人の話は聞くけど、自分で決める。人のせいにはしないし、立ち止まらない 。それをロックンロールと呼ばせて欲しい
この時代にあえて、ロックンロールアルバムです!と言い切ることに関してはどう思っていますか?
「まだ言ってんだと思われるかもしれないけど、ひねくれてるわけじゃなく、素直に、みんなと違ってもいいかって思えてきたんですよね。例えばユニゾンのイベントでも、9mmのトリビュートでも、こんなに古典的で泥臭いバンドだけど、カッコいいってみんなに認めさせることができたんじゃないかな。〈Rollers Anthem〉の歌詞にも書きましたけど、すべてのロックンロールがこれだと定義するわけじゃなくて、自分たちがこれをロックンロールだと思うなら、そう呼ぼうって」
THE KEBABSもそうですけど、いろんなことをやることで逆に、じゃあフラッドってなんなんだって、見えてくる部分があると思いますか?
「そうですね。来年結成15周年で、それがはっきりした形のアルバムを出そうと思ってるから、まだ途中にいる感覚だけど、かなり近づけた感じがしますね。そしてそれは、いろいろ他のことを経験して、フラッドのいいところや気持ちよかったこととかが見えてきたからですよ」
そう。だからこのアルバム、そういうバンドで音を鳴らす喜び、みたいなものに溢れていて。コロナ禍の真っ只中で作られたとはあんまり思えないですよね。
「レコーディングが2回に分けて行われたので、去年のうちに終わってた曲もあるし、あと、コロナの期間にサテツ(註:佐々木とアオキテツによるユニット)をやって、リモートでアルバム作ったから、コロナに対する怒りややりきれなさは、そっちで全部解消しちゃいましたね。その時すでにデモがいっぱいあったし、『2020』ってタイトルも、去年のうちから、デモを格納してたフォルダの保存名になってたし。そんな世界の状況とか関係なく、強いアルバムにしたかったので」
しかし今更ですけど、よくそんなにデモが作れるようになりましたよね。
「最近よく言われますね。今デモだけだったら百何十曲くらいあるんですけど、ユニゾンの斎藤(宏介)さんに話したら、めちゃくちゃ驚かれました(笑)」
そりゃそうだね。
「今も多い時は毎月10曲ぐらい作ってますからね。でも最近は、できてすぐにデモを送っても、みんな聴いてくれないっていうことに気づいたので(笑)小出しにしてます」
6年ぐらい前は、レコーディングの日になっても曲が書けてなくて、スタジオに籠もってずーっと書いてたのに!
「ねえ。俺もなんで書けなかったのか、ちょっと思い出せなくなってきました(笑)。でも今思うと、あの時もデモはあったんですね。でもそれが、いい曲になる可能性を感じてなかった。その1曲に自分の全宇宙を入れて、完璧な1曲を作ろうとしてた。それは悪いことじゃないのかもしれないんだけど、たぶん、誰も信じることができてなかったんだと思うんですよね。今はメンバーが固まって、このバンドが続いていくことを信じれるようになった。メンバーに『一応死ぬまでやる気だよ。バンドってそういうもんだよね』って言えるようになった。そう思うと、すごく気が楽になって」
任せることもできるしね。
「でも来年は15周年でもあるから、珠玉の1曲を書くモードに入ってみようと思ってますけどね。ていうか最近よく思うんですけど、すべてが糧になってるんだなって、めちゃくちゃ実感するんですよ。メンバーの失踪も脱退も、辛かった思い出も別れも、それがあったから今がある。だから身の周りに起きてること、すべて否定しちゃいけないな、と思っていて」
スピッツからカニエ・ウェスト、高田渡にマディ・ウォーターズまで、どれも好きな自分でいいしね。
「田淵さん(田淵智也/UNISON SQUARE GARDEN)にも言われました。『いろんな価値観がオッケーでいいんだって、佐々木といると思えるわ』って。別にそういう部分を伝えたいわけじゃなかったけど、一緒にいるうちにそう思えるって言ってくれると、俺もそういうモードになれてたのかな、とも思うし」
でも過去のそういう気持ちを忘れてるわけじゃなくて。
「もちろんそうですよ。あの時のヒリヒリした気持ちは忘れてないし、逆にこんな状態だからこそ顔を出したりする。それに俺、まともな部分と狂ってる部分が共存してると思うんですよね。曲が書けないって24時間スタジオから出てこないのもそうだし、百何十曲デモ作っちゃうのもそう。さわおさん(山中さわお/the pillows)とイマイさん(イマイアキノブ)にはそれをすごく言われますね。イマイさん、このコロナでかなりセンシティヴになってて。こないだ配信ライヴやるっていうから観に行ったら、泥酔して立ち上がれなくなってて(笑)。店の人たちみんな引いてるから、俺が肩貸したんですけど、ベロベロなイマイさんに『亮介くんはほんとに狂ってるよ。こんなに演奏したくて、こんなに曲作る人は他にいないよ』って」
ははははは。
「あえて言うなら、間が取れない(笑)」
でも、絶対的なバンドへの信頼、を取り戻した今だからこそ、それを佐々木亮介が引っ張る図式はとてもいいんじゃないかな。
「そうですね。なんか、コロナになってすごく思うのが、いかに周りに合わせないか、が大切だと思うんですよね。いい状況だろうが悪い状況だろうが、自分で決める。人の話は聞くけど、自分で決めるし、人のせいにはしない。そして立ち止まらない。せめてそれを、ロックンロールって呼ばせてほしい。ボブ・ディランが〈ライク・ア・ローリング・ストーン〉って唄った言葉の意味が、今、すごくわかる気がします」
文=金光裕史
撮影=岡田貴之
NEW ALBUM『2020』
2020.10.21 RELEASE
■初回限定盤(CD+DVD)
■通常盤(CD)
〈CD〉 ※初回限定盤・通常盤共通
01 2020 Blues
02 Beast Mode
03 ファルコン
04 Super Star
05 天使の歌が聴こえる
06 Free Fall & Free For All
07 人工衛星のブルース
08 Rollers Anthem
09 ヴァイタル・サインズ
10 Whisky Pool
11 欲望ソング(WANNA WANNA)
12 火の鳥
〈DVD〉 ※初回限定盤のみ
2020.06.28 A FLOOD OF CIRCUS 2020
at SHIBUYA TSUTAYA O-EAST
00 Behind The Scene
01 Flyer’s Waltz
02 Dancing Zombiez
03 The Beautiful Monkeys
04 Sweet Home Battle Field
05 春の嵐
06 Honey Moon Song
07 スーパーハッピーデイ
08 Quiz Show
09 2020 Blues
10 Beast Mode
11 Lucky Lucky
12 ミッドナイト・クローラー
13 シーガル
14 ベストライド
15 Center Of The Earth
16 ヴァイタル・サインズ
a flood of circle オフィシャルサイト http://www.afloodofcircle.com/