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DEZERT、9ヵ月ぶりのライヴ。コロナで食らったネガをポジに変えた夜

text by 樋口靖幸

【LIVE REPORT】
DEZERT〈DEZERT SPECIAL LIVE 2020 “The Today”〉
2020.11.23 at LINE CUBE SHIBUYA



開演から2時間以上が経過し、いよいよライヴはクライマックスを迎えようとする頃、千秋は言葉の海に溺れかけていた。本編ラストの1曲をなかなか始めようとせず、というかその前にどうしても話しておきたいことがあって、ひたすら話し続けること10数分、会場はひたすら彼の言葉に耳を傾けていた。でもマジな語り口に恥ずかしくなってしまうのか、自分にツッコミを入れたり話を脱線させたりして、言いたいことの核心にたどり着かない。それもまぁ仕方がないだろう。目の前にいる観客のリアクションがいつもと違うのだ。彼の熱弁に返ってくるのは拍手のみ。顔はマスクで覆われ、その表情を窺い知ることもできない。自分の思いが伝わってるかどうか判然としないそんな状況を前に、以前の彼なら捨てゼリフを吐いてとっとと曲を始めていたかもしれない。けど、それができない今、もどかしさや苛立ちを抱えながらも彼はオーディエンスと向き合い、必死に語りかけていた。そんなこんなで10分以上にわたるスピーチを経て、ようやくラストの「TODAY」が始まった。そしてその曲には、その日彼が言いたかったことのすべてが収斂されていたのだった。


ガイドラインに従った上で開催された9ヵ月ぶりのライヴ。配信ライヴという手法に手を出さずにいたバンドなので、彼らにとっても本当に久しぶりのライヴとなる。配信をやらないのはいかにも彼ららしい。というか、千秋にとって相手の存在が感じられない空間で歌を唄うことは虚無感の極みでしかないだろう。そう、彼には〈相手〉という確かな存在が必要なのだ。相手に向かって球を投げ、それが返ってくることで自分というものを初めて知る。そのことを彼自身が誰よりも分かっているのだ(ちなみにこの日は配信でも観ることができるハイブリッド型のライヴとなっていた)。


新曲「Your Song」でライヴがスタートしたのも、オーディエンスという〈相手〉の存在をより強く意識したゆえのことだろう。相手を思いやる気持ちを綴った曲を真っ直ぐに唄いあげ、MCでは「よく生きてここまで来れたな」と客席に声をかける。もともと彼はストレートな球を投げることができない不器用な男だ。牽制球や変化球で相手を翻弄させ、その反応を伺った末にどうにかコミュニケーションのきっかけを掴むことができる。簡単に言えば、素直な自分を出すことができない臆病者なのだ。そんな男が久しぶりのステージで、堂々とオーディエンスと向き合い、真っ直ぐに球を投げていた。


そんな彼から球が途絶えたのは「白痴」から「「擬死」」に至る中盤のブロックだった。さっきまで相手の存在を求めていた彼が、すべてを遮断し内省へと深く潜り込んでいく。そして奥行きと立体感のあるバンドサウンドが、千秋の内省を冷徹に、そして無愛想に描写する。断絶、分断。そんな言葉が思い浮かぶような闇が会場を支配する。千秋も自粛期間、そんなネガティヴな世の中の空気を食らってふさぎ込んでいた、ということなのか。しかしライヴ後半になると、ようやくDEZERTは本来の持ち味――何をしでかすかわからない危なっかしいオーラ――をまとい始め、中指をおっ立てるような暴力的なビーンボールを放ってくる。客席には無言のコール&レスポンスを要求し、メンバーにはサビをアカペラで一人ずつ唄うことを強要する千秋。やっぱりオマエにはストレートな球よりもこっちがお似合いだ。そんな彼に向かって「こんな球投げやがって!」と文句を言いながら彼の気持ちを受け止めるのが楽しい。


そして冒頭に書いたとおり、本編ラスト前にさしかかると、彼は思いの丈を執拗までに言葉にしようとした。それはとてつもなく不器用で回りくどい内容だったけど、言いたいことはシンプルだった。「ありがとう」――。心の底から湧いた感謝の気持ちがそこにはあった。ライヴがなくなって、外に出られなくなって、人に会えなくなったことで孤独を味わい、そして自分と向き合い、ようやく生まれた観照。それは自分以外の誰か、という存在へのありがたみだった。めちゃめちゃ普遍的で当たり前の、〈相手〉に対する感謝の気持ち。でもそのひと言が言えないから、彼は自分の流儀に沿った方法で思いを吐き出した、ということなのだろう。「ありがとう」って、ただそれだけを言えば伝わるのに、それが言えなくて、でも本当に心からそう思ってるからこそ歌を磨き、言葉を尽くし、それでも足りない伝わらないような気がしてしまう。だからライヴを完遂するのにアンコール含めて2時間58分もかけてしまった。そういうことなのだ。


〈生きててよかった そう思える夜をずっと探してる〉――「TODAY」
この日、彼が探していた夜がやっと見つかった。そんな気がしている。


文=樋口靖幸
写真=田中聖太郎・渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)


【SET LIST】
01 Your Song
02「君の子宮を触る」
03 Thirsty?
04 ラプソディ・イン・マイ・ヘッド
05 蝶々
06 Sister
07「教育」
08 白痴
09「遭難」
10 Call of Rescue
11「擬死」
12 排泄物
13 肋骨少女
14 感染少女
15「秘密」
16「変態」
17 True Man
18「遺書。」
19「ピクトグラムさん。」
20 TODAY

ENCORE
01 オーディナリー
02 新曲
03「殺意」


NEW SONG「Your Song」
2020.11.16 RELEASE


Download / Streaming

DEZERT オフィシャルサイト https://www.dezert.jp

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