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GRAPEVINE田中和将インタビュー『新しい果実』を味わう10の言葉(完全版)

闇とはしっかり付き合うべきだと思うんです。そういう自分のドス黒い部分とか、逆にプラスに使えるかもしれませんから



ハイ、5曲目「ぬばたま」からは〈⑤射干玉の夜〉。これ〈射干玉〉と書いて〈ぬばたま〉と読むんですけど、万葉集から取ってるんですよね。


「ぬばたまってブラックベリーのことで、実はロックワードなんです。古典だと黒とか夜にかかる枕詞ですね」


漆黒を表す言葉ということで、ここでは闇をテーマに聞きたいんですけど、心の闇との付き合い方って年齢と共に変わってきました?


「どうなんでしょうね?……きっと変わってきてるんでしょうけど」


例えば最近では〈闇落ち〉みたいな言葉が使われるじゃないですか。


「それ、なんすか? フォースがダークサイドに引き寄せられる感じ? 僕は昔から、闇との付き合い方は重要だと思ってるんです。いま多くの人って、なるべくネガティヴになるのを避けたいし、ずっと楽しく能天気でいたい感じでしょ。俺はその気持ちはわからなくて、闇とはしっかり付き合うべきだと思うんです。そういう自分のドス黒い部分とか、逆にプラスに使えるかもしれませんから」


田中くんにとってネガティヴな闇って、周期的に襲ってくる感じですか?


「いやいや、誰しも日々生きてて落ち込むことなんてあるでしょう。それを〈闇落ちしちゃった〉みたいな言葉では表現できないですよ。またそれがずっと付き合っていかなければいけない闇の場合もあるわけじゃないですか。その時だけたまたま良くないことが起こって落ち込んでるわけじゃなく、生まれながらにして抱えてる闇というのもあるわけで。〈生きてるのがしんどいわ〉っていう波なんて誰でもあると思いますよ」


そういう波が来たら〈また来たな〉って対峙できる?


「だいぶ俯瞰で見られるようになってきたと思いますよ。付き合い方はそれなりに学んできてるんじゃないかな」


闇からの脱出法とか会得しました?


「何か行動することによって解決するのなら動くしかないですけど、そうじゃない場合は波と付き合っていくしかないし、気分転換をするくらいしかないんじゃないですかね。まあ、解決できるはずなのに先送りしてることもいっぱいあって。それを思い出したときは、すごいどよーんとします(笑)」


人生の宿題……みたいな。闇ということを考えると、GRAPEVINEの場合は〈光〉というメタファーもあります。


「光があるから闇も濃くなりますし、闇があるから光を当てることもできるわけで」


田中くんの中には〈闇はそんなに悪いものか?〉という気分があるんですかね?


「仮にそれがマイナスでネガティヴであるとしても、絶対に消し去ることはできないから付き合っていかなアカンと思うし。だからこそそれを見ないように見ないように、楽しいことだけつまんで生きていくのは危険なことだと思うんです。もしかして個人としてはそれを見ないまま逃げ切れるかもしれないけど、個人の闇って拡大して見れば社会の闇だったりするから、臭いものにフタをしてるだけだったりするんですよね」


結局回り回って誰かが闇を片付けないといけないわけですよね。個人的には映画館やライヴハウスが好きなのは、闇に包まれる心地よさがあるのも一因かと思います。


「闇って演出上、効果的に使うこともできますから。だから闇は絶対必要なものだと思います。そこから目を逸らしていけない!」


珍しくそこは強調しますね。


「それってさっきから話に挙がってる〈光の届かない部分〉とか〈声を上げられない立場の人〉の話とつながってくると思うんです」


それを描くことに使命感を感じてるんですかね?


「だって誰もそういう書き方をしないじゃないですか。使命じゃないけど……自分がやるべきことはそれかな、とは思ってます。ただ、あまりにも抽象的すぎて、どこに球投げてるのか誰もわからないってことはよくありますけど(笑)。それは僕の唯一のモチベーションなんでしょうね」


デビュー四半世紀ともなると、そういうテーマが浮上してくるものですね。「阿」からは〈⑥想い描いた未来〉。こんな未来になっちゃいましたよ!


「誰も想い描いてなかった未来でしょうけど、大友克洋にしろジョージ・オーウェルにしろそれを予知していたクリエイターもいるわけです。そういう作品が残ってるのは、いいことだと思います」


決して明るくない未来が現実になってしまった今、田中くんはこれからの未来に期待してますか?


「それもボンヤリした質問ですねぇ……期待はしてますけど、どういう部分に期待してるのかが重要ですよね。僕は考え方が古いので、不安の割合のほうが大きいかもしれないです。ただ不安ばかり唱えると、それこそ闇落ちしますから(笑)。ちゃんと期待するところは期待していかないと」


普通に考えると環境問題やら年金問題やらエネルギー問題やら、未来は不安しかないような気がしてきます。一方で近年の社会を見ると、テクノロジーはずいぶん進化したわけで。文明の進化は幸福につながったのでしょうか?


「これもさっきの話とつながるけど、テクノロジーの進化って生活をしやすくするため、便利にするためになされていて、それは闇を隠そうとする方向に働いてると思うんです」


便利になった半面、その代償もあるわけですよね。


「そう考えるといいことばかりじゃない気もしますが、こういうテクノロジーが生まれた時から当たり前にある世代にしてみれば、きっと違う感覚なんでしょう。だから一概には言えないけど、個人的な感覚としては暗いもの、汚いものから目を逸らせようとしている気がします」


逆に〈今後こうなってほしい〉〈これからこうなるんじゃないか?〉とか、今の時点で想い描く未来ってあります?


「具体的にコレっていうのはないですけど、単純にこれからの世代に尻ぬぐいをさせるようなことはやめないといけないんじゃないかと思います。そりゃ『なんで年金払わなアカンねん』って思いますって」


いやホントすいません……って感じですよね。


「たとえば車が空を飛ぶ未来が来るとして、それしか売ってないのなら順応するしかないですけど、そういうことのツケがこれからの世代に回るんだったら、それはマズイと思います」


それこそさっき出た社会的な闇というか、個人は齢取って死んでしまえば関係ないかもしれないけど、問題は次の世代に先送りされていくわけですよね。


「本当に処理水の行方とかはっきりさせてもらわないと困りますよ……」


次の「さみだれ」はちょっと毛色を変えまして、〈⑦言葉はもう要らなくて〉。昨年文藝春秋『文學界』で随筆家としてデビューした田中さんですが(笑)、言葉の調子はどうですか?


「そこそこ評価もいただいて、気をよくしてもっと書こうと思ってるんですけど、あれからちっとも書けてないです(笑)」


それこそ去年は時間がいっぱいあったじゃないですか。


「じゃあ他にも何か書いてみようかと思った頃からアルバムの制作がはじまって。歌詞書きに追われ、書き終わった頃にはスッカラカンになってましたよ」


まあ、そちらが本業ですからね。それにしても歌詞とエッセイを書く行為って全然作業が違いません?


「何かをゼロから書くのは難しいですよ。歌詞の場合、僕は歌詞を独立したものとは考えてなくて。まず曲があって、曲の世界観を言葉に落とし込んでるだけなんです。言葉だけ先に書くっていうのはあまりやったことがないんです」


先に歌詞がある状態って、GRAPEVINEでは絶対ありえないですよね。


「これまで一度もないし、詞だけ単独で書くことなんてないですから」


この前aikoさんに取材させてもらったんですけど、aikoさんは完全に詞先なんです。唄いたいことを書いた歌詞がたくさんあって、〈今日はこれに曲を付けてみようかな〉って1枚を譜面台に置いて、その詞に曲を付けていくっていう。


「それ天才やなぁ……自分がやってるから、詞先の人の曲ってわかるんです。それは言葉が強くてそこに曲が引っ張られてるからわかるんだけど、aikoさんの場合は曲が言葉に負けてないというか……その才能ほしいなぁ!」


最初に出てくるのが、言葉か、メロディか、サウンドか、人によって違いますよね。田中くんの場合、言葉に強いこだわりを持ちつつも、自発的ではなく受動的に言葉を組み立てていくところがユニークです。


「それはやっぱり先に音楽を好きになったからじゃないですか。まず音楽があって、その中の詞、言葉ってことになるからだと思います」


でもそれがエッセイになると、ゼロから作っていかないといけないわけでしょ?


「エッセイに関しては身の回りのことを自分の意見として書くだけだから、お話を創るのと違って、まあいくらでも書けるんです。それがお話を創るとなると……脳内で景色やストーリーを創らないといけないから大変ですね。音楽の場合、その部分は曲が担ってくれるんです。なんらかの設定をして主人公を曲の中に立たせれば、自然と曲の中を泳いでいくんです。曲自体にストーリーがあるから」


構成やアレンジも含め、曲自体がプロットみたいなものですもんね。エッセイを書いたことで、言葉の使い方など変わった部分はありますか?


「歌詞に関しては毎度やってない感じを試してますけどね。それなりに頑張って試してるけど、結果的に俺節やなってことは多いです」


しかし面白いですよね……最初はただの音楽好きだったのに、作詞担当になったことで二十数年言葉と格闘し続け、こうして評価を受けてるって。


「独学ですけど作詞も勉強しましたよ。自分で書くようになると、これまで聞き流してた歌詞を改めて見て、ナルホドって思うじゃないですか」


影響を受けたのは忌野清志郎さんとか?


「いろんなものに影響受けてますけど、どちらかというと歌謡曲のほうが強いかも。それこそ松本隆さんとか阿久悠さんとか」


意外! そんな松本隆タッチは感じませんが。


「勉強させていただいたという意味での影響なので、真似るかどうかは別の話で。ロックの歌詞という意味では清志郎さんとか中学生くらいの頃に出会ってて、それはそれで衝撃的だったし影響は受けてます。ただ、RCで作詞家という意味で影響を受けたのは、清志郎さんよりむしろチャボ(仲井戸麗一)さんのほうじゃないかな?」


田中くんの詞の書き方はaikoさんみたいに何か言いたいことのある人と違って、歌謡曲の職業作詞家に近いというか、曲に合う言葉を客観的に当てはめているのかもしれません。


「うん、自分が何か言いたいというより、世の中の何かを寓話的に伝えたいんでしょう」


そんな中、こうしてエッセイが評価されたのは、田中くんにとって喜ばしいことだったのかな?


「喜ばしかったですね。俺、これまでグレイプバインでエゴサーチしたことはほとんどないですけど、あの原稿が載った時は〈田中和将〉でエゴサーチしましたから(笑)」


マジで!? どえらく気にしてるじゃないですか。じゃあ今後の文筆活動にも期待していいですか? さっき話を創るという話をしてたけど、エッセイじゃなく小説への興味もあるのかな?


「どうせ書くならエッセイより小説的なものを書きたいです。『文學界』の編集者さんからは色川武大の『怪しい来客簿』みたいなのはどうですか、って言われてて。あれはどこまでがエッセイでどこからが創作かわからないじゃないですか。色川武大は一時期すごい読んでたから、書けたらいいなと思いますね」

嫌いな人間なんていないですよ。逆に言うと、ほとんどの人間が嫌いってだけで。単純に嫌いな人って、そうそういないものですよ

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