【Live Report】
KEYTALK〈DON'T STOP THE MUSIC TOUR 熱狂パワフルKEYTALK 2019. ~本当にダイジョーブ?? 爆発寸前!! 武正の足爆弾~〉
2019年12月11日 at Zepp Tokyo
もう一度出会ったような感覚だった。KEYTALKがレーベル移籍後、初めてリリースしたアルバム『DON’T STOP THE MUSIC』を携えて開催したツアーは、彼らの新旧の魅力が凝縮されていて、はからずもこのバンドに惚れ直すきっかけとなった。
公演名は〈DON'T STOP THE MUSIC TOUR 熱狂パワフルKEYTALK 2019. ~本当にダイジョーブ?? 爆発寸前!! 武正の足爆弾~〉と例によって長めだが(その前は「新感覚KEYTALK泡みたいに弾けるツアー ~涼しくなろうぜ!!バボバボ~」だった)、今回のライヴではさまざまな変化が見られた。
ツアーは『DON'T STOP THE MUSIC』に収録されている、躍動感が漲る高速サウンドの「DROP2」で幕が開いたのだが、初っ端から衝撃的だった。音の響きがとてつもなく壮大になっている。思わず呆気にとられつつも、前回のツアー以降、彼らの身に何が起きたのかといい意味で困惑してしまうほど。その後、「パラレル」「ロトカ・ヴォルテラ」といった疾走感のある曲が休む間もなく続くが、ここであることに気づく。ツインヴォーカルである首藤義勝(ベース&ヴォーカル)と寺中友将(ギター&ヴォーカル)の歌声も、今まで以上に力強くなっている。一変して明るい曲調の「ララ・ラプソディー」や「Love me」など、高音が目立つこれらの曲でも2人の音域は一貫して安定している。ツインヴォーカルのさらなる進化に心を打たれる一方で、小野武正(ギター&コーラス&MC)と八木優樹(ドラム&コーラス)の、こちらがつられて笑顔になってしまうようなイキイキとした表情でのプレイも、言うまでもなく最高だ。あくまで自然体なのに、熟練したテクニックや深みのあるグルーヴが感じられる。
そんな中、ふと彼らの服装が気になった。寺中と武正に関してはTシャツとハーフパンツというスタイルのイメージが強かったが、この日は4人全員がフルレングスのパンツとシャツで統一している。なんだか新鮮なその姿に年相応の落ち着きを感じたし、彼らのパフォーマンスともリンクしている気がした。決して無理に繕っているような素振りなどは見えないが、音だけでも十二分に観客に訴えかけられる力が今のKEYTALKにはある。この日は「Summer Venus」や「MATSURI BAYASHI」といった、彼らのライヴでおなじみの曲も披露されたのだが、迫力も今までの比ではなくついつい圧倒されてしまった。演出面でもレーザービームを駆使したり、「BUBBLE-GUM MAGIC」を披露した際は大量のシャボン玉が会場内を舞ったりと、視覚的にグッとくる多彩な演出というのも今回が初めてなんじゃないだろうか。
魅力的であるために変わり続ける。そんな彼らの美学が伝わってくるようなライヴだ。そもそも『DON’T STOP THE MUSIC』というアルバムそのものに、そんな思いが込められている。12曲中10曲がタイアップ付きで、その内容もドラマにCM、商業施設、モバイルゲームなど実にさまざま。各タイアップに完璧に寄り添った楽曲を生み出す4人に対し音楽家としてのスキルの高さを痛感する一方で、着実に作風の幅を広げていることから「多様なサウンドを通じて、より多くの人に自分たちを知ってほしい」という思いがひしひしと伝わってきた。移籍を通じて新たなスタッフと出会い、一丸となってさらなる高みを目指そうとしてくれる周りの人々と自分たちのためにも、この作品でさらなる飛躍を遂げたい――そんな真っ直ぐな思いが詰め込まれたアルバムなのだろう。
それに、最新の自分たちを提示しつつも、過去とは一切決別しようとしないところがKEYTALKの魅力でもある。今回のライヴでも、自分たちは過去と地続きで歩んでいくんだ、という姿勢がはっきりと伝わってきた。例えば、セットリストは最新作の曲だけで構成することもできるはずなのに、ところどころに過去曲(しかもそのチョイス最高と思えるような)が組み込まれているのだ。まさかリリースから8年経っても「a picture book」で踊らせてくれる日が来るとは思ってなかったし、アンコールでは「懐かしい曲をやります」という義勝のフリのもと、2013年リリースの「Spring Sparkle」が披露された。ライヴでは長い間披露されていなかったので、イントロが鳴った瞬間の観客のどよめきは今でも忘れられない。
MCだってそうだ。相変わらず4人それぞれが好きなように話しを展開するし、そこに割く時間もかなり多い。ちなみに、この日はスペシャルゲストとして、お笑い芸人のしゅんしゅんクリニックPが登場するというサプライズが敢行された。寺中が普段から彼の持ちネタである「ヘイヘイドクター」を踊っており、そのことがしゅんしゅんクリニックPにも伝わって一緒に呑みに行くようになったという関係性があり、共演は実現したそうだ。ある時のツアーでは学生服を身に纏って寸劇を披露したりと、さまざまな試みを通じて観客を楽しませようとするところも変わらないなと思う。
思えば、『DON’T STOP THE MUSIC』リリース時のインタビューで、義勝は次のように語っていた。
「〈MABOROSHI SUMMER〉っていう曲を出した時ぐらいから『変わったな』って言われ続けてきて。でも、変わんなかったらもうやってないと思うし、逆に自信があります。今が一番カッコいいっていう。あとはそれをきちんと伝えられるように、地道にやっていくところかなって思いますね」
バンドを続けていくために、より良い音楽を届けるために、変わっていくことは絶対的に必要だ。しかし、過去と決別することなく、変わったものと変わらないもの、その2つを絶妙なバランスで成立させつつ、地道に歩んでいく姿に4人の誠実さを感じるから、このバンドからずっと目が離せないのだろう。本編終盤に披露された「少年」を聴きながら、そんなことを考えていた。
〈セピアの記憶巻き戻して あの日と同じ場所に立った/あの時の僕らは 笑い合っていた/忘れない 忘れるわけないよ/全部にありがとう〉
バンドが変わっていくことに対して寂しさを感じる瞬間もあるが、KEYTALKに限ってはそんな心配は無用だ。4人が音楽を辞めない限り、彼らは誰1人置いていくことなく、こちらが想像もしていないような未来へ連れていってくれるのだろう。正直、メジャーデビューから6年経ったこのタイミングで、こんなにも感動させてくれるとは思わなかった。出会えてよかった、そんな思いをKEYTALKならまだまだ更新させてくれるはずだ。
文=宇佐美裕世
写真=後藤壮太郎
【SET LIST】
01 DROP2
02 パラレル
03 ロトカ・ヴォルテラ
04 真夏の衝動
05 ララ・ラプソディー
06 fiction escape
07 アカネ・ワルツ
08 Love me
09 Summer Venus
10 旋律の迷宮
11 桜花爛漫
12 黄昏シンフォニー
13 COMPLEX MANIA
14 a picture book
15 MATSURI BAYASHI
16 DE'DEVIL DANCER
17 MONSTER DANCE
18 少年
19 BUBBLE-GUM MAGIC
ENCORE
01 Spring Sparkle
02 YURAMEKI SUMMER
03 少年(MV撮影)
KEYTALK オフィシャルサイト https://keytalkweb.com/