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【編集部通信】新たな発見に出会う喜び。レコード店で思い出した、ある感覚

text by 青木里紗

『音楽と人』の編集部員がリレー形式で、自由に発信していくコーナー。エッセイ、コラム、オモシロ企画など、編集部スタッフが日々感じたもの、見たものなどを、それぞれの視点でお届けしていきます。今回は高円寺のレコード店に訪れた若手編集者が、そこで思い出したある感覚について綴ります。


 
「趣味は何ですか?」
そう聞かれて、自信を持って答えられるものが自分にはない。暇があればSpotifyを開き、国とジャンル問わず音楽を漁るか、ラジオをつけてみる、動画配信サービスで映画を観る――書いてみると、何の面白みもないし、これは趣味だと言えない。音楽を聴くことに関してだけ言えば、毎日歯磨きをするのと同じくらい自然に、生活の中で当たり前のように行っていることなので、そもそも趣味と言うほどのことでもないのだ。

じゃあいつから音楽を聴くようになったのだろう。振り返ると、幼少期はモーニング娘。やミニモニ。など、当時流行っていたものに夢中になり、親にねだってレンタルショップでCDを借りてカセットテープに録音。家の中で、さらに両親の運転する車の中でかけて一緒に唄ったりするのが日課と言っていいほどだった。カセットテープに録音する習慣は小学校の中学年まで続き、その後はパソコンの登場によって、好きなCDを何枚も借りてきては丁寧に焼き、聴き込んだ。高校生以降は、欲しいCDはお金を貯めて買う機会も増えたけれど、レンタルショップに行く習慣は変わらずにあって、高校をさぼって地元のTSUTAYAに入り浸る時期があったほど。ちょうどロックに関心を持ち始めた時期だったので、洋楽コーナーでビートルズやストーンズ、ラモーンズなどまずはベーシックなものから聴いてみようと棚を漁っていたし、借りるお金がない時には、お店の試聴機で聴いてしのいでいた。その際に、曲を聴くことと同じくらいに重要視していたのが、ライナーノーツだ。洋楽の国内盤に付属するブックレットに書いてある、作品が作られた背景や、楽曲の解説。例えばビートルズのアルバムのライナーノーツを読んでいると、ミック・ジャガーなど同時代で活躍した人物の名前が出てくることもあり、その時代や、当時のムーブメントを知ることができ、とても新鮮だった。社会人になり仕事を始めてからは、ようやくサブスクを使い始め、音楽はますます身近になり、片手ひとつで再生できるという小さな革命が起こる。ラジオで流れた気になる曲、誰かからおすすめされた曲はその場ですぐ検索しチェック。手間をかけずに聴きたいものがすぐ聴けるし本当に便利だなと思いつつ、同時にアナログレコードデビューも果たすという、デジタルに移行したかと思いきやアナログへ回帰していく部分も。そんな矛盾がありながら、悲しいことに便利なほうに逃げてしまって、普段使いはやっぱりSpotify。これは出かける時にいつもと違う服を着ることとたぶん似ていて、休みや時間のある時にはゆっくりとカセットテープやCD、レコードを聴く、という形に少しずつ変化していったんじゃないかな、という気がしているのだ。


そんな中で、先日、高円寺にある某レコードショップを訪れた。そのお店は民族音楽などのワールドミュージックや、日本のアンダーグラウンドのラインナップがとくに優れている。店内にはかなりコアなレコードやCD、アジアなどで買い付けてきたと思われる雑貨をはじめ、オーソドックスなロックや歌謡曲のレコードも陳列され、まるでおもちゃ箱のようなワクワク感にあふれている空間だったのだ。〈何だろう、このCDは? どこの国のものかな。ジャケット面白いなぁ〉と思ったりしながら店内を物色していた時、これは学生時代にレンタルショップへ通い詰めていた感覚と似ているなと思った。お店にわざわざ足を運び、実際に触れて、目で見て確認する。目当てのCDを探したり、そういった手間を惜しんで聴きたいものにやっとたどり着く感覚や、歌詞カードのデザインを眺めたり、ライナーノーツを読み込むといった、音楽に付随する物事を楽しむ文化。それを久々に思い出したのだ。最近はスマホから流れてくる情報だけで完結してしまい、自分に必要なものだけを手にして満足した気に陥ってしまう面が正直ある。それはよくないなと思うのだけれど、外に出てお店に行くなどすると、ふいに自分が知ろうともしていなかった新しいものが目に飛び込んでくることが多い。普通に生活していたら必要のないもの、一見無駄と思えるもの。それが自分の視界を少し広げて、心を豊かにしてくれることがあると思うのだ。


そういう点で言えば雑誌も同じだと思う。私は小学生の時に手にしたアイドル雑誌がきっかけで、いろんなものを読む習慣がついたのだが、当時興味のあったグループの記事はもちろん、せっかく買ったんだから、という単純な理由で他のページもパラパラとめくっていた。一冊手にすればほぼ全ページを読み進める勢いだったのだが、雑誌に触れる機会が増えていくにつれて、いろんな人がいて、さまざまな考え方があるのだと学んだのだ。当時は学校生活がうまくいかなくて悩んだりしていたけれど、悩んでいるのは自分だけじゃないんだと気づけたし、気持ちが少し軽くなったのを今でも覚えている。またファッション、映画、カルチャーや各分野に特化した専門誌を開けば、〈こんな世界もあるんだ〉と写真や色使いといったヴィジュアルを含めた意味でもハッとさせられたり、未知の世界をほんの少し覗き見した気になれて楽しかった。雑誌作りに関わるようになった今、おこがましいが、あの頃の自分のように誰かの視野を1ミリでも広げられるような、〈へえ、こんな人たちがいて、こんな音楽があるんだ〉と思ってもらえるような記事を作れるよう、努力しなければなと思う。そのためにもまずは自分がいろいろな物事を面白がり、楽しんでいきたい。例えば、ジャケットに惹かれて、どんな曲が入っているかまったくわからないのに思わずCDを買ってしまったあの時のように。



文=青木里紗

高円寺のレコードショップでジャケ買いしたCD。ベトナム民謡のコンピレーションアルバム、ということ以外、正体不明。一体どんな音楽が鳴るのか、とても楽しみです。
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