【LIVE REPORT】
PELICAN FANCLUB DX ONEMAN LIVE “NEW TYPE”
2020.11.07 at 渋谷WWW X
PELICAN FANCLUBは人間くさいバンドだ。あらためてそれを感じるようなライヴだった。
バンドにとって約10ヵ月ぶりとなるワンマンライヴ〈PELICAN FANCLUB DX ONEMAN LIVE“NEW TYPE”〉。本来は5月16日に恵比寿LIQUIDROOMにて行われる予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期となり、会場を渋谷WWW Xに変更し、感染拡大防止対策を取ったうえで開催された。
今回のライヴは彼らのアートワークを手掛けるデザインプロジェクト・GraphersRock、空間演出集団huezとタッグを組み、巨大なスクリーンをバックに、VJやレーザーによる空間演出がほどこされた。1曲目の「Amulet Song」から、MVや歌詞が効果的に差し込まれた映像が映し出され、楽曲ごとにさまざまな演出が展開していく。ライヴを行うにあたりさまざまな制限はあるが、今この瞬間だけは誰にも邪魔されない、音楽だけに没入できる特別な世界にいるような感覚があった。
その空間で3人が鳴らす楽曲は、いつも以上に感情がうねっていた。真っ赤なライティングの中で披露された新曲「ディザイア」には魂を燃やすような情熱があり、「ハイネ」の間奏でのエンドウの叫び声は胸を締め付る。柔らかい音色で鳴らされた「to her」の〈ただ側に居て欲しいんだ 今だけは〉という言葉は孤独を包み込むような優しさにあふれていたし、「三原色」の疾走感からはここにいる人たちを引き連れて前へ進んでいくような逞しさを感じた。
エンドウは、自分の考えを誰かに伝えたり、心の内を表現することがあまり得意ではない。しかし本当は伝えたい感情がたくさんあり、正しく人とつながりたいと強く思っている。そんな彼にとって、喜怒哀楽を乗せた音楽を届けることこそが、相手との最大のコミュニケーションだ。コロナ禍以降、有観客でライヴを行うこともまだ数回目で、久々のワンマンライヴという状況の中、届けたい、伝えたい、共有したい、つながりたい――そういった相手との心の交わりを求めるところが大きかったのだろう。
気迫のこもったプレイが続いたライヴ終盤、制限がある中でライヴをすることに抵抗があったと語ったあと、エンドウは声を震わせながらこう話した。
「反応はないけど、君たちの表情はわかる。それだけでこのステージに立つ意義を、意味を感じました。心から感謝してます」
歓声はあがらなくとも、集まってくれた人たち(配信でライヴを観てくれている人たち)と同じ空間、同じ時間、音楽に込めた感情を共有することで通じ合えるものがある。その絶対的なつながりを、エンドウはこの日強く感じることができたのだろう。そして、それは何よりも彼自身が求めていたものだったはずだ。さらに彼はこう続けた。
「生きていたいなと思うんです。人に生きようよって伝えることはできないけど、『今この瞬間、君は生きてるよ』って言うだけで、その今が積み重なって未来を生きれるんじゃないかと思います」
音楽を鳴らすことは、誰かとつながることであり、生きていることを実感できるものである。それを感じたうえで奏でているからこそ、PELICAN FANCLUBの曲は、オルタナティヴな要素を多分に含んでいても、決して無機質になりすぎずに、人懐こい温もりがあるのだ。アンコールのラストは「記憶について」。目を真っ赤にしながら叫ぶエンドウの表情、向かい合って音をぶつけ合う3人の姿にこの日一番心が躍った。熱くなった身体を感じながら、〈ああ、生きている〉、そう強く思った。
ライヴから数日後、エンドウと話をすることができた。彼の言葉をここにお届けする。
久々のワンマンライヴ、どんなことを感じました?
「観てくれる人がいることで心動かされるというのをすごく実感しました。やる前はお客さんが拍手しかできないという状況に対して不安があったんです。やっぱりライヴは僕らが演奏して、フロアからの反応があって、というやりとりがあってこそだと思っていたので、それが一方通行になってしまうんじゃないかと。だから、どうやってお客さんが返してくれるのか、イメージできなかったんです。でも、そんなこと考える必要がないくらいの1日になりましたね。10ヵ月ぶりのワンマンで、スタジオに入ってる時は、自分は演奏してるという感覚が強くあったんですけど、ステージに立ったら演奏してるだけでなく、これはコミュニケーションなんだなとあらためて感じました」
GraphersRockとhuezによる演出については?
「自分は言葉で伝えることができるけど、その先で表現できない部分もあると思っていて。それは雰囲気だったり、空気と言われるようなものですよね。そのなんとなく漂う空気と音楽って、すごく結びついてると思うんです。ふとした帰り道に聴いた曲を、別の場所で聴き返した時にその帰り道の雰囲気を思い出したり、それが特別なものに感じられたり。僕はそういうものを大事にしたくて。コロナで室内にいた人も多かったと思いますけど、そこから一歩外に出て渋谷、ライヴハウスへ行った時に、いつもと違う渋谷、いつもと違うライヴハウスという特別な色はつけられたんじゃないかなと思います」
12月の千葉LOOK公演はどんなライヴになりそうですか?
「千葉に関しては地元ということもあるので、やっぱり特別な感情があります。数ヵ月前に千葉LOOKに行った時、普段はいっぱい公演情報が貼ってあるのに、4つくらいしかなくて、それを見て心がキューッとなったんです。僕、千葉LOOKに行く前の電車でなぜか感極まってしまうんですよ。それくらい思い入れがある場所で。この場所を大事にしたいと思うし、力にもなりたい。ただの有観客ライヴ、配信ライヴではなく、そういう思いを背負ってやるので、ぜひ観てもらいたいです」
文=竹内陽香
写真=伊藤惇
【SETLIST】
01 Amulet Song
02 Dali
03 Telepath Telepath
04 ディザイア
05 ハッキング・ハックイーン
06 VVAVE
07 7071
08 ハイネ
09 新曲
10 Day in Day out(新曲)
11 Gradually(新曲)
12 to her
13 Night Diver
14 ノン・メリー
15 三原色
16 Girlfriend In A Coma
17 新曲
ENCORE
01 Dancing Queen
02 ベートーヴェンのホワイトノイズ
03 記憶について
音楽と人1月号(12月4日発売)にて、エンドウアンリのソロインタビューを掲載! “NEW TYPE”で感じたことをより詳しく、さらにニューシングル「ディザイア」についても語ってくれています。
PELICAN FANCLUB DX ONEMAN LIVE “NEW TYPE” ライヴ配信
〈見逃し配信期間〉
2020年11月15日(日)23:59まで
▼視聴チケット:2,500円(税込)
https://stagecrowd.live/s/live086/
▼配信メディア:Stagecrowd
https://stagecrowd.live/s/live000/?ima=2920
NEW SINGLE「ディザイア」
2020.11.25 RELEASE
■初回生産限定盤(CD、DVD)
■通常盤(CD)
■期間生産限定盤(CD/TV アニメ『炎炎ノ消防隊』描き下ろしジャケット / デジパック仕様)
〈CD〉
01 ディザイア
02 Day in Day out
03 Gradually
04 ディザイア(Anime Size) ※期間生産限定盤のみ収録
05 ディザイア(Anime Size Instrumental) ※期間生産限定盤のみ収録
〈DVD〉 ※初回生産限定盤のみ
Live from “Dive/Connect @ Zepp Online”
1.Introduction
2.ディザイア (Live from “Dive/Connect @ Zepp Online”)
配信ライヴ〈Dive/Connect @ Zepp Online〉
2020年11月24日(火) 20:00配信スタート
[出演] PELICAN FANCLUB / ネクライトーキー / ※トークパートゲスト:古賀隼斗(KANA-BOON)
特設サイト https://www.diveconnect.net/#/necrytalkie_pelicanfanclub
PELICAN FANCLUB -千葉市並行-
■Day1 PELICAN FANCLUB -千葉市並行- (有観客ライヴ/配信なし)
12/17(木)open/start 18:30/19:00
Ticket:¥3500(税込+Drink)
※11/7 21:00から下記URLより先行抽選受付開始
https://eplus.jp/pelicanfanclub-h/
■Day2 PELICAN FANCLUB-千葉市並行- × ゼロ距離配信ライブ DREAM DAZE(無観客配信ライヴ)
12/18(金)open/ start 19:30/20:00
Ticket:¥2,500
※詳細情報は後日発表いたします。
PELICAN FANCLUB オフィシャルサイト http://pelicanfanclub.com/