5組とも、みんなちょっと変で、どっかのジャンルに属しきれてない。だけど誰もが、遠い未来で待ち合わせしてるって信じてる気がする
そのSIX LOUNGEの「LADY LUCK」。いちばんの若者からのギフトなのに、誰よりもシブい(笑)。
「一番テンポ遅いですから(笑)。すごくおおらかな曲だなって思ったんですけど、こういうのもいいなって」
歌詞が若々しいですよね。当たり前ですけど。
「めちゃめちゃそうですよね。こういう自分でありたいって、青い理想を書いてる。でも、そこそこいい歳になった俺でも、まだこういうのが似合いますよって、言われてる感じ(笑)」
そういう歌詞を聴いてどう思った?
「うれし恥ずかしというか(笑)。もちろん引き受けるし、その大きさで唄ってやるよっていう気合いでやるけど、同時に、こういうサイズのイメージを、いい意味で恥ずかし気もなく衒いなく書けるコイツらの気持ちよさとかカッコよさが悔しいくらい好きだって思う(笑)」
はははは。
「こういう曲を唄うとね、ちょっと前までだったらダセェかもなとか、素直すぎるかもな、と思って封じてた部分を、もっと書いていこうって思わされるんですよ。たぶん次のアルバムはもっとそうなってると思う。そもそも俺、そんなにスタイリッシュな人間じゃないし(笑)。去年までは書けてなかったんですよ。もっとカッコつけてたり、フラッドらしさってこうだよねって、俺が決めつけちゃってた気がする。でもこうやって彼らがフラッドをイメージして作った曲を聴いて、自分の根っこをもっと見つめることが、広がることにつながるんだなって思う。今はそれをやろうとしてますね。SIX LOUNGEがそれを思い出させてくれた。『亮介さんがオーライって言ってるのが聴こえてくるんですよ、この曲は』って言われたから、一生懸命『オーライ』言いましたよ(笑)」
そしてかなり衝撃だったのが「星屑のレコード」です。
「超びっくりしましたよ。将司さん(山田将司/THE BACK HORN、ヴォーカル)から見たフラッドってこうだったんだって。クアトロの楽屋で会った時『すっげぇ考えてんだけど、みんなとは違うのをやりたいんだよね』って話してたけど、そしたらビートはロックンロールなのに、コード進行がジャズというかシャッフルビートって! 予想もしなかった」
バックホーンでもこういうタイプの曲はなかなかないですよね。あと松田晋二(THE BACK HORN、ドラム)の歌詞が素晴らしいです。
「めちゃめちゃ悩んでくれたみたいですね。フラッドのイメージは持ちつつ、レコードっていうわりとクラシックなキーワードも入れてくれて。でもそこに〈星屑〉が入ってくるロマンチシズム(笑)」
「さあ行こうぜ」って背中を押すのがフラッドのキャラではあるけど。
「そうですね。何か失ったものがあったとして、俺はその悲しみとかだけじゃなくて、その先に行こうぜ、ってとこまで書いちゃうんですよね。ほとんど」
この曲はその手前の感情を唄ってるよね。
「そう。それこそスキル的な意味でも、そこまで書かないことのよさとか、それによって、文字数がそっちに割けるとか、あるんですよね。その手前の歌詞も書いてるつもりなんだけど、それをもっと濃くしていいのかな、って。昔、いしわたり淳治さんにプロデュースしてもらった時、過去から未来までにいろんな出来事があるけど、その5分しか書く必要ない、って言われたことがあるんですよ。その5分のことで、過去も未来も感じとれるものを書けるし、感じさせなくてもいい。だって曲は3分ぐらいしかないんだからさって言われて、めちゃくちゃ納得したのを憶えてる(笑)」
まさにこの曲の歌詞は、その先でもなく、5分の心模様しか書いてない。
「そう。マツさんは何かを失ったその時の心の揺らぎというか、そこで心が感じたことしか書いてない。でも将司さんの曲が明るくてジャズっぽいから、明るいコードが入ってきて、前向きな未来が連想しやすくなってる。それを描かなくても」
そしてラストが「夕暮れのフランツ 凋まない風船」。これはもともとさわおくんが作ってあった曲なんだよね?
「『GIFT ROCKS』の話が持ち上がる前からあったんですよ。俺とコラボの作品を作ろうと思ってくれて、それを意識して書いたのか、本当にたまたまそういうのができたのかわかんないんですけど、ある日呑みに誘われて『亮介に唄ってほしい曲があるんだよね。この歌の主人公、気に入ってるんだけど、今の自分じゃ唄えないと思うんだ』って言われたんです。で、こっちは『GIFT ROCKS』の企画を考えてて、誰にお願いしようと思ってて。当然さわおさんの名前も挙がってたから、おいおい何だこの偶然!」
相思相愛ですね。
「そう。だけど話してくうちに『これやるより、一緒に新曲やりたいな』って言ってくれて、『LOST DOG E.P.』を作ったんですけど、あらためてこの『GIFT ROCKS』のお願いをしたら『あの曲、亮介が唄うのに一番ピッタリくるし、気に入ってるからやってほしい』って」
なんで唄えないって思ったんだろう?
「単純に年齢って言ってました。イメージしてる主人公の設定からすると、俺より若い奴が唄ってたほうがグッとくると思う、って。俺からすれば、さわおさんが昔を思い出しながら唄えば絶対グッとくるのにな、って思ってましたけど、ありがたくいただくことに(笑)」
でもこういう歌詞を聴いて、思うことあるでしょう。
「うん。ここからもっと希望のことを唄ってもいいけど、まだわからないっていうところで歌詞が留まってる。マジで切なく聴こえるし」
自分はさわおくんほど歳はとってないけど、SIX LOUNGEほど若くもない。どっち側にいる感じがする?
「超中途半端ですね。でもそういうところにいる先輩も見てきたし、そのどっちでもなさでいいと思う。はっきりした答えを持ってなくても、その悩みは無駄じゃないし、意味がある。だから書けることもあるって思う。悩んでるけどね」
そこで何を書くか、って話じゃないですか?
「うん。それが自分の今なんです。それを素直に出すしかないですよね。みんな悩んできたんだと思うから。正直、さわおさんもすごいしベンジーさん(浅井健一)もチバさん(チバユウスケ/The Birthday、ヴォーカル&ギター)もすごいし、もちろん清志郎さんも。みんなすごいけど、俺からしたら、ジョン・レノンよりはすごくないんですよ」
ははははははは!
「みんなそう思って、悩んで、曲を書いてるんじゃないかなって、だから友達だと思ってるんですよ。同じだと思ってる。いろんな変化が自分に訪れても、そんなことで根っこにあるもんは変わらない。サウンド的にも、ものの見方としても、いろんなバリエーションがあればいいんだと思う。本質的に変わってないことがある、ってことが大事で」
その本質って自分でなんだと思う?
「なんだろうな……周りがどう変わってても、結局出てくる言葉があんまり変わんないんですよね、俺(笑)。変な話ですけど、すべては〈遠い未来と待ち合わせ〉だと思ってるんですよ。小さい頃から、そもそもなんでこんなにいろんな人がいて、人と人、仲よくすればいいのに、なんで戦争やってるのかな? なんでこんなにわかり合えないのかな?って。親の事情で海外で暮らすことも多かったから余計にかもしれないけど、ずっと思ってた。日本に帰ってきても、一番近い人なのに、ライヴハウスのお客さんでも、好き同士でぶつかってるの見てたし……それかな。こんなにわかり合えない人間が、遠い未来で待ち合わせして、そこで出会って、わかり合う。それを表現していくことで、もしかしたら何かがよくなるかもしれない、って。それにかけたいって」
それがこれからも歌詞にしていくテーマだし、『GIFT ROCKS』 ではっきりした気がします。
「そうですね。これまではもうちょっと、その先を書こうと行き急いでたかもしれない(笑)。背伸びして、孤独なのはあたりまえ、って前提で〈さあ先に行こうぜ〉って。等身大の中の孤独の部分をもっと唄いたいなっていうか、みんなそういう俺やバンドをいいって言ってるんだなって、そう思った。だから好きなんですよ。このアルバムに参加してくれた5組とも、みんなちょっと変で、どっかのジャンルに属しきれてなくて、だけど誰もが、遠い未来で待ち合わせしてるって信じてる気がする。その孤独が友達になってるんだと思う、みんな(笑)」
文=金光裕史
NEW ALBUM『GIFT ROCKS』
2021.08.11 RELEASE
■通常盤
■GIFT ROCKS -FIFTHTEEN edition- ※テイチクオンラインサイト限定発売
※通常盤、オンライン限定盤ともに初回プレス分のみ「ギフトパッケージ」仕様
〈CD〉 ※通常盤、限定盤ともに共通
01 まだ世界は君のもの GIFT from 田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)
02 LADY LUCK GIFT from SIX LOUNGE
03 I’M ALIVE GIFT from Rei
04 星屑のレコード GIFT from THE BACK HORN
05 夕暮れのフランツ 凋まない風船 GIFT from 山中さわお(the pillows)
06 WINDOW開ける(UNISON SQUARE GARDENカヴァー)
07 メリールー (SIX LOUNGEカヴァー)
08 BLACK BANANA(Reiカヴァー)
09 コバルトブルー(THE BACK HORNカヴァー)
10 About A Rock’N’Roll Band(the pillowsカヴァー)
〈CD/Disc2:アコースティックベスト盤〉 ※限定盤のみ
01 春の嵐
02 アンドロメダ
03 コインランドリー・ブルース
04 I LOVE YOU
05 The Future Is Mine
06 アカネ
07 BLUE
08 Wink Song
09 美しい悪夢
10 天使の歌が聴こえる
■LIVE INFORMATION
〈GIFT ROCKS LIVE〉
8月26日(木) 新木場USEN STUDIO COAST
act : a flood of circle, Rei, SIX LOUNGE, THE BACK HORN, the pillows, UNISON SQUARE GARDEN
a flood of circle presents〈KINZOKU Bat NIGHT〉
9月20日(月祝) 京都磔磔
act : a flood of circle, 金属バット
〈A FLOOD OF CIRCUS 2021 in Namba〉
10月8日(金) 大阪・なんばHatch
act : a flood of circle, the pillows, ハンブレッダーズ
a flood of circle 15周年ベストセットツアー〈FIFTHTEEN〉
10月28日(木) 千葉LOOK
11月5日(金) 横浜F.A.D
11月6日(土) 水戸LIGHT HOUSE
11月12日(金) 札幌PENNY LANE24
11月14日(日) 仙台CLUB JUNK BOX
11月18日(木) 名古屋CLUB QUATTRO
11月20日(土) 福岡CB
11月25日(木) 大阪梅田CLUB QUATTRO
11月27日(土) 広島SECOND CRUTCH
12月18日(土) 金沢vanvanV4
12月19日(日) 長野J
12月23日(木) Zepp DiverCity Tokyo
※全公演ワンマン