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  • #ライヴレポート

the LOW-ATUS、1stアルバムを携えての全国ツアーにあった原風景と、この2人だからこその歌

text by 石井恵梨子

【LIVE REPORT】
the LOW-ATUS〈旅鳥小唄ツアー2021〉
2021.07.02 at USEN STUDIO COAST



始動から10年、ついにファースト・アルバム『旅鳥小唄 -Songbirds of Passage-』を完成させたthe LOW-ATUS。作品名を冠したリリースツアーも初のことで、東京公演の会場がスタジオコーストに決まったのはコロナ禍でたまたま空きがあったからだとか。広く綺麗な会場で、それぞれ距離を保ちながら鑑賞するワンマンライヴ。考えてみれば妙な感覚だ。私は今まで互いのバンドが出演するフェスの、メインステージとは違うところで始まる余興的パフォーマンスしか観たことがない。ワンマンとなれば何が変わるのか。襟を正したショウになっていたらそれはそれで残念かも。そんなことを考えながらの到着。


まったくの杞憂でした。始まったのはいつものthe LOW-ATUS。本人たちが言うところの「アラフォーおじさんの女子会。打ち上げ」。つまりは演奏がオマケになった宴会である。アルコール片手にとめどなく話し続け、好き勝手に脱線し、へらへら爆笑しているTOSHI-LOWと細美武士。開演から10分経っても演奏なんざ始まりやしなかった。


基本はこの調子だが、とはいえ音楽的には豊かな円熟があるのだ。ギターが2本に声2つ。ごくシンプルな編成でも物足りなさはなく、静的だとも思わない。もちろんアルペジオに乗せてそっと唄い出せば空気は静かに震えるが、独唱からデュエットになった時の楽曲の膨らみが素晴らしい。ことに細美の、〈定番の3度下〉なんてものではない、複雑な動きを見せつつも絶対の調和を失わないハーモニー。あまりにもしなやかで上品なそれは、はっきりと天賦の才を感じさせる。甘さと泥臭さが同居するTOSHI-LOWと、ハスキーな棘と透明感を内包する細美武士の声質が、完全に混ざり合わないところもいい。ひとつになれないから人と人は調和を求める。4曲目「サボテン」を唄い終えたTOSHI-LOWが「初めて、ロウエイやっててお酒以外で気持ちいいと思った」とひと言。異論はなかった。見事なハーモニーは、心をこんなにも満たしてくれるのだ。


〈恋人〉と自称する二人。冗談ではなく、楽曲から受けるイメージも限りなく愛に近い。彷徨える二つの魂が惹かれ合い、そっと距離を縮めて、それまでの孤独を喜びに変えながら重なり、ともに高みに向かうような。その情熱的カタルシスにあえての汚れ――具体的にいえば年齢のぶんだけ太くしゃがれた濁声がたまに入ってくるところがちょうどいい説得力になっている。20代でも30代でも手に入らなかった境地。やってきたこと、唄っていること、願っていること。それらにズレがないから何かを取り繕う必要がまったくない。ここまで裸でステージに立てるロックミュージシャン、まずいないよなと思う。


また面白かったのは、呑みすぎた細美がトイレに行った際、TOSHI-LOWがOAUの「帰り道」を披露したシーンだ。同じアコースティック、なのに音から伝わるイメージがまったく違う。「帰り道」は幼少期の記憶と自分の子供に向けた眼差しが交錯する歌であり、いわば、帰る場所がある現在の生活ベースの歌である。その後は細美が戻り「丸氷」が始まるが、こちらは傷ついて疲れきった魂がもうひとりの誰かを待っている、そういう孤独がベースの歌である。なるほど、これがthe LOW-ATUSの原風景なのだろう。二人が10年前に東北で見た景色、なぜ意気投合して唄い始めたのか、どうして酒や笑いも込みで新しいバンドをやる必要があったのか、その理由が2曲の対比でよくわかった。


と、ずいぶんくそ真面目に書いている。くだらないトーク中心、酔いが進めば演奏ミスも起こり、ミスれば必ず日本酒のお猪口イッキと、失笑シーンに事欠かない長丁場でもあった。最高だったのはMONOEYESのスコット(・マーフィー)が呼び出され、急遽細美と「Roxette」を演奏、その後には「みかん」の前口上をやらされていたことだろう。この前口上に関してはツアー中各地でいろんな被害者が出ていたようだが、無茶ブリで周囲を困らせる筋肉兄弟も本当の姿なら、極上のハーモニーも本物だし、その背景にある孤独や愛情も嘘のない実話として曲に刻まれていた。単色の人間なんていない。この二人だから伝えられる事実である。


約2時間半、アルバム1枚を出しただけのバンドとは思えない尺を使ったライヴは、最後の最後に「いつも通り」で幕を閉じた。これからも続く旅の歌。音源を聴いた時は細美がTOSHI-LOWに捧げたラヴソングだと思ったが、ファンを前にして聴くそれは、また必ず会おうな、という約束の歌として響いていた。またいつか――その時は客席にもアルコールがたっぷりと振る舞われますように。


文=石井恵梨子
写真=石井麻木


【SET LIST】
01 通り雨
02 ロウエイタスのテーマ
03 思草
04 サボテン
05 空蝉
06 ダンシングクイーン
07 帰り道(TOSHI-LOWソロ)
08 丸氷
09 Two Little Fishes(細美武士ソロ)
10 今夜
11 オーオーオー
12 Roxette(細美武士 & Scott Murphy)
13 みかん(with Scott Murphy)
14 君の声

ENCORE
01 いつも通り


FIRST ALBUM『旅鳥小唄 -Songbirds of Passage-』
2021.06.09 RELEASE

01 通り雨
02 サボテン
03 空蝉
04 思草
05 ダンシングクイーン
06 みかん
07 オーオーオー
08 丸氷
09 君の声
10 ロウエイタスのテーマ
11 いつも通り

HMVで購入
TOWER RECORDSで購入
Amazonで購入

the LOW-ATUS オフィシャルサイト

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