このタイミングでタクヤがこういう曲を作ってきたら、これなんですよ。「強いメッセージを埋め込もうよ」なんて、絶対にしちゃいけない
今のこの社会情勢の中でどんな切り口で曲を発信するのかって、すごく皆さん考えられたと思うんですけど。
「もちろんそこに切り込んでいくこともできたけど、やっぱりこのタイミングでタクヤがこういう曲を作ってきたら、これなんですよ。『ちょっとここは強いメッセージを埋め込もうよ』なんて、絶対にしちゃいけないことだと思ったんですよね。タクヤが書いたエッセイに近い曲をスキマスイッチの曲として仕上げていく、それだけで十分で。歌詞をブラッシュアップしていく時にもしきりにそれは話してましたね、『ここは本当にそう思ったんでしょ?』『そう思った』『じゃあこのままで行こうよ』って。今こうして〈あけたら〉みたいな曲ができたからこそ、次はどこにでも踏み込めるとも思いますし。攻撃的な曲も書けるかもしれないし」
いろんな人のいろんな想いをシェアするような役割が今のスキマスイッチにはあるのかもしれないですね。例えばテレビの歌番組の生出演では、ご自宅にいらっしゃるファンの方の映像をバックに唄われてたじゃないですか。リモート応援参加という形で。
「その時に唄った〈全力少年〉もそうだけど、自分たちのために書いた曲をみんなが自分のものにしてくれてるという感覚に徐々になってきて。あの演出もテレビ局の方が考えてくださって、自分たちの出演時間も午後2時から3時っていう親子で観ていただけるファミリー時間だったし(笑)。自分たちがそうなりたいとか最初は思ってなかったけど、〈いや、うちはそうじゃなくてロックに行きたいです〉とかも別に思わないし。そういう歳でもないしね」
自分たちもキャリアと年齢を重ねながら、求められる役割を引き受けるじゃないですけど、そういう部分もあると。
「いや嬉しいことですよ、スキマスイッチにしかできないことができてるとしたら。昔あれだけ個性がないとか言われ続けたうちらがね」
個性がないって言われてアフロにしてね(笑)。
「ほんとそう(笑)。だからこそ今はこの立ち位置が嬉しいなと思うし、そこに甘んじちゃいけないなとも思いますけどね」
今回のセレクションアルバム『スキマノハナタバ 〜Smile Song Selection〜』のコメントで「作ってきた曲のバラエティーも広がってきた」と常田さんが書かれていましたが。いろんな聴く人のことが見えるようになったからこそ、いろんな曲が生まれてきたんだと思いますし。
「昔は明るい曲ができないとか、本当に悩んでいましたからね。でも今は昔みたいに背伸びをしたくないし、曲を作る時に嘘をつくとエネルギーがいるなとも思うから。別にそんなに嘘をついた覚えもないですけど」
無理してた?
「新しいものを取り入れたくて取り入れてたっていう意味では無理してたと思います」
今よりも欲が強かったからじゃないですか。
「まぁ、もちろん欲は今もありますよ(笑)。ありますけど、いやいや、うちはうちでしょって思えるようになった」
思えば、過去に互いにソロ活動してた時は、常田さんはプロデューサーとしても世に名を馳せたいというか、そういう部分もあったと思うんですよ。
「うんうん、ありましたねえ(笑)」
今はもっと自分の音楽活動を通じて誰かの役に立つことを意識して活動されてる気がするんですね。
「そうかもしれないですね、使命感ってほどでもないんですけど」
配信ライヴをやってみて得た情報を、同世代の音楽関係者たちにシェアし合うようなこともそうだと思うし。
「音響スタッフだったり、イベンターだったり、いろいろと情報交換してね。やっぱり同世代とか、同じ地元の仲間とか、そういう括りがあると気兼ねなく話せたりする部分も多いと思うので」
そうですね。
「でも、もともとそういう性分なのかも。自分が率先して引っ張っていくより、底上げのほうが好きなので。だからプライベートの付き合いの場でも、好きなミュージシャンとして自分の名前を挙げてくれるのは嬉しいし、仕事じゃなくてもそれが誰かのためになるんだったらピアノを弾きに行きたいって思うし。音楽でもサッカー関連でも人との繫がりの中でできることがあればやっていきたいなっていう気持ちがあるので」
水面下での目立たない動きもされてるみたいですけど、それをSNSとかで報告するでもなく。やっぱスターは違うなと(笑)。
「違う違う、スターじゃないからできるの(笑)」
とはいえ、まだまだ個人的な欲もあると。
「ありますよ!」
どうなりたいの?
「やっぱりもっとたくさんの人に『いい曲だね』って言われたいですよ。負けたくない気持ちはゼロじゃないし。そこはたぶん一生消えないからこそ、周りにも『お前らも頑張れよ』って言い合いながらやっていくんじゃないですかね」
こうしてインタビューしてても話の内容がだいぶ変わってきたというか、大人になったんでしょうね。
「お互いにね(笑)。でも小田和正さんがよく言ってるのが、50代60代には、50代60代なりの恥ずかしさが今でもあると。小田さんは今70代だけど、60代の頃のインタビューは読めないって言うんですよ(笑)。でも一番読めないのは40代の頃のインタビューらしいんです」
へぇ。何で?
「ほんっとにギラついてたみたいで(笑)。だから小田さんを見てると、そういうものなんだ、いいんだこれで、って思いますね。あの時は若かったから思い出したくない!とかじゃなくて、それってダメなことじゃ全然ないなと思って。だから今日こんな話してて、これからまた10年経って、『あの時、大人になったねって言ってたけど……』」
まだまだ全然だったねって?(笑)。
「そうそう(笑)。わかったようなこと言ってて恥ずかしい〜!って、それでいいんじゃないかな」
文=上野三樹
『スキマノハナタバ ~Smile Song Selection~』
2020.08.19 RELEASE
■初回限定盤(CD+DVD)
■通常盤(CD)
〈CD〉 ※初回限定盤、通常盤 共通
01 全力少年 Remastered
02 夏のコスモナウト
03 青春
04 ガラナ
05 ミスターカイト
06 星のうつわ
07 かけら ほのか
08 Hello Especially
09 LとR
10 トラベラーズ・ハイ
11 Ah Yeah!!
12 ゴールデンタイムラバー
13 晴ときどき曇
14 あけたら (新曲)
〈初回限定盤DVD〉
「あけたら」Recording Making
「スキマノハナタバ ~Smile Song Selection~」Special Interview
『スキマノハナタバ ~Smile Song Selection~』特設サイト
https://sp.universal-music.co.jp/sukimaswitch/sukima-flowerlist-2/
スキマスイッチ オフィシャルサイト https://www.office-augusta.com/sukimaswitch/