【Live Report】
音楽と人LIVE 2019
ストレンジャー イン トーキョー 〜DEZERT 異種格闘3番勝負〜 ROUND 2
2019.11.07 at 青山RizM
DEZERTと『音楽と人』による共同企画〈音楽と人LIVE2019 “ストレンジャー イン トーキョー 〜DEZERT 異種格闘3番勝負〜”〉第2弾が、11月7日青山RizMにて開催された。
先攻は、対バン相手であるminus(-)。赤いライトに照らされたステージに藤井麻輝が登場すると、会場は再び暗転。ピンスポットが当てられた先に佇む藤井は、丈の長いパーカーを羽織り、頭にはフードをすっぽりかぶっている。その出で立ちは妖しく、異世界から現れたような威厳が漂う。そうして新曲「Glass work」を鳴らし、会場を静謐な暗闇に染め上げていく。続けて「drop」「B612」が演奏され、緻密な電子音とドラムのビートが絡み合い、静けさの中にも確かな熱が帯びていることを感じさせる。光のない深海の中に潜りこんでいくような光景に、観客は息を呑んでステージをじっと見つめていた。ここがライヴ会場であることも、隣に誰かがいることすら忘れて、たったひとりしかいない。そんな錯覚に陥りそうな中、新曲「内側に向かう」が披露されると、藤井は何かを訴えかけるように手を伸ばし、さらに新曲となる「ツバメ」を投下。物悲しげな雰囲気をまとった重厚なサウンドで会場を覆いつくしたあと、続く「below zero」では、藤井は被っていたフードを頭から外し唄いあげる。平坦だったリズムが、徐々に跳ねるものへ変化していくと、それまで固まっていた観客が少しずつ身体を揺らしていく。小さな炎がゆらゆらと揺れ動くようなサウンドは、藤井の内に秘めたる情熱を感じた瞬間でもあった。
暗闇の中に血の通ったものが存在しているとはっきり認識させられたあと、新曲「この話の続きが聞きたいか」が放たれ、いよいよクライマックスへ。最後は「ヨハネインザダーク」と題された新曲を、藤井はアカペラで唄い徐々に音が重なっていく。歌詞はしっかり聴き取れなかったが、〈人生〉や〈嘆く〉というフレーズを耳にし、そこに切実なメッセージが含んでいるような気がしてならなかった。途中MCを一切挟むこともなく、セットリストの半分が新曲で固められたステージに驚かされたが、藤井にしか作りだすことのできない世界を存分に見せつけた。
minus(-)の圧倒的なライヴのあと、それを塗り替えてみせると言わんばかりに気合いを入れてかき鳴らすDEZERT。勢いよくステージに千秋が登場すると、新曲「Dark In Black Hole」で火蓋を切った。いびつなギターのメロディにあわせて〈生まれてしまったことがもう間違いだ〉という衝撃的なフレーズで幕を開ける楽曲を、ハンドマイクを握り必死に唄う千秋。もがき悩むことがあっても、このステージで爪痕を、自分たちの存在そのものをしっかりと残してみせるという思いを強く感じる。馴染みのない新曲からスタートしたせいか、バンドも観客も若干固い部分があったものの、それをかき消すかのように「東京、叫べ!」と千秋が煽る。そして演奏された「バケモノ」では、みるみるうちに拳が上がり、気迫に満ちたバンドサウンドにのせて〈才能がなくても自分を信じれる心があればいい/たったひとりの自分を倒す〉と力強く放つ。彼らは取り繕うことなく、生身の姿で戦うことを堂々と宣言したのだ。
「初めまして。初めて来ました、青山!」と千秋が口にしたのを聞いて、この日の彼らには初めてのことが重なっていることに気づかされる。minus(-)との初対バンであることはもちろん、青山RizMのステージに立つことも初、そして自分たちの新曲も披露している。慣れないことづくしの環境の中、会場を自分たちのものにすべく「胃潰瘍とルソーの錯覚」「大塚ヘッドロック」を熱いパフォーマンスで魅せる。続いて披露された「御法度」は、初めて演奏される楽曲にも関わらず手拍子が自然と起こったり、その場で跳ねる観客の姿が印象的で、彼らのキャッチーなメロディと歌がしっかりと浸透していることが証明された。千秋が「セッション入れます」と告げ、楽器隊それぞれの見せ場が設けられたあと、切なげなミドルチューンである新曲「白痴」を披露。そして「minus(-)、ひと言で言うとヤバかったね。僕の子宮に触れたので、奪われるのが嫌だったから途中から観るのを辞めました」と千秋がminus(-)のステージに圧倒されたことを打ち明け、「男も女も関係ない、奪われた子宮を取り返しにいくぞ!」と、minus(-)のように会場を一気に吞み込みきれない悔しさをにじませつつ、絶対にここで巻き返すんだという気概で「「君の子宮を触る」」を披露。そして集まったすべての人を自分たちのテリトリーに手繰り寄せ、「変態」でさらに会場のボルテージを上げると、「恥ずかしい過去は塗りつぶせ!」と千秋が叫び「「遺書。」」へ。途中、観客だけでサビを唄う場面では、バンドと会場が一心同体になっていくようだった。
続く新曲「TrueMan」では、千秋がハンドマイクを手にし、言葉をしっかり届けようと、フロアに手を伸ばし懸命に唄う。〈汚れた掌に映る自分から逃げないで〉という一節からは、紛れもなく彼が自分自身に対して投げかけているようだった。対バン相手が大先輩で、圧巻のステージを見せつけられたあとであろうとも、自分たちにウソをつかずに、今できる最大限を見せるんだ、という思いを真っ直ぐに貫いていく。そして「minus(-)とまた当たりたい」と彼が素直な感想をこぼしたあと、「君たちの人生は変えられないけれど、生活は変えられると思ってる」と観客への思いを口にし、ラストを飾る「TODAY」を披露した。明日も今日とは変わらないかもしれない。諦めたくなることもあるけれど、それでも彼らは歩みを止めないのだ。ステージを去る間際、千秋が「なんか物足りない! けど帰る!」と言い放っていた。それは思うようにいかなかった悔しさから来たものなのか、その言葉の真意は定かではない。それでもこの夜を糧にして、彼らの挑戦はこれからも続き、さらに成長を遂げていくのだろう。
minus(-)とDEZERT。音楽性も世代もまったく異なり、今まで交わることがなかった両者だったが、どちらも自分たちの芯を曲げることなく、信じるものを見せ合い、熱い一夜を作り上げた。11月20日には、第3弾が渋谷O-WESTで開催される。対バンは、眉村ちあき。またも〈異種格闘〉の名に相応しい相手を迎えて、DEZERTがどんなステージを繰り広げるのか期待したいところだ。
文=青木里紗
撮影=かわどう
【SET LIST】
■minus(-)
01 Glass work(新曲)
02 drop
03 B612
04 内側に向かう(新曲)
05 ツバメ(新曲)
06 below zero
07 この話の続きが聞きたいか(新曲)
08 ヨハネインザダーク(新曲)
■DEZERT
01 Dark In Black Hole
02 バケモノ
03 胃潰瘍とルソーの錯覚
04 大塚ヘッドロック
05 御法度
06 白痴
07 「君の子宮を触る」
08 「変態」
09 「遺書。」
10 TrueMan
11 TODAY
音楽と人LIVE 2019
〈ストレンジャー イン トーキョー 〜DEZERT 異種格闘3番勝負〜〉
〈ROUND 3〉
【日程】2019年11月20日(水)
【場所】渋谷TSUTAYA O-WEST (ACCESS)
OPEN 18:15/START 19:00
【出演バンド】DEZERT/眉村ちあき (五十音順)
【チケット代金】前売 ¥4,700(税込) 当日 ¥5,200(税込) ※全立見/ドリンク代別
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