【Live Report】
BUCK-TICK THE DAY IN QUESTION 2019
2019年12月29日 at 国立代々木競技場第一体育館
「どんなに夢を見ても 気付けばいつも独りさ」
ラスト「LOVE ME」の歌詞が心に響いた。彼らがずっと唄っている曲ではあるが、なぜか、この日は特に。
BUCK-TICKの〈THE DAY IN QUESTION 2019〉は、今年、ツアーとして開催され、高崎、大阪、名古屋を廻り、ファイナルがここ東京だった。東京では毎年12月29日、日本武道館というのがここ20年近く恒例となっていたが、今年は武道館が改修で使用できないため、会場を国立代々木競技場第一体育館に移して行われた。
昨年の同じ日を思い出す。櫻井敦司が急病となり、何本かのライヴ（４公演）を延期した後、その復帰する場所となった日本武道館。永遠はないんだ、ということに一瞬気づかされ、より今この瞬間を大事にしようと思わされたあの日から1年。今年は延期したライヴの振替公演と、幕張メッセでの〈ロクス・ソルスの獣たち〉、そしてこのツアー以外は制作期間となり、ライヴの本数は少なかった。それゆえ、ことさらバンドを求める思いが強かった気がする。
セットリストは4会場ともほぼ同じ。「夢魔〜The Nightmare」から始まることを強く意識したようなそれは、1回目のアンコールのラスト「無題」まで、まるで非現実な暗黒のサーカス。誰かの悪夢に引きずり込まれたかのよう。死装束の魂のまま、愚者はゆく。最後までその世界観はブレなかった。
1回目のアンコールまで、「唄」と「SILENT NIGHT」「スピード」以外は、BMGファンハウス（現アリオラジャパン）移籍後の楽曲が中心。雪の演出が「Snow white」から「SILENT NIGHT」への流れを生んだことを考えれば、実質2曲。これは、BUCK-TICKの持つ世界観をメンバーが認識し、それをあえて意識して形にしてきたのが、移籍以降のタイミングだったからだろう。ゆえに〈普段のツアーではやらない懐かしい曲をやる〉という〈THE DAY IN QUESTION〉のコンセプトにしては、そのトーンの近い楽曲が並んだ。本編は初日の「New World」が「独壇場Beauty-R.I.P.-」に入れ替わったのみ。逆に2回目のアンコールは、この日の4曲の他に「MISS TAKE -僕はミス・テイク-」と「GLAMOROUS」を加えた6曲を日替わりで披露していた。
そんな中、アンコールで披露された新曲「堕天使」。どこかで聴いたことのあるようなグラムっぽいギターから始まるその曲は、シンプルなビートを刻むロックンロールのように感じるが、どこか妙な違和感が残る。音楽と人の次号、表紙巻頭のインタビューで今井が語っているが、それはおそらくこの楽曲の構成にある。今井という男の得体の知れないアバンギャルドなアイディアに改めて驚かされるが、どんな楽曲でも5人で鳴らすとBUCK-TICKになる、という絶対的な価値観あればこそ、だ。それが今井に妙な遠慮をさせることなく〈なんでもあり〉な楽曲を生み出させる。その圧倒的な信頼が、他の誰にも真似できないバンドの音となる。そしてこの信頼は、ただ30年続いてきたから、もしくは高校時代からの仲間だから、ではなく、5人が日々バンドのことを考え、毎日努力してきたからこそあるものだ。よくこのバンドのことを奇跡だとか呼ぶ人もいるが、そうではなく、この5人はバンドであり続けるために日々努力しているのだ。このステージ上から感じられるタフなバンド感は、今も研鑽を積んでいるがゆえの賜である。
そしてそれは、バンドという夢をずっと見続けていたいからだ。5人で音を鳴らしていたい、そしていろんな風景を見ていたい、という思いがそうさせている。その夢が覚めないように、と願いながら。その思いが僕たちと繋がっている。そう、みんな〈気付けばいつも独り〉なのだ。ステージからメンバーが去り、会場が明るくなった瞬間、現実に戻る。夢は覚めて、独りの自分に気づく。だからこの瞬間の大切さを、ずっと続いてほしいという強い願いを持つのだ。昨年、永遠はない、と気づいた感覚もそうだ。今のBUCK-TICKにはそういう刹那がリアルに現れている。
「また会いましょう、必ず」
櫻井はそう言ってから「LOVE ME」を唄った。30年前に作った時は、何も考えずに綴っていたかもしれないが、歩んできた足跡が、その言葉をリアルなものに変えた。そして人はいつも独りだけれど、バンドはそうではない、ということも知った。誰もが独りだけれど、いつか夢は覚めてしまうけれど、ここには確かな仲間がいる。そして愛してくれるみんながいる、ということも。
2020年は夏にアルバムをリリース、そして全国ツアーも控えている。さらに12月29日は日本武道館での〈THE DAY IN QUESTION〉も発表された。そういう先々の約束が、未来への希望にもなる。いいライヴだった。
文＝金光裕史
写真＝田中聖太郎（★）、立脇卓（▲）、渡邊玲奈（■）（田中聖太郎写真事務所）
【SET LIST】
01 夢魔-The Nightmare
02 唄
03 獣たちの夜
04 Jonathan Jet-Coaster
05 羽虫のように
06 絶界
07 細胞具ドリー:ソラミミ:PHANTOM
08 PINOA ICCHIO -躍るアトム-
09 月下麗人
10 Snow white
11 SILENT NIGHT
12 Alice in Wonder Underground
13 スピード
14 独壇場Beauty -R.I.P.-
15 FLAME
ENCORE 01
01 堕天使
02 RONDO
03 無題
ENCORE 02
01 Coyote
02 ドレス
03 悪の華
04 LOVE ME
NEW SINGLE「堕天使」
2020.01.29 RELEASE
01 堕天使（作詞：櫻井敦司 / 作曲：今井寿）
02 Luna Park（作詞：櫻井敦司 / 作曲：星野英彦）
トリビュート・アルバム『PARADEIII ～RESPECTIVE TRACKS OF BUCK-TICK～』
2020.01.29 RELEASE
01 ICONOCLASM / BRAHMAN
02 青の世界 / 八十八ヶ所巡礼
03 形而上 流星 / minus(-) featuring 藤川千愛
04 天使は誰だ / GRANRODEO
05 JUPITER / シド
06 Lullaby-III / 黒色すみれ
07 愛の葬列 / DER ZIBET
08 LOVE ME / Cube Juice
09 唄 / 椎名林檎
10 NATIONAL MEDIA BOYS / DIR EN GREY
11 ミウ / 坂本美雨
12 惡の華 / GARI
13 JUST ONE MORE KISS / 藤巻亮太
LIVE
「FISH TANKer's 」and 「LOVE & MEDIA PORTABLE」ONLY LIVE
2020.5.23（土）東京：Zepp Tokyo
2020.5.24（日）東京：Zepp Tokyo
2020.5.31（日）福岡：Zepp Fukuoka
2020.6.6（土）大阪：Zepp Osaka Bayside
2020.6.7（日）愛知：Zepp Nagoya
2020.6.13（土）宮城：仙台GIGS
2020.6.14（日）神奈川：KT Zepp Yokohama
2020.6.21（日）北海道：Zepp Sapporo
『音楽と人』 2020年2月号
2020年1月7日(火)発売
表紙＆巻頭特集 BUCK-TICK
XIIX、KinKi Kids、豊洲ナイトカーニバル、東京アコースティック百景 vol.3、UNISON SQUARE GARDEN、ORANGE RANGE、眉村ちあき、阿部真央、ネクライトーキー、tricot、コレサワ、ニノミヤユイ、加藤ひさし（THE COLLECTORS）、Kitri
HMVで購入→http://www.hmv.co.jp/product/detail/10504330
タワーレコードで購入→https://tower.jp/item/5004533
アマゾンで購入→https://amzn.to/391NeJX
7ネットショッピングで購入→https://7net.omni7.jp/detail/1216531936
楽天ブックスで購入→https://books.rakuten.co.jp/rb/16172892
音楽と人 2020年2月号増刊『PHY Vol.15』
2020年1月28日（火）発売
表紙＆巻頭特集 BUCK-TICK
DEZERT、MUCC、cali≠gari and more…
HMVで購入→https://www.hmv.co.jp/product/detail/10515631
タワーレコードで購入→https://tower.jp/item/5002353/
アマゾンで購入→https://amzn.to/2PQUC3f
