歩んできた道、物事に対する姿勢、貫いてきた信念、大切にしてきた思い、これからへの決意――そういったものが、SUPER BEAVERのメジャー再契約、第一弾シングル「ハイライト / ひとりで生きていたならば」にはすべて詰まっている。
収録曲は3曲。熱っぽいバンドの音が重なり合うイントロを駆け抜け、渋谷の言葉が突き抜けていく「ハイライト」。ストリングスを交えて人との出会いが唄われる「ひとりで生きていたならば」。そして、10年前にメジャーレーベルに所属していた時の楽曲「まわる、まわる」。バンドの歩みが強く打ち出された楽曲ではあるが、決して自己満足で終わるものではない。言葉の端々、音のひとつひとつから、聴いた人にさまざまな感情を湧き上がらせて、背中を押してくれたり、前を向くきっかけを与えてくれるのがSUPER BEAVERの楽曲だ。
2005年に結成され、2009年に鳴り物入りでメジャーデビューを果たしたSUPER BEAVER。まだ10代、20代前半だった彼らは、周りの大人に翻弄され、挫折を味わい、たった3年でメジャーを離脱した。4人でゼロから再スタートを切り、音楽(楽曲のみならず、CD自体も)の作り方を知り、人との向き合い方を学び、自分たちにとって何が大切なのか、どういうふうにバンドを動かしていくべきなのか、それぞれの目と耳と手と足で、ひとつひとつ感じ取ってきた。
Zepp Tokyo、日本武道館、代々木第一体育館――少しずつ会場が大きくなり、ドラマ主題歌やさまざまなタイアップにも抜擢されるようになるが、それはラッキーだったわけではない。むしろ、メンバーの病気など、彼らの周りには常に逆境という壁が立ちはだかっていた。今回の表題2曲にはどちらも「悔しい」「哀しい」「虚しい」という感情が込められている。
「悔しかった過去があるから嬉しいと思える今があるわけで。だから苦しさを忘れさせるための音楽では決してないと思ってます。むしろ向き合うべきものですね」(渋谷龍太/音楽と人7月号インタビューより)
「ポジティヴを目指せば目指すほど、何の障害もなくうれしい場所にたどり着くのってどうしても難しくて。絶対どこかで躓いてしまう瞬間があって。それを無視できないというか、忘れたくないというか」(柳沢亮太/音楽と人7月号インタビューより)
どんなに好機であれ、幸せな瞬間であれ、この感情を決して無視しない(できない)ことが、SUPER BEAVERの曲にある強い説得力のひとつだ。目の前に立ちはだかる壁から目を背けずに向き合うことで、そのマイナスな感情を超える歓びを手にして今がある。
メジャー再契約の発表の際も、彼らはそれを体現している。本来は15周年を記念したフリーライヴが行われる予定だったが、世の中の状況を加味してライヴは中止。試行錯誤を重ね、メンバーそれぞれの自宅から生配信という形が取られたが、諸般の事情により、参加メンバーは2人のみ。悔しさが滲む生配信となったが、結果としてフリーライヴよりも大勢の人が視聴できる形となり、コメント欄には、自分のことのようにメジャー再契約を喜ぶ、祝福の言葉で溢れた。完全な形ではないからといって、諦めることなく、その状況の中でできることを探し、実行したことで、彼らの気持ちがきちんと伝わったからこその光景であり、そのドタバタの発表劇すら「自分たちらしい」と言葉にできることが、SUPER BEAVERの強さにも繋がっている。
しかし、SUPER BEAVERは根っからのポジティヴ野郎だけで構成されているわけではない。フロントマンの渋谷龍太も作詞作曲を担当する柳沢亮太(ギター)も、どこか自分の弱さを理解しながら、強くあろうと意識している。それを根っから前向きな上杉研太(ベース)が発破をかけ、後ろから藤原“32才”広明(ドラム)が支える。この絶妙な4人のバランスが、バンドを常に前へ前へと動かしてきた。それが、SUPER BEAVERの曲の器をデカくし、さまざまな感情を掬い上げながら、多くの人の心に響いていくのだ。
そして、インディーズで4人で再スタートを切ってから、彼らはたくさんの人と出会いを重ねてきた。マネージャー、ライヴハウスの店長、イベンター、ラジオやテレビのスタッフ、そして聴いてくれるあなた――。4人分の喜びが、5人分、10人分……と増えていき、大きな感情のうねりが彼らの原動力になっていった。SUPER BEAVERにとって、バンドで音を鳴らすということは、そこに人がいなければ成り立たない。だからこそ、〈メンバー4人が満足できればOK〉というところで決して終わらせず、どう相手に届けるか、を常に意識している。1人で遊ぶよりも、2人で遊んだほうが楽しい、という小学生のような思考だが、ここ数ヵ月、1人の時間を多く過ごした人は、深く納得できるのではないだろうか。
結成15年、メジャーを離れて9年。すべての歴史が、今のSUPER BEAVERを作り上げ、さまざまな感情と圧倒的なエネルギーを内包しながら、メジャーのフィールドで、これまでよりも多くの人に向かって鳴らされていく。しかし、これが終わりでも始まりでもない。出会ってきた人、感情とこれからも共に、彼らの旅路は続いていく。
文=竹内陽香
NEW SINGLE「ハイライト / ひとりで生きていたならば」
2020.06.10 RELEASE
01 ハイライト
02 ひとりで生きていたならば
03 まわる、まわる
「LIVE VIDEO 4 Tokai No Rakuda at 国立代々木競技場第一体育館」(DVD/Blu-ray)
2020.05.27 RELEASE
〈収録内容〉
2020年1月12日 国立代々木競技場第一体育館
SUPER BEAVER「都会のラクダ “ホール&ライブハウス+アリーナ” TOUR 2019-2020 ~スーパー立ちと座りと、ラクダ放題~」 ライヴ映像
01 それでも世界が目を覚ますのなら
02 青い春
03 閃光
04 ラヴソング
05 irony
06 正攻法
07 秘密
08 まわる、まわる
09 your song
10 人として
11 歓びの明日に
12 予感
13 27
14 東京流星群
15 嬉しい涙
16 全部
17 美しい日
en1 シアワセ
〈特典映像〉
2019年3月から10月にかけて開催された「都会のラクダ “ホール&ライブハウス” TOUR 2019~立ちと座りと、ラクダ放題~」の密着オフショット映像を約40分収録
SUPER BEAVER オフィシャルHP http://super-beaver.com/