:夢の扉』になるんだっけ?」
そうですね。『ハベク』のあと、映画『安市城 グレート・バトル』(2018年作)でのスクリーンデビューを挟んで、『まぶしくて -私たちの輝く時間-』(2019年作)があって。で、去年『保健教師アン・ウニョン』と『スタートアップ』の2作品に出演しましたね。
「そういえば、韓国で、『スタートアップ』における2人――ナム・ジュヒョク扮するナム・ドサンと、キム・ソノ扮するハン・ジピョンのどっち派ですか?っていうアンケートをとった、っていう記事を読んだのね」
ペ・スジちゃん演じるヒロインに想いを寄せる2人ですね。
「そしたら主人公のドサンよりも、二番手のハンチーム長にかなりの票が集まった、っていう内容で。主役よりサブキャラのほうが人気なのは、けっこう珍しい、異例だって書いてあったんだけど、それ見て、〈え、マジで!?〉って思いつつも、その結果になるのもすごくわかるなぁ、と思っちゃったりして(笑)」
キム・ソノは、『スタートアップ』で一気に注目されるようになりましたよね。ドラマでの役柄的に〈わかるなあ〉って思った感じですか?
「まあ、役柄的なところもあるんだけど、ナム・ジュヒョクには、オッパ感が足りないんだよなぁって思ったというかね。主役をやるようになっても、どうしても弟感を強く感じるんだよね」
確かに。たぶん、私が『ハベク』で違和感があったのも、〈可愛い弟感〉が強いからなんだろうな。だからこそ、俺様キャラの演技が最初しっくりこなかったみたいな。
「やっぱ持って生まれたその人の雰囲気ってあるじゃない。そういう部分でいうと、ジュヒョクは、ワイルドさとか悪の部分を感じさせないし、真面目というか、まっすぐな心の持ち主なんだろうなっていう。そういうのが滲み出てる、純粋・純真って言葉が似合うタイプじゃない」
そうですね。親近感はあるけど、頼れる兄貴、オッパ感はないんだよなぁ……。でも、どんどん演技力には磨きがかかってますよね。作品を追うごとに、〈お!〉って思わされるし。
「そうそう。そこは今、いろんなところで評価されているよね。モデル出身だけど、演技力がどんどんあがってきてるって」
とくに『まぶしくて』は、キム・へジャさんを筆頭に、ベテラン&演技力の高い俳優がたくさん出てる作品で。かつ難しい役どころではあったけど、しっかりとした演技を見せてましたもんね。
「ナム・ジュヒョク作品のなかで、個人的に一番好きなのは何?」
やっぱ『まぶしくて』かなぁ。彼のルックスだったり、雰囲気だけに頼らず、ちゃんとその役にハマってるなって思ったんで。yokoさんは?
「私はダントツで『ハベク』。でもこれは本当に個人的な好みっていう感じなんで、みなさんにオススメしたい、好きなナム・ジュヒョク作品ってなると『スタートアップ』になるかな。ドサンの純朴で素直、でもちょっと不器用な感じが、なんか本人のイメージに一番近い気がするし。でも、キム・ソノのほうが、人気があるっていう(笑)」
あはははは。そういえば、韓国では去年公開されたジュヒョク映画が、もうじき日本で公開されますよね。
「『ジョゼと虎と魚たち』のリメイク版だよね。その予告編を観て思ったんだけど、『ジョゼ』にしても『まぶしくて』にしても、大人しい雰囲気の役じゃない。これは『三食ごはん』でのジュヒョクにも感じたところなんだけど、太陽っていうよりはお月様タイプなのかなって」
ああ、自分が中心となって何かをするっていうタイプではないというか。
「そうそう。だから〈オッパ〉感を感じづらいっていうのもあるのかなって」
あと童顔っていうのもあってか、どうしても少年ぽさが強いところがありますよね。
「そうなんだよねえ……って、どの立場で私たち話してんだ、って感じだけど(笑)。でも、時代劇の回でも話したけど、世子様が似合う人と、そうじゃない人がいるとしたら、ナム・ジュヒョクは世子様が似合う、その役ができる人だと思うのね。清潔感とか誠実さ、品の良さがあるというかね。そこが彼の魅力のひとつだとは思うかな」
うんうん。『麗』でのジュヒョクには、それをすごく感じましたよね。
「これも前に言ったけど、パク・ソジュンは、世子感はないじゃない。あんなに魅力的だし、人気も実力もあるけど、そうじゃないっていう。やっぱ世子感って、誰もが持てる魅力ではないんだよね」
では今後、彼にどんなドラマ、役をやってほしいと思いますか? やっぱり世子役?
「世子様のジュヒョクも、もちろん観たいけど、刑事ものとかで、ヒロインが危険な目にあったり、どんな困難にぶつかっても必ず助けてくれるみたいな、そういう役が観てみたいかも。そうすれば、オッパ感も出るだろうなって思うし(笑)」
これまでのジュヒョクは、ヒロインを優しく見守るような感じの役が多いですもんね。
「ヒラバヤシちゃんは?」
そうですねえ……パク・ボゴムが『君を憶えてる』ってドラマでやったサイコパスみたいな、ちょっとヤバイ感じの役とか見てみたいかな。
「ヤバイ人の役(笑)。『君を憶えてる』は観たことないなぁ。どんなドラマ?」
ソ・イングクとチャン・ナラが主演のラブストーリーではあるんですけど、サスペンス要素が強い作品で。ボゴムは、純粋で真面目そうにみえて殺人鬼っていう役なんですけど。サブキャラながらに、すごく印象に残る役だったし、ただ可愛いだけじゃない、演技の幅を感じさせたんですよね。
「そうなんだ。『恋のスケッチ~応答せよ1988~』はそのあと?」
そうです。『応答せよ』のテク役で一躍人気が出て、そのあと主演を務めるようになりましたよね。まあサイコパスでなくてもいいんですけど、ちょっと悪役っぽいのを観てみたいかも。
「そうだね。純朴で、少しだけ陰のある大人しい感じの役だけじゃなく、少年ぽいんだけど、実はハードな過去を抱えてるとか、『君を憶えてる』のボゴムじゃないけど、純朴な雰囲気を持ってるからこそできる汚れ役とかやってほしいよね。やっぱどっか優等生的な役が多いから、そうじゃない役を演じる姿を観てみたい」
まあ今は主役級俳優として、着実に作品を重ねて足固めしている時期なんだろうなっていうのもわかるんですけどね。
「いい俳優だからこそ、期待してるというか。もっといろんなタイプの役を観てみたいし、挑戦してる姿を観たい、っていうのは思うな」
今27歳なんで、あと2、3年内に兵役に就くだろうから、除隊後復帰作とかで、今までのイメージとはまた違った役に挑戦とかしてくれたらいいですよね。
「そっか。韓国は30歳までに軍隊に入らなきゃいけないもんね」
ええ、韓国には徴兵制がありますからね。まあ、今回〈ナニ目線?〉って感じで話しちゃいましたけど(笑)、今後ぜひ注目してほしい俳優ですよね、ナム・ジュヒョクは。
「うん。いろいろ好き勝手なこと言ったかもしれないけど(笑)、それだけ期待してるっていうことだしね! 本当にいい俳優さんだし、もっといろんな人に知ってほしいなぁ」
文=平林道子