【Live Report】
chelmico〈chelmico 復活祭 vol.2 〜スカートに乾杯〜〉
2019年5月18日 at 渋谷WWW X
先日、渋谷WWW Xにて開催された、chelmicoの企画ライヴ〈chelmico 復活祭 vol.2 〜スカートに乾杯〜〉。ラップへの愛と、とことんユーモアに溢れた彼女たちは、やはりたまらなく魅力的であることを再認識させられた素晴らしいライヴだった。
この日はタイトルにもある通り、スカートを招いてのツーマンライヴ。意外に思える組み合わせだが、実はゆかりの深い2組でもあるのだ。先攻はもちろんスカート。思わず身を委ねてしまいたくなるような音の波でフロア全体を包み込み、じわじわと観客のボルテージを上げていった。MCでは、澤部渡が改めてchelmicoとの関係性についても言及。「実はchelmicoの〈Love is Over〉という曲にギターで参加してるんですけど、その曲のレコーディング用に買ったワウがあって。それを見るたびにchelmicoを思い出すんです」と語ったほか、「僕はお笑いが好きで、お笑いのライヴをよく観に行くんですけど。そこで美人がいるなって思って見てみるとMamikoさんで……けっこう遭遇するんです」と、互いのお笑いフリークっぷりが引き寄せたエピソードについても明かした。意外なところにも今回のライヴ開催の理由は転がっていたようだ。
スカートからバトンを受け取り、次はいよいよchelmicoのパフォーマンス。彼女たちのライヴには欠かせない存在であるDJの%C(パーシー)が登場し、SEの「Power」が流れるとフロアの熱は急上昇。曲中のなかやまきんに君によるお決まりの台詞〈今日も朝ごはんいっぱ~い食べてきた、chelmico! パワー!〉が響き渡ると、お揃いのツナギを纏ったRachelとMamikoが登場。ツナギについて「うちらにとっての正装。着ると気合いが入る!」と語る彼女たちだが、そんなところからも敬愛するRIP SLYMEへの底知れぬ思いの強さが窺える。1曲目に放たれたのは「Player」。〈遊びたりないね/意気込んだら 踊りok 我々大冒険〉という歌詞そのままの状況というか、まさに「遊び足りないよね?」と問いかけんばかりに、タオルを振り回しながらフロアを煽る2人。その一方で、嬉しそうに観客1人1人を見つめる表情がとても印象的だった。新曲「switch」を披露する場面では、「〈switch〉のイントネーションに迷う!」という話の流れから、アクセントをどこに置くかをこの場で決定させるべく急遽アンケートを実施(最終的には〈イ〉にアクセントを置く形に決着)。また、この日は初の『オールナイトニッポン0(ZERO)』への出演を控えていたこともあってその緊張っぷりを露わにしたり、「ラジオにメールを送ってくれた人ー?」と問いかけたり(照れ臭かったのか観客の手が全く挙がらず、動揺を隠しきれなかった2人が可愛いかった)、%Cへの愛を本人の前で語り出したり(好きすぎるがゆえに、今回のライヴでは%Cのイラスト入りTシャツを制作したという)、chelmicoのライヴは耳馴染みのいい抜群のラップスキルを聴かせる一方で、自由気ままにMCを展開していくところも魅力的だ。
中盤は「Timeless」や「午後」「ずるいね」など、メロウなナンバーで観客をグッと引き込んだかと思えば、終盤は再び「Highlight」や「OK, Cheers!」などアッパーチューンでフロアを沸かせたりと、緩急ある展開も難なく魅せつける2人。ただラップがうまいだけではなく、ただ可愛いだけでもない。こういった楽曲の振り幅の大きさやラップでの表現力の豊かさも、chelmicoに惹かれる理由なのだろう。アンコールでは再び澤部を招き、件の「Love is Over」をセッション。これがまた想像以上に素晴らしくて、思わずこの2組の出会いに感謝せざるを得ない気分だった。あまりにも贅沢なこの光景を脳内に焼き付けようと必死な筆者だったが、その一方で、chelmicoは親しみやすいキャラクターと巧みなラップスキルを武器に、これからもさまざまなアーティストとのコラボに挑戦していくのだろうと、思わず2人の新たな未来に思いを馳せてしまうパフォーマンスでもあった。
chelmicoのライヴは不思議だ。ライヴなのに、久しぶりに地元の友人と会った時の、何とも言えない温かさに包み込まれているような感覚に陥ってしまう。おそらく、それはRachelとMamiko自身が、友達としての関係性が地続きのまま、変わらずに、飾らずにここまで歩んできたことが関係しているのではないだろうか。カラオケに遊びに行った際、互いにラップが好きであることが判明し(しかも2人揃ってRIP SLYMEを崇拝)、遊び半分でラップにチャレンジしたが、気がつけばそこに喜びを見出し、本格的に活動をスタート――そのような背景があるからこそ、メジャーデビューをしても、どんなに活動の幅が広がっても、いつも2人のステージには友達としてのグルーヴが息づいている。それが、我々観客にも伝播しているのだろう。楽しさを追求し、やりたいことを信じたその先に広がっていたものが今日のライヴであり、彼女たちの未来には、この先も我々の想像の範疇を超えるものが待ち構えていることは間違いない。
現に、chelmicoは8月にセカンドアルバム『Fishing』のリリースと、自身最大規模となるマイナビBLITZ赤坂での単独公演を含むツアーが決定している。この予想外の爆進っぷりに面喰らいつつも(最近ではMamikoが『タモリ倶楽部』に出演していたし)、まだまだ2人からは目が離せないのだと、まざまざと実感させられた特別な夜だった。
文=宇佐美裕世
写真=横山マサト
【SET LIST】
01 Player
02 爽健美茶のラップ
03 switch
04 Honey Bunny
05 ママレードボーイ
06 E.P.S.
07 Timeless
08 BANANA
09 午後
10 ずるいね
11 Highlight
12 Countdown
13 OK, Cheers!
14 ラビリンス’97
ENCORE
01 Love is Over
【RELEASE INFORMATION】
NEW ALBUM『Fishing』
2019.08 RELEASE
※詳細はchelmicoのHPにて随時発表予定!
【LIVE INFORMATION】
chelmico Fishing Tour
09月07日(土) 福岡DRUM Be-1
09月14日(土) 宮城・仙台MACANA
09月16日(月・祝) 北海道・札幌SPiCE
09月20日(金) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO
09月22日(日) 大阪・梅田CLUB QUATTRO
09月29日(日) 東京・マイナビBLITZ赤坂
chelmicoオフィシャルHP http://chelmico.com/