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Kitri、初のバンド編成ライヴ。新たな世界へと踏み出した、特別な一夜について

text by 青木里紗

【LIVE REPORT】
Kitri〈Billboard Live 2021SS「Kitri & The Bremenz Live」〉
2021.06.13 at ビルボードライブ横浜



「バンドでのライヴが自分たちにできるか不安でいっぱいだったんですけど、Kitriでもこういう世界を表現できるんだなと教えてもらいました」
ライヴの中盤、そう話すMonaの表情は明るく、新たな挑戦で得た喜びに満ちあふれていた。その隣にいるHinaも、きっと同じような気持ちを抱いていたはずだ。


姉のMonaと妹のHinaによるピアノ連弾ヴォーカルユニット、Kitri。4月に発表したセカンドフルアルバム『Kitrist II』を引っ提げて、6月13日、〈Kitri & The Bremenz Live〉と題した初のバンド編成でのワンマンライヴを、ビルボードライブ横浜にて開催した。今回は第二部の模様をレポートする。


19時30分。客電が落ち、フロア後方から登場したMonaとHinaは、ピアノの前に着き「小さな決心」でライヴの幕を開けた。〈今始まる/重ねてきた昨日を信じて〉〈新しい扉の先へ〉というフレーズも飛び込んでくるこの曲は、今回の挑戦に対して2人が抱く期待や高揚感、そして決意を象徴しているようだった。2曲目からは、〈The Bremenz〉と名付けられたバンドメンバーも登場。神谷洵平(ドラム)、千葉広樹(ベース)、副田整歩(サックス、フルート、クラリネット) をステージに迎えると、Hinaがバイオリンの弓でエレキギターの弦を鳴らし「人間プログラム」がスタートしたのだった。早くもピアノ連弾という枠にとらわれることのない形で演奏が始まったうえに、ジャジーなアレンジも相まって思わず胸が高鳴るのは言うまでもない。続く「NEW ME」は、もともとリズムトラックにピアノの音色が重なる、Kitriの新境地と呼ぶにふさわしい楽曲だ。バンド編成で届けられたそれは、生のドラムのビートが胸に刺さる、血の通った力強いサウンドとなったのが新鮮で、〈好きなようにそのまま生きていけ〉というストレートなメッセージもより一層際立つアレンジに。


数曲を披露し終え、「今回は髪の毛に初めてパーマをかけて、衣装も新しくしてきました」とMonaが口にしていたが、今までのKitriといえば2人とも黒髪を一本に結わえ、揃いの赤い衣装を身にまとうのがトレードマークと言ってもいいほどだった。この日は2人とも髪をおろしパーマをかけ、黒の衣装に身を包んでいる。演奏スタイルだけでなく、身なりも含めてまさしく〈NEW ME〉 という言葉がぴったりなほど、新しいKitriがこの日始まることを意味しているように思えた。


姉妹の連弾と、Hinaによるピアニカの音色、加えてバンドメンバーの強靭なアンサンブルが合わさったマーチング風の「未知階段」や、ラテン調の「赤い月」といった『Kitrist II』の収録曲を中心にバンドならではのアレンジが施された楽曲が次々と披露されていく。『Kitrist II』は、前述のリズムトラックを取り入れた楽曲や、この日も披露されたきらびやかなポップチューンの「青い春」など、大胆なアレンジが取り入れられた楽曲が揃い、歌とピアノ、という2人だけの世界から抜け出し、誰かとともに鳴らすことが前提としてあるような作品だった。だから、それをバンド編成で届けることは彼女たちにとって念願であったはずに違いない。


思い返すと、ファーストアルバムのツアーファイナルのMCでは、Monaが本番前に緊張し、Hinaに励ましてもらったというエピソードが披露された。だが、この日のMonaは変に気負うことなく心から演奏を楽しむ姿が印象的だったし、Hinaは新たに習得したエレキギターを堂々と披露するなど、心の赴くままに挑戦を続ける姿がそこにはあった。冒頭のMonaの言葉のとおり不安もあったはずだが、ステージにいるのは2人だけじゃない。今はともにKitriの音楽を信じて、鳴らす仲間がいる。それが彼女たちを後押しし、誰かと音を奏でるという今まで味わったことのない、何にも代えがたい喜びとなり、Kitriの世界が外へと大きく開かれたのだ。本編最後に披露された「羅針鳥」はまさにそれを象徴していた。


鳴り止まないアンコールに応え、2人と〈The Bremenz〉が登場し、ビートたけしの「TAKESHIの、たかをくくろうか」のカヴァーが演奏された。彼女たちはカヴァーアルバムを配信でリリースしているが、今後もKitriのフィルターをとおしてさまざまな名曲を聴ける機会があるのでは、と期待せずにはいられない。そしてアンコールラストは、「君のアルバム」を2人だけの連弾で披露した。実際に自宅にあるアルバムをめくり、写真を見返しながらHinaが作詞したこの楽曲には、2人で歩んできたここまでの道のりを振り返り、これからも支え合って未来へ向かっていきたいという温かな願いがにじんでいる。


もともとKitriは、大学のピアノ専攻を志していたMonaが、受験のためだけにピアノを奏でる苦しさから解放されるべく曲作りを始め、やがてそれをHinaと連弾というスタイルで披露するところから始まった。内に秘めた感情を音と言葉に落とし込み、ひとつの物語を作り上げるように楽曲を生み出してきたMona。そんな姉の姿にHinaも刺激を受け、ともに音を鳴らすだけでなく、今では作詞を担当することも増え、新たな楽器にも果敢にチャレンジしている。お互いの良さを生かし、足りない部分は補い合う。そうやって支え合い、2人はここまで一歩ずつ着実に歩んできたのだ。


『Kitrist II』のインタビューでは、Monaが「今、私たちの中でKitriが人生そのものになっているし、いちばん大切なものになっているんですね。そこで表現をするためにも、2人で歩み寄って過ごしたいんです」と話してくれたが、今の2人を繋ぐ大切なものがKitriそのものであり、これさえあれば彼女たちはきっとどこまでも進んでいけるのだ。


この日、バンド編成という挑戦をとおしてKitriの世界は大きく開かれたと同時に、2人の間にある絆と信頼もより一層深まったはずだ。新しい翼を手に入れた2人は、これからどんな世界へと羽ばたくのだろう。Kitriのこれからが楽しみで仕方がない。


文=青木里紗
写真=Masatsugu ide


Kitri オフィシャルサイト https://www.kitriofficial.com/

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