【Live Report】
Thank you, ROCK BANDS! 〜UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Live〜
2019年8月28日 at 新木場STUDIO COAST
今年結成15周年を迎えたUNISON UNISON SQUARE GARDEN。「祝ってやってください」とバンドみずから宣言してきたように、結成日の7月24日以降、さまざまな特別な音楽空間を作ってきた。10月11日に、テレビアニメ『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』のオープニングテーマを含む、約1年ぶりとなる3曲入りシングル「Phantom Joke」がリリースされるこのタイミングで、改めて彼らの特別な15 周年を象徴するトリビュートライヴの模様をここにお届けする。
7月27日に大阪・舞洲スポーツアイランドで行われた〈プログラム15th〉はUNISON SQUARE GARDENの15周年がいかに特別かを物語る素晴らしいものだったが、今回またその“特別さ”が更新されるような体験をさせてもらった。それが8月28日に新木場STUDIO COASTで行われた〈Thank you, ROCK BANDS! 〜UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Live〜〉。B-side集とトリビュート盤のインタビューの際、「トリビュートしてもらったアレンジを自分たちで演奏して、ゲストに代わる代わる来てもらうんです」という話を聞いた時は、なんて大変なことをするんだ!とびっくりしたけど(笑)、幕を開けたらトリビュートする側とされる側が入り交じる凄まじい化学反応で本当に大変なことになっていた。
この日、暗転したステージにたったひとりで登場したのはパスピエの成田ハネダ。キーボードの前に座った途端に鮮やかなフレーズを響かせ、ユニゾンのライヴではお馴染みのSE、イズミカワソラの「絵の具」へとつなげると大きな歓声が沸いた。そこから斎藤宏介、田淵智也、鈴木貴雄がスタンバイしてユニゾン+成田による「harmonized finale」。2コーラス目からはパスピエのヴォーカル・大胡田なつきもステージに入ってきて唄い始める。ギターを弾きながら斎藤がニヤリと笑えば、鍵盤を叩きながら成田がドヤ顔で返すという、レアな場面に観客も大興奮。ちなみに成田にオープニングを任せたのは田淵の提案だったそうで、「人のイベントなのにいきなりひとりで出させてごめん!」という斎藤の言葉に成田は「ハート鍛えられます」と返していたが、これはもう田淵による愛する後輩への信頼あってこその演出だろう。ギターの三澤勝洸も加わり、パスピエの「S.S」を6人で演奏したのだが、ハイトーン・ヴォイスな大胡田のキーのままで斎藤がデュエットするなど、トップバッターから目にしている景色と耳にする演奏に心を追いつけるのが大変なほどだった。
ビール2缶を手に、気だるい感じで登場したa flood of circleの佐々木亮介。しかし圧巻だったのが「WINDOW開ける」で、重厚なサウンドの中でロックンロールの気だるさも狂おしさも表現する声の存在感! その声を中心として完全に4人組バンドとして成立していたし、また唄い手が変わることで曲の良さが別の角度で見えてくるようなトリビュートならではの醍醐味があった。続く「フルカラープログラム」では佐々木が曲の途中で「いい曲〜!」と叫ぶと観客が「うおー!」と大きな声で応えるなど、この日だけの最高のコミュニケーションがライヴを彩っていく。さらに唄いながらフロアに突入し、アカペラでオーディエンスと合唱するシーンなど、ユニゾン3人をバックに熱すぎる佐々木亮介劇場を繰り広げたのだった。続いてはユニゾンが高校1年生の時に最初にコピーしたバンド、THE BACK HORNから山田将司と菅波栄純が登場。まずは「BUSTER DICE MISERY」で山田が貫禄を感じさせるヴォーカルを披露し、「涙がこぼれたら」では菅波と斎藤がぴょんぴょん飛び跳ねながらギターを弾き、鈴木の想い入れたっぷりの激しいドラミングのまま「シャンデリア・ワルツ」に突入するなど、ステージ上のエネルギー量が尋常ではなかった。
冒頭から1ゲスト終わるたびに呆然としそうなほど一瞬一瞬が見逃せないライヴが展開されていくが、ステージ上の3人は余韻に浸る隙などないと言わんばかりに次のゲストを受け入れる態勢を整えていく。THE BACK HORNに続いてthe pillowsから山中さわおを迎え入れるのだから緊張感もひとしお。ふらりとステージに登場した山中は、「田淵、元気?」としょっぱなから先輩風をビュンビュンに吹かせ、斎藤に歩み寄って「今日も可愛いなこの野郎!」と叫んだのには思わず爆笑。それはさておきthe pillowsの「RUNNERS HIGH」からオーディエンスもユニゾンの3人も「待ってました!」とばかりに盛り上がる。「これからユニゾンの曲をやるんだけど、最初はミディアムテンポの難しい曲だったの。田淵に『こだわりがあってこの曲なのか?』って聞いたら『さわおさん速いの苦手かと思って……』と。だが、俺はおじさんだがおじいさんではない!」という、彼らの良い関係性を思わせるMCを挟んで「Cheap Cheap Endroll」へ。サビの〈もっと嫌いになっていく〉のフレーズが印象的なこの曲を山中が唄うことで鋭さ増量で最高。最後はトリビュート盤でも3人が絶賛していた「シューゲイザースピーカー」をプレイ。ずっと憧れてきた存在が自分たちの作った曲を熱唱し、一緒に演奏する気分ってどんな感じだろうか。彼ら3人の感動が、大きな熱気になって会場に広がっていく。そこから間髪入れず始まった鈴木のドラムソロ、そこに加わったのは東京スカパラダイスオーケストラの茂木欣一! 華麗なるツインドラムのセッションのあと、スカパラメンバーと斎藤、田淵の登場。GAMOが「この会場で一番盛り上がっているのはどこだー? ここかー!」と叫ぶのを合図にメンバーでステージ上を移動しながら集まって演奏するなど、ユニゾンがスカパラ先輩にエンターテインメントを教わっている感じが楽しい。鈴木もスネアを抱えてステージ中央にやってきて3人だけでキメポーズを披露したりと、これまたユニゾンのライヴでは絶対に見られない場面だ。スカパラ+ユニゾン、総勢12名で演奏したインスト・バーションの「桜のあと(all quartets lead to the?)」も極上の華やかさだった。
そして、この日の最後のゲストはLiSA。「オトノバ中間試験」から完璧に唄いこなす、ヴォーカリストとしての身体能力はさすが。ユニゾンの3人に彼女が入ることで正方形のバランスが生まれ、独特のグルーヴが生まれていた。斎藤が「今日と明日で36曲やるんだけど。練習してる時に聴いてるぶんにはいいけど演奏するとなるとダントツでイライラする曲があって。作曲者を調べたら田淵智也って書いてあった(笑)」と言い、田淵が手がけたLiSAの「Rising Hope」へ。めくるめく展開がエモーショナルに繰り広げられる楽曲を3人がさすがの表現力と一体感で演奏し、最後の「オリオンをなぞる」ではLiSAのチャーミングなヴォーカルがこの曲のロマンチックな部分を際立たせていた。「15周年、おめでとー!」と叫んで、彼女は軽やかにステージを去った。
そしてこの日アンコールでは、3人だけで「プログラムcontinued(15th style)」を披露。「今日1日でUNISON SQUARE GARDENをやってて良かった!って8兆回思いました!」と斎藤が言っていたけれど、そんな想いを噛みしめるような演奏だった。トリビュート盤を作った時も「聴き比べ盤」をスタジオライヴで収録したり、トリビュートライヴをやるにしても自分たちで全曲演奏するなんてことを、本当にやっちゃうのが我らがユニゾン。先輩や後輩たちとの関係性や、彼らがいちロックキッズだった頃の顔も垣間見れるような、あまりにも特別な一夜だった。そしてこれが明日もあるなんて信じられない――観客は皆そう思ったことだろう。
文=上野三樹
写真=Viola Kam (V'z Twinkle)、にしゆきみ
【SET LIST】
00 絵の具
01 harmonized finale
02 場違いハミングバード
03 S.S
04 シーガル
05 WINDOW開ける
06 フルカラープログラム
07 BUSTER DICE MISERY
08 涙がこぼれたら
09 シャンデリア・ワルツ
10 RUNNERS HIGH
11 Cheap Cheap Endroll
12 シューゲイザースピーカー
13 Paradise Has No Border
14 愛があるかい?
15 桜のあと(all quartets lead to the?)
16 オトノバ中間試験
17 Rising Hope
18 オリオンをなぞる
ENCORE
01 プログラムcontinued(15th style)