常田真太郎 Interview
けっこうお久しぶりですよね。
「今年に入ってからお会いするの初めてですね」
ツアー〈POPMAN’S CARNIVAL vol.2〉の最終日、熊本公演が無観客ライヴ生配信になったのが2月28日で。家で観てました。
「ちょうど九州を廻ってる時に、コロナの影響でイベント自粛の動きが高まってきて。何とか宮崎公演を終えたあとで、熊本はもう無理だからってことで東京へ帰ろうとしてたんですけど、メンバーは全員いるし機材もあれば会場もあるし、最終日はたまたまドキュメンタリーを撮る映像スタッフもいたので『やれることをやろう』と」
急遽、決まったのにTwitter、LINE、インスタ、YouTubeで配信されたのがすごいですよね。
「いろいろ試してみたんですよ。それぞれに画質や音質の違いがあったので、それを逆手に取って、どのキャリアで観るかはお客さんに選んでもらおうと」
それぞれに違ったアングルで撮られていて、受け手としても面白かったです。
「スタッフが本当にみんなプロフェッショナルで、これだったらできる、できないという判断もすごく早かったし。いろんな小さな奇跡が重なってできた配信ライヴだったなって、今でも思います」
コロナ禍における配信ライヴとしては、かなり早いタイミングだったしファンのみならず多くの人が楽しんでいたと思います。一方、6月の有料配信ライヴ〈Streaming LIVE "a la carte 2020" ~実際にやってみた!〜〉は、どこまでクオリティの高いライヴ配信をやれるかという実験的な要素もあって。
「そうですね、熊本でやった生配信と同じことはできないなっていう、ハードルはだいぶ上がりましたね(笑)」
無観客ライヴだと、かえって身体に力が入りすぎるそうですね(笑)。
「そうなんですよ。終わったら背中がすごく痛くなってて。やっぱり反応が目の前で感じられないからこそのオーバーヒート状態になっちゃうんでしょうね。お客さんが目の前で乗せてくれた時って、アドレナリンみたいなものが出てるから疲れを感じないんですけど」
逆に力の抜きどころがわからなくなるというか。
「そうですね、無観客ライヴだと変にずっと緊張してる状態になりますね。お客さんにとっても、ライヴの価値ってすでに世の中に定着していると思うんですけど、お金を払って観る配信ライヴの価値ってやっぱりまだ定着してないと思うので、そこはこれからの課題かなと思うところです」
ちなみに常田さんはライヴ以外の自粛期間は何をしてました?
「当たり前ですけど、ほぼ家族と一緒にいましたね。ツアーで家を空けてることが多かったので、わりと(家族から)歓迎されていたのが良かったですね(笑)。毎日、午前中に子供と公園に行って、午後からは勉強を見てあげて、夜の11時とか12時くらいから仕事を始めて。曲は『作れる時に作っておいてね』みたいな感じで言われてたので、気持ち的には〈これは今、仕事期間? それとも休み期間?〉って感じはありましたけど、とりあえず自由にデモをいっぱい作ろうと。ただ、相方のタクヤから連絡をもらった時に『ちょっと上手く進まないや』って言ってたので、彼はこの自粛期間を難しい時間として捉えてるんだなと思いました」
大橋さんはナーバスになってたんですかね。
「だと思います。だからといって『頑張れよ、お前』とはならないし、ゆっくりしてねとは思ってましたけど。その間、タクヤとは2ヵ月半くらい会ってなかったのかな、テレビ出演とかでちょっと会うくらいで。ただ、リモートで打ち合わせもやったし、タクヤの誕生日の5月9日にはサプライズで誕生日会をやったりしました。いろんなスタッフにも声かけて、みんなでお祝いしました」
新曲「あけたら」に関しては?
「そろそろ曲作りをやらなきゃね、って話になったんですけど。曲ができないと言ってたタクヤが『この時期にしか書けない曲を残しておきたい』と言ってくれたのが嬉しくて。詞曲を書いてみたって言うから、6月にプリプロのスタジオで会って初めて聴いて。ちゃんと3番まで今の原型があったので、急ピッチでアレンジしました」
この曲は「あけたら」という4文字のリフレインにいろんな人のいろんな状況や想いが込められている気がしましたが、常田さんは聴いてどう思いました?
「タクヤはこんなこと考えてたんだなぁ、と思いました。『曲が書けない』って言ってたから、大丈夫かな?と思ってましたけど。この曲を聴いて、なるほどなって。そこは、らしいなと思いました」
最近は人と別れる時の挨拶で「またコロナが収まったらご飯でも行こうね」なんてよく言いますけど、それがいつになるかわからない不安も、でもぼんやりとした希望もこの曲には入っていて。あえて〈ぼんやりとした希望〉にとどめるところに今のスキマスイッチとしてのスタンスが明確になってる曲でもあるというか。
「そうかもしれないですね。やっぱり、この期間にいろんな人がいろんな曲を作ってて。Takaくん(ONE OK ROCK)とか絢香ちゃんがやってる【re:】プロジェクトの〈もう一度〉って曲とか、カッコいいな、リモートでここまでやれるんだなとか思ってたんですけど。うちがやるとなるとそうじゃないなというのは感じましたね、やっぱり隣りの人に聴いてもらいたいなって」