将来というか、未来のことを考えるのが今でも苦手だけど〈でも音楽はやりたいしな〉と思いながら続けていました
まあ、そうですけど。大学に行かずに何をしてたんですか。
「いや、とくに何もせずに。ただ夢遊病のように過ごしてました。音楽は作ってましたけどね……ダメでした。というか、そういう本質的な部分は今も全然変わってないんですけど。今は環境が変わって良かったなと思ってます」
環境も良くなかったんですか?
「というか、どうすれば良くなるのかもわからなかったです。当時なんて〈いい曲作ったからいっぱい聴いてほしいけど、うまくいかないしな〉という気持ちもあって。そこに向かってガリガリやっていくのも旨味がないというか……いろいろな作戦を立てても、結果、空振りに終わることのほうが多いものだし。それをやる能力もないわけなので、無為に過ごしてしまいやすかったんじゃないですかね、という感じです」
うーむ。その頃、将来についてはどう思ってました?
「どうとも思ってなかったです」
どうとも、ですか。
「はい、全然。将来というか、未来のことを考えるのが今でも苦手で。最近までライヴのブッキングとかも自分でやってて、いろんなライヴハウスと『じゃあ何日にライヴ取ります』とスケジュールを組むことが苦痛でした。未来のことを考えるのが本当に辛くて。〈1ヵ月先のこととかわかんないじゃん〉ってずっと思ってたんですけど」
ん~、それだと、どんな仕事をやっていても大変ですね。
「そうですね。なので、そういうところも含めて、たぶんメジャーのほうが向いてるだろうなと思っていたところもあるんです。きっと管理が上手な人がいたほうがいいだろうっていう」
管理が上手な人! あははははははは!
「いや、笑われますけど!! そういう能力ってインディペンデントでやるためには重要な人間力だと思うんです。本当に、それにめちゃくちゃエネルギーを使うし。そうやって笑われますけど大変なんだよ、っていう気持ちがあります……はい」
あ、はい。すみません。ただ、そうしてみると、吉田さんが見えている世界は、確実に変わってきているわけですよね。
「当時から考えるとそうですね。環境が変わってよかったです」
その環境が変わるところまで持ってきたのも、自分たちの努力があってのことじゃないですか。
「……それを努力というのかはわからないですけど……それぞれの理由でダラダラと音楽を続けてきたから、バンド結成の時に出会いがあったし、〈ここで辞めるんじゃないか〉っていうタイミングも通り過ぎてはいるので。そこを踏み越えてきたからこそ今に繋がっているのはあると思います」
「鉄の意志で突き進んできた」という感じではなかったと。
「そうですね。僕なんか〈先のことは考えられない、でも音楽はやりたいしな〉と思いながら続けていました。ドラムの山岸(りょう)も留学とか行ったんですけど、でも『なんとなく音楽はやりたいと思った』って聞いたことがあるし。鷲見(こうた/ベース)にも『1回〈バンドはもう終わりかな〉と思ったタイミングはあった』と聞いているので……。あ、そうだ。先ほど『努力があってのこと』とおっしゃられましたけど、あとはめちゃくちゃ運がよかったのもあると思うので。頑張ったからどうにかなったぜ、みたいな話ではないと思うんです」
いやいや。運も実力のうちですよ。
「……運も実力のうちに入れるんだったら、実力だと思います」
面白い人ですね(笑)。
「うれしいです。面白くないはずなので。インタビューで面白い感じになれれば、うれしいです」
じゃあ吉田さん自身は今後もし自分が変わっていけるとしたら、どんなふうになっていけたらいいと思いますか?
「たとえば音楽をやる上では、もっと自由になれるように、技術力を高めるとかが必要になってくると思うし。言葉を書く者としては、社会というものの中にもっと人間を見つけていかなければいけないと思います。でももっと大きい視点で言うのであれば……自分の目の前にあるものとちゃんと関係していくことが必要なんじゃないかなと思ってます。抽象的なんですけど」
それは音楽だけではなく、どんなことに対しても?
「そうですね、それはもう全部、こう……心臓を動かして、いち社会人として税金を払って暮らしていくっていう中ではそれをやってったほうが絶対面白いと……思います(笑)」
税金ですか(笑)。真面目な人ですね。
「はい。そうですね……と言うと、真面目な人に怒られるかもしれないですけど。いい加減なところはいっぱいあるんですよ」
うーん、じゃあ変わっていけるとして、「バンドでバカ売れしたらうれしいです」みたいな気持ちはないですか。
「売れたほうがいいなとは絶対的に思っています。親にも楽させてあげられるし、ここまで関わってきてくれた人たちに、恩返しというとアレですけど、いい感じにさせることができるし。ただ、それは目的ではないので……ちょっと申し訳ないですけど……(マネージャーのほうを見ながら頭を下げる)」
マネージャー「(笑)まぁ、でも売れたほうがいいよ。ずっと続けられるから」
「そうですね。これから連続性を持って音楽を、できるだけ楽に続けるためにも(笑)。最終的に長く健康に続けていられるバンドでいたいというのは3人の共通認識としてあります」
もう健康を気にしてるんですか(笑)。
「や、体調的にもメンタル的にもそうです。そのほうが普通に人生のクオリティが上がると思います」
編集部・白崎「あの、〈トーチソング〉で〈いつかきっと全部消えてなくなるから〉と終わりがあることもわかっているような描写がありますけど。実際、終わりを感じることはあるんですか?」
「そうですね……たぶん僕は〈終わりが見えていないからこそ長く続けていきたい〉という気持ちが湧き上がってるんだと思っていて。音楽を続けていくことや、それを自分の思いひとつでやっていこうと思うと、むちゃくちゃエネルギーが必要だし、それが自由にできる環境がいつもあるとは限らないし。それで音楽ができなくなったり、音楽をやらなくなった人もたくさん見てきてるんです」
なるほど。ここまでの間にね。
「はい。でも今集まってるメンバーは、音楽は好きなので、やりたいんです。それを楽しくやるための環境をどうにか作っていきたいですね。だから、やっぱり売れたい。目的ではないけど、売れるといいことがあるんだ、っていうのは思っています」
文=青木 優
NEW MINI ALBUM『がらんどう』
2020.09.23 RELEASE
01 トーチソング
02 TAPIOCA
03 スターイーター
04 ころがる
05 夜明けのうた
06 グッドバイ
07 夢が覚めたら
ズーカラデル オフィシャルサイト https://gooutzoo.com/