頑張ってはいるけど、もっと頑張んなきゃって思ってた。 〈 ちゃんとできてる 〉って自分にご褒美をあげることがなかったんです
そうですよね。そうやって残していくのってすごい労力いるだろうし、本当にすごいなと思って。
「それが今、すごく大きな支えになっています。今日もそうですけど、こうやって取材して記事にしてくださることで支えてもらっているし、出会った人とまた会えるかもしれないので、スタッフさんにひとりずつ名前を確認して、それをブログに残してるんです。ちょっとブログが〈うわーキツい〉って思ってる時もあったりするんですけど、自分の支えになっているからこそ、とにかくこの職業を続けている限りは残したいなって。でも、自分の支えになってる部分ではあるけど、曲を書いたり文字に起こすことがとにかく多すぎて、どこかこういうところから1週間でも離れないといけないなって最近は思ったりもしますね」
そういう部分がちょっと生きづらさになってきているのかもしれないですね。
「確かにそうかも。性格の部分ではたぶん生きづらい部分をいっぱい持ってるかもしれないです」
すごく律儀ですもんね。
「でも、地方に行くと事務所の先輩の竹原ピストルさんの話をいろんな人がするんですよ。例えば、〈ライヴハウスの経営が大変だって時にわざわざあいつが手紙をくれて〉とか。私が行くライヴハウスのこけら落としはほとんど竹原さんだし、オーナーたちが竹原さんを愛してるんですよ。この人にライヴハウスのスタートを切ってもらいたいって思わせるアーティストで。竹原さんは自分がこれだなと納得してやりたいことを続けていて、それは計算でもなんでもなくて、人間を大事にしているからこその行動なんだなって。竹原さんのそういういろんな話を聞くと、自分もわざわざやることないかもしれないって思うこともあるけど、竹原さんの生き方が好きだし、自分もきっとこれでいいんだろうなと思って」
なるほど。
「私の声が出なくなっちゃった時も竹原さんがわざわざ連絡をくれて。自分が声出なくなった時のエピソードとともに、『ツラいだろうし、みんなから声出すなって言われてると思うけど、いっぱい唄ってあげなさい』っていう言葉をくれて。本当にあったかい人ですね」
自分が弱ってる時にわざわざ連絡くださるのはありがたいことですね。でもそういう葛藤や生きづらさみたいなものはブログ更新に限らずEmiさんなりにあると思うんですけど、〈ばけもの〉を聴いて思ったのは、最近自分のことを肯定してませんか? 今まで〈変わりたいならもっと頑張らないと!〉っていう歌が多くありましたけど。
「はい、そうです。全部バレバレだ(笑)」
ははははは。ライヴ音源で収録される「バカか私は」「甘っちょろい私が目に染みて」も特にそうですよね。
「ああ、そうですね」
「ばけもの」では〈女を生き抜くために 弱さを丸めて捨てたけど/残念ながらその弱さ 私らしさでもありました〉って唄っていますが、どうしてこんなに自分を肯定しようって思うようになったんですか?
「今、デビューしてから3年目で。でもまだまだ音楽業界で新人というか下っ端なので、頑張んなきゃっていう思いばっかりだから、そういう曲がずっと続いてたんですけど。去年マネージャーやプロデューサーとか、一番近くにいるメンバーに、『頑張れ頑張れって曲がすんげえ多いけど、頑張ってんじゃねえの?』って言われたんですよ。で、〈あ、そうなんだ〉みたいな」
気づいてなかったんですね。
「まあ頑張っちゃいるけど、でも届かない部分がいっぱいあるし、これはもっと頑張んなきゃいけないっていう思いしかなかったけど、それだけじゃなくて、〈ちゃんと頑張ったじゃん、ちゃんとできてるじゃん〉っていうふうに自分にご褒美をあげることがなかったんですよね。私はお酒やタバコもやらないので、頑張ったからお酒呑もう!とかそういうのはなくて。スタッフから指摘されて初めて気づきました」
自分の頭をなでてあげることがなかった、と。
「そうですね。そういうのをやってないつもりもないし、やらないようにしてたわけでもなんでもなくて、ただまっすぐ突っ走り続けちゃったというか」